今年9月8日、英国のエリザベス女王が逝去し、そのニュースが全世界を駆け巡りました。70年の長きにわたり一国の象徴としての重責を担い、死の寸前までその責務を果たし続けた姿には、感銘を受けていました。彼女の葬儀の様子は世界中に中継され、実に地球上の半数の人が何らかの形でその映像を見たというから驚きです。
その葬儀に先立ち、9月10~20日までの10日間、ミュンヘン・レジデンツ内のホーフ・カペレで、エリザベス女王の追悼記帳が行われるという情報を入手しました。レジデンツはミュンヘンの市街地にある、旧バイエルン王国ヴィッテルスバッハ王家の宮殿です。現在は博物館となっていて、金をふんだんに用いた豪華な王宮を見学できるのですが、王宮内のホーフ・カペレは普段は公開されていません。今回は記帳する人に限り、誰でも中に入ることができると聞いたので、私も記帳に行ってきました。
ホーフカペレ内部
ホーフ・カペレは、レジデンツの中庭から直接入ることができるようになっていて、通りに面した中庭入り口には「追悼記帳に来られた方は、こちらからお入りください」との表示。ミュンヘンの中心部には巨大なカトリック教会がいくつもあり、まるで「犬も歩けば教会に当たる」という状態。それでも王宮内に、王族のためのチャペルが特別に設けられていて、当時の人々にとって信仰と生活が密接につながっていたのだと感じました。ホーフ・カペレは王宮内からも直接出入りできるようになっていて、もちろん近隣の教会よりは小規模ですが、手の込んだ漆喰 の装飾が美しかったです。バロックの教会は装飾過多で華美になりすぎるきらいがあるのですが、ホーフ・カペレは白を基調としており、王宮内のチャペルにしては落ち着いた雰囲気でした。
レジデンツ中庭への入り口
祭壇にはエリザベス女王の大きな肖像写真が飾られ、祭壇前に記帳簿が備えられていました。記帳のために人が並んでいるので、ほかに記帳した方のメッセージをゆっくり読むことはできませんでしたが、私以外にも日本語での記帳が見られました。
追悼記帳に訪れた方々
公開されていないホーフ・カペレですが、実はほかにもここに入るチャンスがあることを今回を機に知りました。毎週土曜日の18時半から「レジデンツ・セレナーデ」という室内楽のコンサートが行われているのです。モーツァルトも演奏したことがあるというこのチャペルでのコンサートにも、いつか行ってみたいと思います。
イエス・キリストに出会って、声楽専攻から牧師に転身。2022年よりミュンヘン日本語キリスト教会牧師。今でも少女マンガ、オペラ、ダンスは大好きです。 www.muc-japan-christ.com/