ジャパンダイジェスト

生誕100周年を迎えるインゲ·モラスの写真展を訪ねて

マリリン· モンローをはじめ、オードリー· ヘップバーンやイヴ· サン= ローラン、アンディ· ウォーホルなど、時代を謳歌(おうか)した輝かしいスターたち。彼らを写した200枚以上の写真が、ミュンヘンのレーエル地区にあるKunstfoyer VKBで開催中の展覧会「Inge MorathHomage」にて展示されています。これらの作品の撮影者は、インゲ· モラス(1923-2002)というフォトグラファー。同展は、彼女の生誕100周年を記念したもので、5月1日(月)まで開催されています。

ミュンヘンで開催中の写真展「Inge Morath Homage」ミュンヘンで開催中の写真展「Inge Morath Homage」

インゲ· モラスはオーストリアのグラーツに生まれ。第二次世界大戦中のドイツのダルムシュタットやベルリンで育ち、戦後は米国情報局が発行していた雑誌「Heute」の翻訳者兼ジャーナリストとしてミュンヘンで働きました。その後、世界的な写真集団「マグナム·フォト」に編集者として参加していた際、自分がテストで撮影した写真を記事に使ったところ高評価を受けます。こうして、マグナム初の女性フォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせました。

マグナム· フォトの創業メンバーであるロバート·キャパなどが報道写真家として戦争などのテーマに向き合った一方で、彼女はポジティブなエネルギーに満ち溢れた写真で世に知られる存在となりました。その背景には、モラスの前衛芸術への憧れがあったといいます。1937年、ナチスによってミュンヘンで開かれた退廃芸術展で、モラスはフランツ· マルクの絵画「Blaues Pferd」(青い馬)に出会い、魅了されました。しかし退廃芸術展はその名の通り、現代美術を批判し、先鋭的な作家を追放するためのもの。モラスは自分の気持ちに嘘をつきながら、文化統制が続く長い間、沈黙を貫くことしかできなかったのです。

展示されている写真は、モラスの代表作でもある「タイムズ· スクエアのラマ」をはじめ、さまざまな人のポートレート、旅先の中国やロシア、スペインなどで撮影したストリートフォトなど多岐にわたります。誰もが知る著名人に手を伸ばせば届きそうな距離感の写真や、絶妙な瞬間に生まれた絵画のような写真に惹かれ、何度も立ち止まってしまいました。モラスは被写体と親密な関係にあったことが多く、「舞台裏」の自然体なシチュエーションも彼女の写真の特徴です。

紙袋の仮面シリーズは、ソール·スタインバーグとのコラボ作品紙袋の仮面シリーズは、ソール·スタインバーグとのコラボ作品

実はモラスは、何度も撮影したマリリン· モンローの元夫であるアーサー· ミラーと後に結婚し、子どもが二人います。彼女ががんで亡くなった翌年の2003年には、遺族によってインゲ· モラス基金が設立され、今日までレガシーを残すために活動しています。展示では、モラスのスピーチやドキュメンタリーも放映されており、「たとえ二人の写真家が同じ時間に同じ場所で写真を撮っても、一枚たりとも同じものは生まれない」という言葉が印象的でした。

インゲ·モラス自身のポートレート写真インゲ·モラス自身のポートレート写真

写真展「Inge Morath Homage」:www.versicherungskammer-kulturstiftung.de/kunstfoyer

大浦 詩織カミラ(おおうら しおり)
ミュンヘン生まれ、10歳ごろから京都育ち。大学卒業後、再びミュンヘンに戻る。もともと異文化教育や日独間のコミュニケーションに興味があり、ドイツのPR会社Storymakerに就職。J-BIG編集部として、在独日系企業の情報発信も行っている。 www.j-big.de

 
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