まずは礼拝堂の外観写真をご覧になっていただきたいのですが、まるでアニメ「アルプスの少女ハイジ」に出てくる、スイスの山腹にあるような教会だと思いませんか? この小さな教会、実はミュンヘン市内にあるのです。教会の前にはバス停があるのですが、教会があまりにも小さいため、私は最初、教会の形をしたバスの待合所かと思ってしまいました(失礼!)。よく見ると、「聖ミヒャエルスカペレ」(St.Michaelskapelle)と名の付いた、れっきとしたカトリックの礼拝堂。しかも、教会として現在も機能しているとのことです。ただし、礼拝は毎週ではなく、月に1回、第1土曜日の15~16時に行われています。
まるでハイジの世界のような聖ミヒャエルスカペレ
この教会はミュンヘン東南部ペルラッハ地区にあり、その創立は1900年。地域内では、最初に建てられた教会の一つだそうです。ミュンヘンの街中の壮大なカトリック教会の歴史はもっとずっと古いので、それと比べれば「新しい教会」と思われるかもしれません。しかし、19世紀までのミュンヘンは今よりもかなり小規模で、ペルラッハ地区には住んでいる人もほとんどいなかったのでしょう。最初の入植者たちが礼拝をささげる場所として建てたようです。
その頃は毎週日曜に礼拝が持たれており、小さな礼拝堂はすぐに手狭になりました。そのため人々は、礼拝堂の外に集まって礼拝をしていたとのことです。その後、第二次世界大戦で破壊され、当時は取り壊しも検討されたようですが、地域住民の熱心な運動により修復されました。こうした努力により、この礼拝堂は第一次、第二次世界大戦の戦没者、行方不明者、犠牲者のためのメモリアルチャペルとして新たな歩みを始めました。
礼拝の時間帯以外は閉じられているこの礼拝堂ですが、イエス・キリストが十字架にかけられた聖金曜日には、祈りたい人のために公開されるとのことで私も行ってみました。この日は、イエスが墓に葬られた日ということで、礼拝堂の中は暗く、祭壇には岩をくりぬいた墓に納められているイエスが表現され、色とりどりのろうそくだけが周りを照らしていました。とにかく小さい礼拝堂で15席ほどしかありませんでしたので、当然パイプオルガンはなく、CDの音楽が静かに流れていました。
イエスの納められた墓が表現された祭壇
人々は、自分の身代わりに十字架にかかったイエスをしのび、この静かな礼拝堂を訪れ、しばし沈黙の祈りをささげていました。この小さな教会が、地域の人々の心のよりどころとして現在も機能していることに感動を覚えたのでした。
イエス・キリストに出会って、声楽専攻から牧師に転身。2022年よりミュンヘン日本語キリスト教会牧師。今でも少女マンガ、オペラ、ダンスは大好きです。 www.muc-japan-christ.com/