ミュンヘンから南に車で1.5時間、ドイツアルプスのふもとにあるオーバーアマウガウという小さな村に、リュックサックを制作するデザイン工房「Racing Atelier」があります。山登りが好きな私も、昔からこのブランドのファンです。今回Racing Atelierの創設者でありデザイナーのレアンダー· アンゲラーさんを訪ね、お話を伺うことができました。
数々の作品が並ぶアンゲラーさんのデザイン工房
初秋の暖かい木漏れ日が差し込む工房には、アンゲラーさんの数々の作品が壁に掛かり、工具が整然と並んでいます。ゆったりとした時間が流れるリラックスした空間で、挽きたてのコーヒーを入れて出迎えてくれたアンゲラーさん。バイエルンで幼少期を過ごした後、ロンドンでデザインを学び、生まれ育ったこの地で自身の工房を始めたとのことです。小さなお子さんや家族と大自然の中で一緒に暮らしながら、この工房で作業をする毎日は、都会では味わえない時間と作品へのインスピレーションを得られるそう。洗練された都会的な雰囲気を持ちつつ、自然と調和する優しい作品に仕上がっている理由が、アンゲラーさんの生い立ちや工房の雰囲気からも伝わってきました。
自身の作品や型紙を前に話すアンゲラーさん
アルプスの大自然の中で生み出されるアンゲラーさんの作品では、使えば使うほど良い風合いとなるような素材を厳選して使用。丁寧に作られた部品は、それぞれの機能から生まれた美しい形を持ち、それらが縫製されて完成します。そこには機能美と堅固さが特徴のドイツプロダクトの神髄が見て取れます。そして街中で売られる大量生産の製品とは一線を画し、一品一品オーダーメイドで作られています。完成まで3~4カ月かかるというのも、物があふれる今の時代、逆にわくわくしますね。
静かな工房で秋の木漏れ日を浴びる作品
「Racing Atelierはリュックサック製造業者ではなく、デザイン工房です」とアンゲラーさんは言い切ります。作品へのこだわりや思いが大量生産によって失われていくことを望まず、デザインを通して世の中にメッセージを発信し続けたいとのことです。一方で、サステナブルな社会や仕組みが求められる現代において、アンゲラーさんの活動は、大量生産型の企業からも注目を浴びています。現在、企業とコラボレーションしながらいくつかのプロジェクトを進行中とのこと。対極にある企業との融合は、アンゲラーさんにとっても大きなチャレンジになりそうです。
今後、アンゲラーさんの活動がどのように発信され、社会を変えていくのか、今からとても楽しみですね。引き続き、Racing Atelierの作品や活動に注目したいと思います。
Racing Atelier:www.racing-atelier.com
駐在員として赴任したミュンヘンで、自然や文化、人々に魅了され、2019年に完全移住。「ミュンヘン山の会」のメンバーとして月に1~2度ハイキングを企画したり、山歩きの魅力やミュンヘンでの日常生活を発信したりしている。
Instagram:@yama.trip.music_kou