お墓というと、日本ではなんとなく暗くて怖いイメージがありますが、ドイツではお花がきれいに飾られていて、明るい雰囲気で、人々のお散歩コースになっていたりします。このイメージの違いは、「死」に対する捉え方から来ているのでしょうか。日本の場合、墓石の下に故人が今も眠っているというか、その場所に今も故人が存在しているようなイメージがあります。ドイツの場合、キリスト教をベースにするならば、お墓は故人をしのぶ記念の場所であって、故人の魂はすでに天国にあると考えます。今回、市民大学(Volkshochschule)によるミュンヘン東墓地の見学ツアーに参加し、日本とは全然違う墓地事情について聞いてきました。
立派なメインホール
入口に集まった参加者は15名余り。まずは墓地にまつわる説明を聞きました。ドイツでは土葬が伝統です。人口増加に伴い、ミュンヘン内の墓地が手狭になってきた1900年頃から、ミュンヘン郊外に計画的に墓地の設置が始められました。現在はミュンヘン内とその近郊に29カ所の墓地があります。東墓地の設計を担当したハンス・グレッセルは、イタリア旅行の直後にこの墓地の設計に取り掛かったため、メインの建物や回廊にはその影響がみられます。約26ヘクタールの広大な墓地に、3万4000人を収容できるそうです。
見学ツアーでは、墓地にまつわる丁寧な説明が聞けます
またドイツでは、墓所は買うものではなく、権利を借りるもの。契約期間がどうなっているのか質問したところ、墓地によって最低期間が定められており、7~20年とまちまち。東墓地は10年ということでした。もちろん「家族の墓所」ということで、代々契約期間を延ばして同じ墓所に埋葬することも可能でしょう。最近は土地不足から火葬を選択する人が増えてきて、ミュンヘンは特にその傾向が強いとか。東墓地にも火葬場と納骨堂があり、目下、火葬を待つ間のカフェを建設中です。
おそらく軍人さんのお墓でしょう
その後、珍しいお墓や、有名人のお墓などを次々と案内してもらいました。なかでもミュンヘンで活躍したファッションデザイナー、ルドルフ・モースハマーのものは立派なモニュメントを持つ霊廟でした。ミュンヘンっ子なら「あぁ、あの人!」と興味深かったでしょうが、悲しいかな、モースハマーに限らず、私が知っている人は誰もいませんでした。ほとんどが十字架や天使をあしらったキリスト教系のお墓でしたが、なかには仏教徒と思われるお墓も。お墓は故人のためというよりも遺族のために在るのかな、ということをあらためて考えたお墓見学ツアーでした。
イエス・キリストに出会って、声楽専攻から牧師に転身。2022年よりミュンヘン日本語キリスト教会牧師。今でも少女マンガ、オペラ、ダンスは大好きです。 www.muc-japan-christ.com/