「ミュンヘンは巨大な田舎である」。そう言われると多くの方が肯かれることでしょう。街に高層ビルが建ち並んでいないので込み入った感じはしませんし、街の中心から10分もSバーンに乗れば、牧草地と麦やトウモロコシの畑が広がっています。東京育ちの私が初めてミュンヘンに来た時、ドイツ第3の都市のこんな身近にこれほど豊かな自然があるものかと驚きました。
そんなミュンヘンの郊外に、トウモロコシ畑を利用した巨大迷路があるのをご存知ですか?期待に胸を膨らませ、ある夏の晴れた日に出掛けてきました。
日本でも流行した巨大テーマパークを想像していたのですが、実際に行ってみると農家がペンションと一緒に運営する家族経営の小さなテーマパークでした。畑の中の小さな売店に着くと、真っ赤に日焼けしたご主人が満面の笑みで迎えてくれました。ビアガーデンは日よけのテントのみで、手作り感があふれて います。迷路になっている畑だけがやたらと広くて先が見えないほど。その規模の小ささに少し拍子抜けしたのですが、せっかくなので入場料4ユーロを払って迷路に入ってみました。
どこまでも続くトウモロコシ畑の迷路
ところがそこは、想像以上に面白い!2メートルほどの高さに育った頑丈な茎に細長い葉が青々と生い茂り、葉の根元には金色の房をつけたトウモロコシが実をつけています。高々とそびえ立ち、行く手を阻むトウモロコシの間で逃げたり隠れたり、大はしゃぎしてしまいました。迷路の中心には、工事現場の足場 のような高見台があります。頂上は涼やかな風が吹き渡りトウモロコシの葉がそよぐ気持ちのよい場所でした。時期が早ければ遠くに黄金色の麦畑が見られたことでしょう。地平線の彼方まで続く田園風景が、気持ちを豊かにしてくれました。
ドイツは工業の国というイメージが強いですが、農業、酪農も盛んに行われています。農地面積は約1700万ヘクタールで、国土面積に占める割合は約48%にも上ります(日本は13%)。ここバイエルン州は、87%が農地と山林。零細農家が多く、肥料栽培を基軸とした酪農、肉用牛飼育が行われています。1992年 に制定された農業環境施策(KUL AP)により、環境基準に沿った有機農法、畜 産に取り組む農家は補助金を受けられます。また、農業が営めない期間でも収入が得られるように、ペンションなどの副業部門の助成も盛んに行われています。この施策によって山間部の農村の過疎化は阻止され、整った美しい農牧地と美味しい食糧の生産が保たれているのです。
こんなに美味しそうなトウモロコシも、大半は家畜の飼料に
トウモロコシ畑の迷路はそんな副業部門の1つと言えるでしょう。夏空の下で走り回った迷路は、ドイツの環境について考える良いきっかけとなりました。
トウモロコシ畑の迷路
www.labyrinth-grasbrunn.de
日本地ビール協会ビアテイスター。日本での7年間の看護師生活の間にビールの魅力に取り付かれ渡独する。現在はミュンヘンに拠点を置いて美味しい情報を発信中。「ビアテイスターのドイツビール&ワイン紀行」http://gogorinreise.blog34.fc2.com/