「2011年は日独交流150周年」と2月のレポートでも触れましたが、ミュンヘンで行われる関連イベントとしては 一番大きなものになるであろう服飾文化の展示「Future Beauty - 日本の ファッションの30年」が、3月4日より ハウス・デア・クンスト(Haus der Kunst)で開催されています。
1980年代、それまではヨーロッパのファッションを模倣しただけだったような日本の服飾文化に革命が起きました。 従来の伝統的なスタイルに、ねじれや歪み、アシンメトリーといった要素を加えたり、布地を裂いて穴を空けてみたりと、大胆な手法で新たな表現を追求したブランド、コム・デ・ギャルソン (Comme des Garçons)のデザイ ナー、川久保玲氏。彼女のデザインと同様、自立した女性をテーマに、白黒を基調としたモノトーンのファッション で成功を収めたワイズ(Y's)の山本耀司氏。「破壊されてしまうものではなく、 創造的で、美しさや喜びをもたらすもの」をファッションに追い求める三宅 一生氏。これらの改革者たちが、日本 の精神を織り込みながら新しいファッ ションの創造に挑戦してきた様子やパリ・コレクションでの成功、現代ヨーロッ パのモードにもたらした影響などが、 同展では紹介されています。
地味な色彩でも斬新。日本の服飾文化に革命を起こしたスタイル
古典的な日本文化の展示はよく見かけますが、このように革新的な日本文化が取り上げられることは珍しく、何よりも彼らの創造に掛ける情熱を感じさせてくれます。
もちろん、日本文化の新しい側面のみに焦点を当てているわけではありません。「装う」ことの背景にある、日本固有の着物文化を象徴する「まとう」 という表現や、「まとう」「装う」といっ た行為を含めた日本人の暮らしの中で の禅宗の影響「わび・さび」についても、 谷崎潤一郎の随筆『陰翳礼讃』を取り上げながら紹介されています。
さらに、「わび・さび」の感覚や日本人独特の影と光の捉え方、透明感、ミステリアスな雰囲気などが、会場プロデュースを手掛けた建築家、藤本壮介氏により、今回の展示にも存分に反映されています。何はともあれ、文字で読むより、一目ご覧になってお楽しみください。同展は6月19日(日)まで開催されています。
さて、先述の日本のファッションの改革者たちは、今もヨーロッパで新た な挑戦を続けています。山本耀司氏は 昨年のバイロイト音楽祭で『トリスタン とイゾルデ』の衣装を担当し、ワイス リー(Y-3)の名前でドイツのアディダ スとのコラボレーション・ブランドを立ち上げました。また、彼に感銘を受けたドイツ人デザイナー、ジル・サンダー は日本のユニクロと提携し、新たなプロジェクトに挑戦しています。日本のファッション界は、まだこの先も世界的な影響力を持ち続けそうです。
Haus der kunst
www.hausderkunst.de
2004年よりミュンヘン在住。主婦の傍ら、副業でWEBデザイナー。法律家の夫と2人暮らし。クラブ通い、ゴルフが趣味のおばさん。