青い空に、白い風船がバイエルンっ子たちのため息と一緒に昇って行く……。
残念! ため息が風船を高く飛ばして行く
2018年冬季五輪開催地決定の7月6日、ミュンヘンは快晴。夏を感じさせる強い日差しが、パブリック・ビューイングと特設野外ステージが置かれた市中心のマリエン広場に降り注いでいました。ミュンヘンが開催地に選ばれたら、ビールで祝杯を挙げようと心待ちに集まった人々で広場はいっぱい。司会者が音頭を取って喜びを表現するジェスチャーを皆で練習し、旗を振るタイミングや風船を飛ばす合図を決めます。さらにステージでは、合唱団とクリストキントが祝福の歌を奏でるためにスタンバイ。詰め掛けた大勢の報道陣と共に、皆が南アフリカ・ダーバンでの国際オリンピック委員会(IOC)の決定を、固唾を飲んで見守っていました。
ああ、それなのに……。IOC会長は、ミュンヘンには微笑んでくれなかったのでした。
当日は朝8時半からマリエン広場で決定の瞬間を盛り上げるためのイベントがスタート。ダーバンからの中継の合間に、開催会場に予定されていたミュンヘン、ガルミッシュ=パルテンキルヒェン、ケーニヒスゼーの市民たちが民族舞踊からハードロックまで、さまざまなパフォーマンスを繰り広げました。これら3つの街はいずれもバイエルン州内にあるとはいえ、それぞれが「自分の街が世界で一番美しい」と考えており、お国自慢の応酬はなかなか楽しいものです。いつもは正午を告げる市庁舎のからくり時計も、この日ばかりは特別プログラムのアルペンホルン隊に出番を譲り、5分ほど遅れて音楽を鳴り響かせていました。
さて、結果は皆さんご存知の通り、韓国・平昌の圧勝でした。すでに第1回目の投票時点で圧倒的多数を占めていたそうです。立候補した3都市の最終プレゼンテーションでも、国の全面的なバックアップ体制や練りに練ったコンセプトなどを強調する平昌を、ミュンヘンは手強い相手とみなしていましたが、一方で環境への影響が大きい建設計画やウィンタースポーツ経験の少なさ、雪質が劣ることなどがネックになるだろうとも考えていました。フランスのアヌシーについては、住民の反対やコンセプトの甘さなどから、競合とは見ていなかったようですね。
旗を振る練習はパーフェクトだったのだが……
とはいえ残念な結果に、「ドイツではサッカー・ワールドカップも開催されたしね」「以前、ガルミッシュでスキーの国際大会が行われたとき、結局地元の利益は少なかった」などと、負け惜しみにも聞こえる声が飛び交ってしまうのも仕方のないことです。しかし本音では、「次回また立候補したら勝てるのでは?」という期待があるのかもしれません。
2022年大会誘致へ向けた戦いが始まるのかどうか、まだまだこのテーマは続きそうです。
2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。会社員を経て独立し、現在はフリーランスとして活動中。家族は夫と2匹の猫で、最近の趣味はヨガとゴルフ、フルート。