日本への直行便が毎日2便運行され、バイエルン地方に住む私たち日本人にとって欠かせない存在であるミュンヘン空港。英国の調査会社スカイトラックスが毎年、空港利用客を対象にしたアンケート結果を基に発表している「世界空港ランキング(World Airport Awards)で今年、同空港は世界第6位、欧州内ではアムステルダム空港に次ぐ第2位の「優秀空港」に選ばれるなど、高い評価を得ています。
この空港では現在、年々増加する利用客と離発着便に、よりスムーズに対応するため、2本ある滑走路を3本に増やす拡張計画が持ち上がっていますが、膨大な総工費を懸念する声や、空港の規模拡大に伴う騒音増加、自然破壊への反対が根強く残ってます。そのため6月17日、ミュンヘン在住者を対象に、建設の是非を問う住民投票が行われました。そしてなんと、結果は大方の予想を裏切り、反対票が約55%と過半数に達したのです。
空港内では、賛成投票を訴える看板が目立つ
バイエルン州議会の与党・キリスト教社会同盟(CSU) と自由民主党(FDP)は計画推進派。「離発着便が増えているため、空港施設のキャパシティー拡大は必須。雇用促進にも繋がる」というのがその理由です。産業界からのバックアップも受け、住民投票に向けて大規模な広告キャンペーンを展開してきました。一方、反対派は緑の党や環境保護を訴える市民団体などで、「統計的に見ると利用客数は増加していない。賛成派が主張するほど、実際の雇用増には繋がらない」と主張しています。さらには、空港からミュンヘン市街までは30km ほど離れているため、騒音は問題にならず、拡張の恩恵だけを受けるであろう同市の住民だけが投票を行うことに疑問を呈するマスコミ報道もありました。今回の投票結果を受け、空港近辺の町フライジングの市長は「ミュンヘンと我が町の思いが繋がった」と大歓迎の声明を発表しています。
さて、第3滑走路建設計画の今後の行方はどうなるのでしょうか。計画が完全に白紙に戻されるということはなさそうですが、賛否両論、様々な説が飛び交っています。賛成派はもちろん巻き返しを図るでしょうが、一方で「今回の 結果を尊重すべき」とコメントした賛成派議員もいます。
ただ、この日の投票率は33%と決して高くはありませんでした。ミュンヘン住民のみならず、バイエルン州全体の意見を聞くべきか? 市民投票の意義を尊重し、建設を中止すべきか? あるいは来年行なわれる次回州議会選の際に争点として民意を問うべきか? 議論はまだまだ続きそうです。
市民に計画中止をアピールする反対派の立看板
2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。会社員を経て独立し、現在はフリーランスとして活動中。家族は夫と2匹の猫で、最近の趣味はヨガとゴルフ、フルート。