人口約155万人のミュンヘンは、ドイツ第3の規模を誇る街です。日本の大都市ほどの集中化や過密感は感じられませんが、特に1950年代以降、便利な生活と仕事の場を求める人々により都市の人口は急激に増加しています。ドイツで住みたい街として常に上位のミュンヘンでは、この傾向は今後も続くとみられ、2035年の人口は185万人に達すると試算されています。ミュンヘン市内の住居数の不足と、それに伴う不動産関連価格の値上がりは頻繁に報じられ、また、公共交通機関などインフラの老朽化によるダイヤの乱れや混雑などが日常生活に影響を与えることも少なくありません。一方、街のあちこちでは大規模な工事が進行中で、将来に向けた街づくりが進みつつあることも目に見えて感じられます。そんな中、ミュンヘン市庁舎で3月8日まで開催中の「München Weiterdenken (ミュンヘンをさらに考える)」に行ってみました。
街の発展を見守り続ける市庁舎と教会は、ミュンヘンのシンボル
マリエン広場に建つミュンヘン市庁舎の趣のある一室を占める会場では、写真や映像、都市計画のための建築モデルが展示されています。テーマは大きく分けて4つ。「都市の発展と将来計画」では統計などでミュンヘンの発展傾向が示され、「建築の特徴」では今後どのように街づくりを進めていくかといった計画を見ることができます。老朽化が進んだり非効率的な状態になっている居住地域やオフィス地区を、どう整備し再開発していく予定かが、地区ごとに考えられているようです。幹線鉄道沿いの空きスペースを利用した職住接近型集合住宅の建設や、市内の駐車場を住宅地に変更する計画などもあるよう。「フリースペースと公共の場」では、過密化が進む都市の中で重要な位置を占める公共の場をいかに効率的かつ使い勝手の良いものにしていくか、また、憩いの場として不可欠なフリースペースをどのように確保し充実させるか、革新的な例が興味深いです。例えば、建物全体が植物に覆われた高層マンションや、ルーフガーデンを持つ大規模な低層集合住宅、大規模住宅地の一角を野菜畑にするプランなどには、ドイツらしさが感じられます。そして、現代ならではのテーマ、「モビリティとデジタル化」も重要項目です。ここでは公共交通機関の拡張工事やカーシェアリングを拡大させるための方策、自転車専用道路の建築予定など、コンパクトかつ環境に優しい都市を目指す計画を見ることができます。
展示会場は水が流れる、趣のある空間
これらの計画の実現には長い時間が必要とされるので、例えば2026年完成の第2のSバーントンネルには、「工期が長すぎる」といった批判もあります。利用する側としては、完成までに強いられる不便さにうんざりしてしまうことも多々ありますが、新しいアイデアを作り上げて実行するためには、どうしても時間が必要なものなのでしょう。より魅力的になっていくミュンヘンに、期待したいと思います。
München Weiterdenken:www.muenchen.de
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。