ジャパンダイジェスト

棺桶デザイン展?!

先日、シュトゥットガルト書籍見本市を訪れるために「経済の家(Haus derWirtschaft)」に行ったときのこと。建物のロビーで長方形の派手な箱を発見し、不思議に思って近付いてみると、なんと棺桶ではありませんか! 展示されていた棺桶は計8基。8人のデザイナーがそれぞれ自分ための棺桶というコンセプトでデザインしたものだそうです。

カラーチップのような棺桶
カラフルな棺桶。墓標付き

ふた一面が芝生のように緑の草に覆われたものや、オランダ人画家ピエト・モンドリアンの油絵「赤、青、黄のコンポジション」を想起させるカラフルなもの、街中のグラフィティのようなデザインのものなど、どの棺桶も実に個性豊か。鳥の巣のように外側が木の枝で囲まれ、中には柔らかそうな羽毛が敷き詰められた、いかにも気持ちが良さそうなもの、棺桶がつるでブランコのように吊るされ、鮮やかなピンク色の本体からは天使の羽が生えているものもありました。

天使の羽が付いた赤い棺桶
ブランコのように、ゆらゆら揺れる棺桶

中でも風変わりだったのは、死後に遺族が行うべき“ワークフロー”がふた一面に書かれた棺桶。死亡→医者か警察へ連絡→自然死か否か→自殺か他殺か→自殺なら国選弁護士による死亡証明、他殺の場合は法廷へ。いずれの場合も最終的に葬儀屋へ……という具合。死は重いテーマではありますが、見ていて楽しくなる展示会でした。

この展示会を主催しているのは葬儀屋のHaller。そういえば、知り合いの写真家がこの葬儀屋でアート写真展を開いたことがあります。告別式などを挙げるホールというユニークな場所での展示だったので印象に残っていました。Hallerのウェブサイトをのぞいてみたら、随分と様々な展示をしており、近年のシュトゥットガルト・ミュージアムナイトにも出展しているそうです。

Haller社創業のきっかけは、1993年に創業者たちの父親が突然亡くなったことでした。遺族がそのショックからようやく立ち直ったとき、同じような境遇の人たちの悲しみをどうにかして和らげられないかと考え、葬儀屋を始めたそうです。アットホームな雰囲気の中で最期の別れができるよう工夫し、大切な人を失った方々の心の痛みにできる限り寄り添う形でセレモニーを提供。さらに葬儀だけでなく、その後、遺族をいたわるためのお茶会や小旅行なども企画・運営しています。自らの悲しい体験を乗り越えた上での人の痛みや悲しみに対する深い理解が、丁寧なサービスに生かされているような気がします。今回の棺桶デザイン展も、そんな発想から生まれた企画。最期の時まで人生を楽しもうとする意気込みが感じられますね。

www.bestattungshaus-haller.de
郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
http://kakueinan.wordpress.com
 
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