老後への備え
ドイツでの仏式葬儀について
人生も半ばを過ぎると、自分の最期について考えるようになります。病気やけがに見舞われて病床に伏せれば、後のことを家族や友人に頼む時間的余裕もありますが、不意に訪れるかもしれない「死」については、その後の諸々のことについて思いを巡らせてしまいます。また、キリスト教徒など、もともと仏教以外の信仰をお持ちの方は該当しないと思いますが、長年ドイツに住んで、必ずしも仏教を意識しながら生活しているわけではなくても、歳を重ねるにつれて、教会での葬儀は自分にはしっくりこないと考える人もいるようです。日本でもドイツでも、友人の中には早々と自分のお墓を購入している人がいます。
青山館長に、このような内容の質問にお答えいただきました。
バイエルン州アイゼンブッフにある禅寺「普門寺」では、葬儀は執り行っていないそうですが、恵光寺では仏式葬儀は可能なのでしょうか?
恵光寺が設立されて26年になりますが、継続して葬儀を執り行っています。
恵光寺は浄土真宗ですが、亡くなられた方がほかの宗派でも葬儀はできますか?
宗派に関係なく受け付けていますが、葬儀そのものは浄土真宗の規範に則って行われます。
申し込みはどのような手順を踏めば良いのでしょうか?
亡くなられた方のお名前と生没年月日、喪主を務める方のお名前と連絡先などをご連絡いただければ、葬儀の日時などを決めさせていただきます。
こちらの境内にお墓を立てることは可能ですか?
お寺の向かって左側の緑地が、デュッセルドルフ市公安局から認められた墓地となっています。日本の墓石のようなものは立てず、骨壺を地中に埋葬して、御影石のプレートで塞ぎます。また、分骨という形でご遺骨を預かることも可能です。その場合に必要な手続きは?
ドイツでは、医師の死亡証明書があって初めて荼だび毘に付すことが可能です。その手続きを経た後、当寺にご遺骨を持参していただくことになります。管理費として、20年で1050ユーロが掛かります。
御影石のプレートは、どのような形態で、料金はどのくらいですか?
プレート(25×25cm、厚さ4cm)には「南無阿弥陀仏」の6文字と、法名、俗名、没年月日、享年が刻まれます。刻字は専門の石材店に依頼し、費用は約1000ユーロほどです。
葬儀そのものの費用は?
私どもでは、「葬儀の値段」という考え方はしておりませんので、当寺に寄付していただける額ということになります。
青山館長が恵光寺へ来られた経緯と、仏教を通じて人々へ伝えたいことなどをお聞かせいただけますか?
私は浄土真宗本願寺派の寺に生まれ、20代に京都で得度を受けて僧侶となりました。その後大学で教鞭を執り、定年で退いてから教師(寺の住職資格)教習を経て、恵光センターに赴任しました。こちらでは、東西文化の交流を深め、欧州の地で仏教の寛容の精神を理解してもらうことに努めています。日々生かされていることへの感謝の気持ちを忘れないということを、常に意識することは大事だと思います。
以上、青山館長にお話をうかがい、ドイツで仏式葬儀という選択肢があることが分かりました。自身の「最期」をどうするか、皆様のご参考になればと思います。
講演情報
生きるということ 2
禅の立場から ― 自らの生・老・病・死を考える ―
日時 | 2014年5月31日(土)14:00~17:00 |
---|---|
講師 | 中川正壽老師(ドイツ普門寺堂頭) |
場所 | デュッセルドルフ日本クラブ |
費用 | 日本クラブ、DeJaK-友の会会員は無料 非会員3ユーロ |
申込 | Tel. 0211- 179206-0(日本クラブ) |
邦人の老後を考え行動する会「DeJaK-友の会」代表。ネット作り、情報の共有化の活動に対し、NRW州健康省大臣より表彰を受ける。著書に『日本語でどうぞ』『Bildwörterbuch zur Einführung in die japanische Kultur』など。