ベルリン・ナショナルギャラリーの絵画コレクションの一部が、シュトゥットガルト近郊の町シュヴェービッシュ・ハルで鑑られると聞いて、先日、日帰りで出掛けてきました。シュトゥットガルトの北東約60kmに位置する小さな町ですが、景色が素晴らしいとの評判を聞いていたので、観光も兼ねての訪問となりました。
車で旧市街地へ入り、予定していた美術館クンストハレ=ウルトには、すぐにたどり着くことができました。見ると、とてもユニークな建物。外見はモダンで、際立ったインパクトはありませんが、中に入ると巨大な窓ガラスが一面に! それを通して見る古い町並みがとても印象的で、窓一面に見える風景そのものが、まるで巨大な絵画のよう。近代建築と歴史ある町が、見事な融合を成していると感じました。館内に展示されているのはエドヴァルド・ムンクやパブロ・ピカソ、マックス・ベックマンなど、スーパースター級のアーティストらの作品であるにもかかわらず、なんと入場料は完全無料。コレクションは20世紀前半を代表する表現主義から新即物主義に至る数々の絵画で、贅沢な気持ちですべてをじっくりと鑑賞することができました。
絵画コレクションのテーマは「モダンタイムズ」
絵画鑑賞の後は、近くのレストラン「Zum Löwen」で郷土料理をいただき、マルクト広場に向かって散歩しました。シュヴェービッシュ・ハルの町全体は高低差のある低地と高台から成っており、歩いていると一度に様々な高さのものが見えます。幾重もの建物の壁や紅葉している木々、町の真ん中を流れるコッハー川、その川の水に映った風景の影、丘の上にある教会、本当に「美しい」の一言では言い表せません。
コッハー川沿いに佇むかわいらしい家々
マルクト広場に着いたら、そこにはさらに驚きの光景が! 広場にある、バロック様式の建物に囲まれた聖ミヒャエル教会は高い丘の上に建てられ、160段余りの大階段を上って初めて教会にたどり着くというドラマチックな構造になっているのです。ここで毎年5~6月に掛けて開催される有名な「Kuchen- und Brunnenfest(ケーキと泉の祭り)」では、大階段は観客席となり、民族衣装をまとった人たちによる演劇や鼓笛隊の演奏を見下ろすことができます。また、毎年6月中旬~8月末に掛けては野外劇場もオープンし、この大階段が舞台に早変わりするそうです。この公演は大変人気で、来年の分のチケットの販売は今年11月からすでに始まっているとか。
その他、アートの散歩道といって町の至るところにモダンな彫刻作品が置かれ、シュヴェービッシュ・ハルは小さな田舎町というのではなく、実にレベルの高い文化の町なのだという印象を受けました。
シュヴェービッシュ・ハル観光 www.schwaebischhall.de
シュヴェービッシュ・ハル野外劇場 www.freilichtspiele-hall.de/de
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com