ジャパンダイジェスト

彫刻の散歩道

シュトゥットガルト観光の1つに、「彫刻の散歩ルート」というのがあるのをご存知ですか。今回はその一部を、回りやすい順番にご紹介したいと思います。

スタートはシュトゥットガルト市立美術館前の、ケーニッヒ通りのど真ん中にそびえ立つ巨大オブジェ。これは、動く彫刻「モビール」を発明したことで有名な米国人アーティスト、アレクサンダー・カルダーによる作品「Crinkly avec disque rouge」です。風向きによりモビールが微妙なバランスで動き、様々な形に変化します。本来は赤と黄色の組み合わせなのですが、見る角度によっては白と黒の色彩を放ち、別の作品のようです。次は美術館のロビーへ。ここには、ロダンと並び近代欧州を代表する彫刻家の1人、アリスティド・マイヨールの作品「夜」が展示されています。女性のヌード作品で有名な彼ですが、近年、彼の晩年を描いた映画「The Artist And TheModel」(2012年サンセバスチャン国際映画祭監督部門銀賞受賞)で再び注目を浴びています。私は昨年その映画を観てこの彫刻の背景を知ったのですが、それは本当に感動的な出会いでした。

Crinkly avec disque rouge
市立美術館前に設置されている「Crinkly avec disque rouge」

美術館を出て、今度はシャーロッテン広場方面へ。旧宮殿とカールス広場の間に「ナチスの犠牲者のための記念碑」という彫刻が見えてきます。作者はドイツ人彫刻家エルマー・ダウハー。遠くからは重厚な暗い石の塊に見えるのですが、近付いて見ると4つの正方形の石が積み重なっており、傷や凸凹、細かい表情が見て取れます。その近くには3体のブロンズ彫刻が。これはオーストリア出身の彫刻家アルフレート・フルドリチカの作品で、それぞれに「ボクサー」「マルシュアース・Ⅰ」「死」と題名が付けられています。

さらに進むと、交差点の中央に赤いオブジェが目に飛び込んできます。これはマリエラ・モスラーの「赤い木」という作品です。その柔らかく流動的なフォルム、そして鮮やかなオレンジ色が冬の寒空の下でひと際目立ちます。道路を渡って州立図書館に到着すると、通行人を歓迎するかのように腕を伸ばして立つ彫刻、ベルンハルト・ハイリガーの「モンタナ・Ⅰ」が。この先の国立美術館と現代歴史博物館の間には、「芸術と歴史の会話」という意味が込められた作品「Points of View」(トニー· クラッグ作)が見えます。鑑賞する位置によって違うシルエットが現れ、驚きの発見があります。

マリエラ・モスラー作「赤い木」
マリエラ・モスラー作「赤い木」

今回の散歩ルートの終着点は、国立美術館の入り口にあるヘンリー・ムーアの「横たわる女」にしましょう。これらのアーティストは20世紀を代表する巨匠ばかり。そんな作品を道端で、しかも無料で鑑賞できるなんて、素晴らしいことだと思いませんか。
Kunst im Öffentlichen Raum - Route 1:
www.stuttgart.de/item/show/376880

郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com

 
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