ジャパンダイジェスト

国内で12万人の保育士が不足
清華大学で講演、学生に人権問題提起も

ベルテルスマン財団の調査で、国内で12万人の保育士が不足していることが明らかになった。7月26日付のヴェルト紙が伝えた。調査によると、保育士1人当たりの担当幼児数は旧東独地域で平均6.3人、旧西独地域では3.8人。教育専門家は、3歳以下の幼児の場合、保育士1人当たりの担当人数は3人以下が理想と指摘する。また、新たに12万人の保育士を雇用するには年間50億ユーロが必要と見込まれており、労働組合は保育士の労働条件を盛り込んだ「連邦保育法」の導入を求めている。

シュヴェージヒ家庭相(社会民主党=SPD)は、保育士の労働条件の向上を目指すとしている。

 

安楽死ほう助禁止法案めぐり論議
ほう助となる薬物投与は刑罰の対象に?

終末期患者に対する安楽死ほう助をめぐり、連立与党内で議論が高まっている。11日付のヴェルト紙などが報じた。

キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は先頃明らかにした安楽死ほう助禁止法案で、支援団体や医師などによる、安楽死ほう助となる薬物の投与を罰金または懲役刑に相当するものと定めている。一方、社会民主党(SPD)のライマン議員らはこの方針に反対。これに代わって安楽死ほう助の支援団体の活動禁止を提唱している。

健康保険大手シュヴェニンガーが行ったアンケート調査によると、「自分が重病を患った場合、安楽死ほう助を利用することを想定できる」と答えた人は70%に上る。

 

政府、ロシアへの武器輸出を禁止
EUの経済制裁外で決定

ウクライナ危機を受けて連邦政府は4日、ロシアへの全面的な武器輸出の禁止を決定した。ヴェルト紙が伝えた。

全面的な武器輸出禁止は欧州連合(EU)の対ロシア経済制裁には盛り込まれておらず、同方針を打ち出したのはEU内でドイツが初。国内では、武器製造大手ラインメタルがロシアへの1億ユーロの戦闘演習設備輸出を予定していたが、3月にガブリエル経済相(社会民主党=SPD)が中止勧告を出しており、今回の決定を受け、正式に輸出禁止が申し渡された。キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)からは同措置への反対意見が上がっているが、経済相は「金ではなく人命に関わる問題」と述べている。

 

ミュンヘン検察、バイエルン州首相府長官を捜査へ
模型自動車会社の売上不正申告疑惑で

バイエルン州議会のクリスティーネ・ハーデルトハウアー州首相府長官(キリスト教社会同盟=CSU)が経営していた模型自動車会社の所得不正申告疑惑が拡大している。9日付のヴェルト紙などが報じた。

ハーデルトハウアー長官は、精神疾患を抱える服役者が作る自動車模型の販売会社「ザポア・モデルテヒニーク」の経営に携わっていたが、2003年の政界入りと同時に経営を退き、同氏の夫が引き継いだとされていた。しかし、同社の共同経営者だったロジャー・ポントン氏が退職金として受け取った2万ユーロを不当として5万ユーロの支払いを求めて訴えたことから、同社による売り上げの不正申告疑惑が浮上し、ミュンヘン検察が捜査を開始。さらに、長官が経営を退いた後の07年と08年に長官名義のクレジットカードからトルコとパリへの旅費が引き落とされていたことも発覚したが、同氏は「娘が模型自動車の輸送のために使用した」と説明している。バイエルン州のゼーホーファー首相(CSU)は現時点で同問題への責任に言及しておらず、検察の捜査結果を待つとしている。

 

BND職員を二重スパイ疑惑で逮捕
米大使館情報部門の代表に国外退去令

連邦情報局(BND)職員が、米国諜報機関のためにスパイ行為を働いていた疑惑が浮上、逮捕され、独米関係に新たな緊張が生じている。5日付のヴェルト紙が伝えた。

今回逮捕されたのはBNDの31歳の職員。逮捕後、同職員は2年前に米諜報機関に対して情報提供を申し出、218件に上る書類と引き換えに2万5000ユーロを受け取っていたことを自供している。関係者によると、この人物は米国だけでなくロシアの機関とも情報交換を試みていた可能性があり、また連邦憲法擁護庁は、同人物を通して連邦議会の米国家安全保障局(NSA)調査委員会の内部情報が流出した可能性もあると指摘している。連邦政府は、詳しい調査結果を待ちたいとしつつも、ザイベルト広報官を通して「事態を非常に重く見ている」との見解を発表。ガウク大統領は公共放送ZDFのインタビューで、「もうこのようなことは十分だと言いたい」と怒りを示した。

また、同件の発覚から数日後に、連邦軍兵士の中にもスパイ行為を働いていた人物がいることが発覚。9日にこの兵士のベルリン住居および職場の家宅捜索が行われた。なお、現時点ではスパイ行為を働いたBND職員と連邦軍兵士の間に接点はないとみられている。

これら一連のスパイ疑惑を受けて政府は10日、在ドイツ米大使館の情報部門代表者に国外退去を命令。さらに12日には、シュタインマイアー外相(社会民主党=SPD)がオーストリアのウィーンで、ケリー米国務長官と会談を行った。同会談の主な議題は本来、原子力発電とイラン問題とされていたが、この場でシュタインマイアー外相は、今回のスパイ疑惑について言及。独米間の関係修復の手掛かりを模索した。連邦内務委員会のボスバッハ議員(キリスト教民主同盟=CDU)は、「米国は、このようなスパイ行為がどれだけ外交関係に大きな損失を与えているかを知らなければならない」とコメント。同件に対する米国の対応に疑問符を投げ掛けた。

一方、ビルト紙日曜版は米諜報機関関係筋の話として、米中央情報局(CIA)はこれ以外にも、ドイツの連邦国防省、経済省、内務省などの政府主要機関職員に多数の情報提供協力者を抱えていると報じている。

 

開業医が老後に不安
58%が後継者見付からず

健康保険医組合(KBV)が4日発表した2014年の「医師モニター」で、開業医の4人に1人が5年以内に高齢を理由に引退したいと考えていることが明らかになった。

引退を検討している医師の58%が、診療所の後継者が見付かっていないとしている。後継者問題は開業医の老後の財政問題にも直結しており、医師の4人に3人が、「診療所はもはや『老後の備え』の意味を持たない」と回答。KBVのガッセン代表は、「医師になるための勉強および研修期間は非常に長く、さらに診療所開設は大きな投資だ。社会の中で大きな役割を果たしている開業医の老後の保証が不安定であってはならない」と述べている。

 

連邦議会、最低賃金法案を可決
反対5票の圧倒的多数で

連邦議会は3日、時給8.50ユーロを全業種一律の最低賃金として定める法案を賛成票535、反対票5、棄権61の圧倒的多数で可決した。ヴェルト紙が伝えた。

今回、反対票を投じた5人は与党キリスト教民主同盟(CDU)議員で、その中の1人であるドレスデン選出のレンメル議員は「州ごとの労働市場の違いを考慮していない」として、最低賃金導入による旧東独地域での失業率増加を懸念。一方、最低賃金の適用において職業訓練生や長期失業者、および農繁期の収穫労働者や新聞配達など、一部業種への例外措置が設けられたことに対し、野党や労働組合は批判を表明している。

 

メルケル首相が中国の北京、成都を訪問
清華大学で講演、学生に人権問題提起も

メルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)が6~8日、中国を訪問し、自動車大手フォルクスワーゲンの中国工場や清華大学などを訪れた。ヴェルト紙が伝えた。

メルケル首相の中国訪問は今回で7回目。3日間にわたる訪問中には、首都・北京のほかに四川省の成都も訪れ、同市にあるフォルクスワーゲンの工場訪問や、出稼ぎ労働者の子どもたちとの交流などを行った。また現地の市場を案内されて、四川料理に必要な香辛料などを首相自ら買い求める場面もあった。さらに北京では技術工学のエリート大学として知られる清華大学で300人の学生を前に、成長と持続性についての講演を行った。メルケル首相は「開かれた自由な社会だけが、未来に成功を収めることができる」と述べ、中国の法治国家としてのあり方や民主主義、人権問題について言及した。

一方で首相は、「中国とドイツの間に意見の違いはあるが、両国間の関係には大きな可能性がある」ともコメント。メルケル首相の訪中期間中に、独中間で総額20億ユーロに相当する経済協定が締結された。

 

薬剤師連盟が権限拡大を要求
医師と患者の関係を薬剤師にも

ドイツ薬剤師連盟(ABDA)は6月25日に開かれた全体会合で、薬剤師の業務に対する新たな指針を採択した。

ABDAのシュミット議長は、「薬剤師は患者との間に、医師と患者の関係と同様の長期的な関係を築くことを希望する」と述べ、具体例として、薬剤師が患者に対して1カ月に1度面談時間を設け、処方した薬を正しく服用しているか、どのような効用がみられるかなどを話し合うことなどを提案している。また、すでに処方されている薬の再処方を、医師の診断なしに可能にすることで医師の負担を減らす案も出されている。ABDAは、今回の新方針を2030年までに実現することを目指している。

 

連帯税めぐり、州間で論議
SPDからは赤字補てん基金案

連立与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の間で、連帯税の今後の使い道をめぐる論議が活発化している。6月25日付のヴェルト紙が伝えた。

連帯税は東西統一後、旧東独地域の経済復興の名目で導入されたが、統一から24年を経て廃止論が出ていた。SPDが連帯税を各州の赤字補てん基金に移行する案を提唱する一方、バイエルン州のゼーダー財相(CSU)は連帯税の税額を半減させるべきとしている。連帯税をめぐる議論は州間財政調整とも連動しており、財政状態が良好なバイエルン、バーデン=ヴュルテンベルク、ヘッセンの3州が、他州の財政補てんに拠出する状態が続いている。

 

欧州委、再生可能エネルギー法に改善要求
連邦議会で可決も、課題山積み

連邦議会は6月27日、再生可能エネルギー法(EEG)改正法案を圧倒的多数で可決したが、この直前に欧州委員会から新たな改善点を指摘されたことを受け、施行に向けて暗雲が立ち込めている。ヴェルト紙が伝えた。

最も大きな懸案となっている欧州委員会の要求は、外国からの輸出電力に対してEEGの賦課金を免除すべきというもの。欧州委員会側の見解では、これは関税に相当し、欧州連合(EU)域内市場における自由経済の原則に反するとしている。2つ目は、自家発電に対する増税を行うというもの。これに従えば、個人や企業などで独自に太陽光発電パネルなどを取り付けて自家発電を行っている場合、賦課金の30%が2016年以降40%に引き上げられることになる。連立政府は、これについては妥協案を受け入れる用意があるとしている。3つ目は、企業に対するEEG賦課金の免除を撤廃し、2018年までに全額支払いを義務付けるというもの。現在、優遇措置を受けている企業の賦課金は5分の1まで減額されている。

欧州委員会からの改正要求を受けてメルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)は、「(EUは)現在の移行期間を乗り切ることを視野に入れずに長期的な助成システムに言及することはできないはずだ」と述べた。また、ガブリエル経済相(社会民主党=SPD)は、「何カ月にもわたる折衝の間にEU側は一度も輸出電力の課税について触れなかった」としてEUを厳しく非難。また、「EUはEEGを潰そうとしている」と述べ、「ドイツは決してEUの要求に屈しない」と反論している。

一方で、この事態に対して各州政府および野党からは、ガブリエル経済相に対する批判が集中。左派党と緑の党からは、直前にEEG改正法に手直しを加える必要が生じることについて「ずさんな仕事ぶり」とする声が上がり、緑の党の州環境相らからは「経済相に騙された」との厳しい非難の声が出ている。

EEG改正法は、8月1日の施行に向けて、7月11日には連邦参議院での決議が予定されている。6月27日に連邦議会で実施された決議では、圧倒的多数の454人が賛成票を投じて可決され、123人が反対、6人が棄権した。

 

内相、「ドイツに具体的なテロの危険性」
シリアからの帰還者を警戒

デメジエール内相(キリスト教民主同盟=CDU)は6月18日、シリアやイラクの「聖戦」に参加するためにドイツから渡航したイスラム主義者が再びドイツに帰還した場合「具体的な脅威になりうる」として警告を発した。

内相は、320人以上のイスラム教徒がドイツからシリアへ「聖戦」に参加する目的で渡航しており、うち約100人がドイツに戻ってきていることを指摘。彼らによる具体的なテロの危険性について対策を講じる必要があると述べた。これを受けてCDUのシュローブル副党首は、テロリスト教育に対する罰則を設け、テロリストの可能性がある人物に対してはドイツ国籍をはく奪し、入国禁止措置を取るべきと主張した。一方、ブランデンブルク州のヴォイトケ首相(社会民主党=SPD)は、「イスラムテロリストに関する問題は欧州全体の問題。シェンゲン協定領域内で話し合われるべき」としている。

連邦憲法擁護庁は、国内に10万人の過激派が存在するとみており、このうち4万3500人がイスラム過激派、2万7700人が極左、2万1700人が極右とされている。

 

反ユーロ政党のAfDが英保守党と連携へ
欧州保守改革グループへ参加

反ユーロを掲げる新政党ドイツのための選択肢(AfD)が、欧州議会でキャメロン英首相率いる保守党と連携し、欧州保守改革グループ(ECR)の院内会派に参加することになった。13日付のヴェルト紙が伝えた。

AfDは5月に行われた欧州議会で7議席を獲得。メルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)のユーロ救済政策を批判し、CDU・CSU(キリスト教社会同盟)との協調路線を否定している。一方、CDUのカウダー院内総務もAfD議員とのテレビ・トークショーでの共演を拒否するなど、同党との協力関係はあり得ないとの姿勢を打ち出していた。

今回の決定を受け、AfDのルッケ党首は「AfDの存在と価値が認められた」とコメント。一方で、AfDのECRへの参加を妨げようとしたとして、メルケル首相を繰り返し批判した。これに対し、これまでECRと経済政策で協力関係にあった欧州議会CDU・CSUのロイル代表はECRを「信頼を損ない、混乱を招く連携だ」と批判。また、緑の党のゲーリンク=エッカート院内総務は「ECRとAfDの連携は、メルケル首相にとって手痛い敗北」と述べている。

 

児童手当よりも保育園の食事の充実を
野菜・果物不足が問題に

ベルテルスマン財団が6日発表した調査で、栄養基準を満たした食事を園児に提供している保育園は全体の3分の1に過ぎないことが明らかになった。ヴェルト紙が伝えた。

調査によると、保育園の食事の内容が肉類に偏っており、果物や野菜が不足しているという。国内で180万人の子どもたちが保育園で食事をしているが、1回の食事費は平均2.40ユーロで、この額が少な過ぎると指摘されている。

キュナスト消費者委員会委員長(緑の党)は「児童手当よりも保育園の食事に対する助成金の増額を検討すべき」として、シュミット栄養相(キリスト教社会同盟=CSU)ら、同問題の担当相に早急な対応を迫っている。

 

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