BND職員を二重スパイ疑惑で逮捕
米大使館情報部門の代表に国外退去令
連邦情報局(BND)職員が、米国諜報機関のためにスパイ行為を働いていた疑惑が浮上、逮捕され、独米関係に新たな緊張が生じている。5日付のヴェルト紙が伝えた。
今回逮捕されたのはBNDの31歳の職員。逮捕後、同職員は2年前に米諜報機関に対して情報提供を申し出、218件に上る書類と引き換えに2万5000ユーロを受け取っていたことを自供している。関係者によると、この人物は米国だけでなくロシアの機関とも情報交換を試みていた可能性があり、また連邦憲法擁護庁は、同人物を通して連邦議会の米国家安全保障局(NSA)調査委員会の内部情報が流出した可能性もあると指摘している。連邦政府は、詳しい調査結果を待ちたいとしつつも、ザイベルト広報官を通して「事態を非常に重く見ている」との見解を発表。ガウク大統領は公共放送ZDFのインタビューで、「もうこのようなことは十分だと言いたい」と怒りを示した。
また、同件の発覚から数日後に、連邦軍兵士の中にもスパイ行為を働いていた人物がいることが発覚。9日にこの兵士のベルリン住居および職場の家宅捜索が行われた。なお、現時点ではスパイ行為を働いたBND職員と連邦軍兵士の間に接点はないとみられている。
これら一連のスパイ疑惑を受けて政府は10日、在ドイツ米大使館の情報部門代表者に国外退去を命令。さらに12日には、シュタインマイアー外相(社会民主党=SPD)がオーストリアのウィーンで、ケリー米国務長官と会談を行った。同会談の主な議題は本来、原子力発電とイラン問題とされていたが、この場でシュタインマイアー外相は、今回のスパイ疑惑について言及。独米間の関係修復の手掛かりを模索した。連邦内務委員会のボスバッハ議員(キリスト教民主同盟=CDU)は、「米国は、このようなスパイ行為がどれだけ外交関係に大きな損失を与えているかを知らなければならない」とコメント。同件に対する米国の対応に疑問符を投げ掛けた。
一方、ビルト紙日曜版は米諜報機関関係筋の話として、米中央情報局(CIA)はこれ以外にも、ドイツの連邦国防省、経済省、内務省などの政府主要機関職員に多数の情報提供協力者を抱えていると報じている。