ジャパンダイジェスト

ヘッセン州でCDUと緑の党が連立交渉へ
争点はフランクフルト空港の拡張工事

ヘッセン州議会で11月22日、キリスト教民主同盟(CDU)が緑の党と連立交渉に入ることを全会一致で決議した。連邦議会選挙と同じ9月22日に実施されたヘッセン州議会選挙で、CDUは第1党となったものの、単独過半数を獲得できず、社会民主党(SPD)および緑の党と連立協議を重ねていた。今回の決定に対し、同州SPDのシェーファー=ギュンベル代表は遺憾の意を表明しつつも「野党としての立場を積極的に貫く」と言明。左派党と緑の党との3党による連立の可能性を否定した。

連立交渉における最大の争点は、フランクフルト国際空港の拡張工事。CDUが経済効果と雇用創出をもたらすものとして、同計画を積極的に推進している一方、緑の党は騒音対策と夜間飛行の禁止、さらに第3ターミナルの建設中止を主張している。このように両党の意見が食い違っているため、今回の連立交渉開始のニュースを受けて、空港事業会社フラポートの株価は3.6%急落した。

CDUと緑の党の連立政権は、州レベルでは2010年にハンブルク市(州と同格)で初めて成立している。

 

国内の年金受給者の生活、高水準
高齢者の貧困は加速の恐れ

経済協力開発機構(OECD)が11月26日発表した調査結果で、ドイツの年金受給者の生活水準は、ほかの先進工業諸国に比べて高いことが明らかになった。

調査によると、ドイツでは高齢者が若年層よりも医療・介護において安定した保障を受けており、貧困の危機にさらされている年金受給者は10人に1人。この割合は、スイスや米国、日本では2倍に上る。

一方、国内の就業者数は7年前と比べて4150万人増加しており、ミニジョブなどの低所得労働に就く人も増えていると指摘されている。OECDによれば、今後ドイツでは高齢者貧困層の割合が急速に増加する恐れがあるという。

 

大連立政権が発足へ
最低賃金導入など、SPDの意向を強く反映

キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の3党が11月27日、大連立政権協定に合意し、第3次メルケル政権が発足する見通しとなった。ヴェルト紙が伝えた。

9月22日に実施された連邦議会選挙からおよそ2カ月に及ぶ連立協議を経て、大連立協定が成立。メルケル首相(CDU)とCSUのゼーホーファー党首、SPDのガブリエル党首が連立協定に調印した。「ドイツの未来をつくる」と題された協定書には、SPDが選挙公約として掲げていた全国一律の最低賃金を2015年から導入することや、年金保険料を45年以上納めた人に対し、63歳から年金を支給すること、パートタイム労働の規制や、将来的にドイツで生まれた外国人家庭出身者に、生涯二重国籍を認めるとした二重国籍法の改正案などが盛り込まれている。

SPD指導部は「連立協定は、社会的弱者のための協定」と強調。ノルトライン=ヴェストファーレン州のクラフト首相(同)は、「SPDは私が当初予定したよりも多くの要求を通すことができた」と述べており、実際、選挙では得票数を減らしたにもかかわらず、大連立協定ではSPDの意向が色濃く反映された内容となっている。

一方、CDU・CSUが主張していた「増税は行わない」という案は通され、SPDが要求していた高所得者への増税は却下となった。185ページに及ぶ協定書に対して、経済界からは「はっきりしない内容」と批判が集中。野党からも「財政的に実現不可能」との声が上がっている。メルケル首相は公共放送ZDFのインタビューに対し、「私には未来を予言することはできないが、新たな赤字を作らないという目的は非常に高い優先事項だ」と述べている。

東西ドイツ統一以来3回目の大連立政府となるメルケル政権は、これから実施されるSPD党員の意見投票の結果を待って成立することになる。党員投票は12月14日に集計される予定で、過半数の賛成を獲得できれば、それが大連立政権へのゴーサインとなる。

組閣が発表されるのはその後で、12月中旬の予定。CDUとSPDからは各6人、CSUからは3人の閣僚が選出される見込みとなっている。

 

大連立、年金保険料率の引き下げを阻止する見通し
経済界、野党から批判の声

2013年末に予定されていた年金保険料率の引き下げが、次期大連立政権によって阻止される見通しが強くなっている。5日付のヴェルト紙が伝えた。

年金保険料による歳入が黒字を記録していることを受け、保険料率が今年末から0.6%引き下げられることになっていたが、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)は現行の18.9%を維持する方針を打ち出している。これにより、60億ユーロに上ると見られていた企業側の負担軽減もなくなる。次期政権は、母親年金や、長年年金保険料を払い続けていたにもかかわらず、受給額が低い人向けの補助年金の導入などの改革を視野に入れており、今回、年金保険料率引き下げを見送り、300億ユーロに上る財源をその改革に充てたい意向だ。

同案に対しては、大連立政権の労働・社会問題作業部会メンバーである中間所得者連合(MIT)のリンネマン代表が「年金制度そのものの崩壊を招く危険性がある」と批判。経済専門家からも懸念の声が上がっているほか、左派党は「中間所得層に対する窃盗行為だ」と非難している。

 

緑の党議員がスノーデン氏と面会
政府、ドイツへの受け入れは否定

緑の党のハンス=クリスチャン・シュトレーベレ連邦議会議員が10月31日、ロシアの首都モスクワを訪れ、現在1年間の期限付きでロシアに亡命中の元米国情報機関職員のエドワード・スノーデン氏と面会した。スノーデン氏はシュトレーベレ議員に書簡を託し、「ドイツ側に話をする用意がある」との意思を表明した。

スノーデン氏とシュトレーベレ議員はこの日、モスクワ某所で3時間に及ぶ面談を行った。スノーデン氏はシュトレーベレ議員に託した書簡の中で、「米情報機関に勤めている間、構造的な不法行為が行われていることを確信し、良心に基づいて告発するに至った」と記している。さらに「情報公開によって、私に対する迫害キャンペーンが行われるようになった。(中略)これらの事態を収拾するために、あなた方の国でお話しすることができれば嬉しく思う」とし、ドイツを訪れ、米情報機関の情報収集の実態について話す用意があることを綴っている。

これを受けて米国当局は、機密情報を漏えいさせたスノーデン氏に対し、改めてその身柄を本国に移送することを求める声明を発表。一方、連邦議会内の諜報活動調査委員会のメンバーでもあるシュトレーベレ議員は、米国をはじめとする各国に対して、超法規的措置を取ってスノーデン氏の罪を問うことをやめるよう求めた。

キリスト教民主同盟(CDU)のショッケンホフ副院内総務は、スノーデン氏をドイツに招くことに反対の意を表明。フリードリヒ内相(キリスト教社会同盟=CSU)は、「スノーデン氏が話す用意があると言うのならば、その機会を設けるようにしたい」と述べつつも、同氏のドイツ亡命に関しては認可しないとしており、その理由として「スノーデン氏は政治的迫害を受けているわけではなく、亡命申請権がない」としている。

なお、スノーデン氏による最新の情報開示により、米当局がメルケル首相(CDU)の携帯電話を盗聴していたと報道されたことを受け、公共放送ARDの世論調査では、ドイツ人の61%が「もう米国を信用できない」として不信感を表明。「米国が信頼できるパートナーである」との見解を持つ人は35%にとどまった。

 

人生の満足度が高いのは北部
移民は旧東独市民より幸せ?

ドイチェ・ポストの委託によりフライブルク大学が行った人生の満足度調査の結果「幸福アトラス2013」が5日発表され、国内に暮らす移民の方が旧東独地域市民よりも人生に対する満足度が高いことが分かった。

3000人を対象に、国内19地域で行われた調査の結果、「人生に満足している」という項目で最も高い数値を示したのがシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州(最高値10中7.31)で、これにハンブルク(同7.27)、ニーダ―ザクセン州(同7.17)が続く。一方、旧東独地域では最低値を示したブランデンブルク州(同6.52)を筆頭に軒並み低く、移民の方が満足度が高いことが明らかになった。

 

労働局、ハルツ4規定の厳格化を検討
片親世帯への追加給付に制限

連邦労働局は6日、長期失業者向け生活保護ハルツ4に関し、査定や罰則の強化、保護費の引き下げなどを提唱する内容の報告書を発表した。ヴェルト紙が伝えた。

連邦と州の労働局の作業部会が作成した報告書では、片親家庭に対し、親が仕事をしていない、あるいは一定基準を満たしていない場合の追加給付の廃止を提唱。また、受給者が労働局が指定した面談を3回キャンセルした場合、現在は支給額の10%減額となっている罰則を強化し、保護給付を一時停止することを検討している。

さらに、他省庁とのデータ照合を行い、ハルツ4の不正受給に対する取り締まりを強化する方針も打ち出している。

 

ザクセン州の教育制度が最優秀
学校中退者数が減少傾向

ケルンの経済研究所(IW)が10月22日発表した「教育モニター2013」で、国内で最も優秀な教育制度を持つ州はザクセン州であることが明らかになった。これにテューリンゲン州、バイエルン州が続く。一方、最下位はベルリン市州、ザールラント州、ブランデンブルク州の順。

調査では、国内16州の教育制度を比較。それによると、教育制度全体としては上向きの傾向を示し、学校中退者の数は2005~11年の間に8.2%から6%へ、移民家庭の子どもに限定した場合も17.4%から11.8%へ減少した。20~30歳の若者で、職業訓練修了資格を持たない人の割合も、16.5%から13.4%と減少している。

 

脱税捜査は徒労?
税収の平均85%は州間財政調整に

脱税などを取り締まる税務当局の捜査を通じて確保された州の税収が、州間財政調整によって州内に留まらないことが、ハレ経済研究所(IWH)の調査で明らかになった。10月25日付のヴェルト紙が伝えた。

調査によると、州間財政調整は非常に複雑な仕組みであるため、各州が税務調査によって得た税収の平均85%が、結局はその州の税収として残らないという。そのため、各州が税務調査に掛ける予算はごくわずかになっている。

州間財政調整は、大連立政権交渉においても大きなテーマの1つとなっており、最大拠出州であるバイエルン州およびヘッセン州が、同制度に異論を唱えている。

 

大連立交渉の目玉政策に経済界が懸念を表明
最低賃金、DGBは歓迎の意向

キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)による大連立政権樹立に向けた本格交渉が始まったが、その政策内容について、経済界から懸念の声が高まっている。10月23日付のヴェルト紙が伝えた。

ドイツ雇用者連盟(BDA)のフント会長は、国内全業種一律で時給8.50ユーロの最低賃金を法制化することに反対を表明し、「8.50ユーロの最低賃金の導入は国内の労働市場を破壊することになる」と警告した。8.50ユーロの最低賃金はSPDが選挙公約として掲げ、政権を獲得した際には100日以内に実施するとした「100日プログラム」の中にも盛り込まれており、大連立交渉でも目玉となっている。フント会長はさらに、「特別な理由がない限り、期間限定雇用を禁止する」という同党の提案も「企業の競争力を減速させるもの」「無責任な提案だ」と批判している。

一方で、ドイツ労働組合総同盟(DGB)のハナック議長は「我々は新政権に対し、労働市場における新たな規律を期待している。そのためにも、最低賃金や期間限定雇用の制限は必須だ」と述べている。

 

米当局、独首相の携帯電話を盗聴か
オバマ米大統領、「関知していなかった」

メルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)の携帯電話が、米情報局の盗聴対象となっていたことが発覚し、衝撃が広がっている。10月25日付のヴェルト紙が伝えた。

メルケル首相の盗聴疑惑については、米国家安全保障局(NSA)の元職員だったエドワード・スノーデン氏の押収された資料の中に、首相が2009年10月~13年7月まで使用していた携帯電話の番号が載っていたことから発覚したものとみられる。メルケル首相は10月23日、同件についてオバマ米大統領と電話会談を行い、「このような監視行動は終わりにしていただきたい」と抗議を申し入れた。この際、オバマ米大統領は遺憾の意を表明、しかし盗聴の件については「自分は関知していなかった」と述べたという。

これに対しビルト紙日曜版は、情報機関関係者筋の話として、オバマ米大統領は2010年にNSA長官から盗聴に関する詳細を聞いていた、メルケル首相の携帯が盗聴の対象になっていたことも知っていたはずだと報じた。一方、米ウォール・ストリート・ジャーナル誌は同国政府筋の話として、オバマ米大統領がNSAからメルケル首相の監視について知らされたのは今年の夏で、それ以来、監視活動は中止されていたと報じている。

盗聴疑惑発覚後、欧州連合(EU)首脳会議に出席したメルケル首相は会議に先立ち、「友人間での盗聴というのはあり得ない話」「強い結び付きを持つパートナーとは信頼関係が必須だが、その信頼関係を根底から作り直さなければならない」などのコメントを発表した。EU首脳会議では、ドイツとフランスが中心となって、同盟国の間の盗聴の防止策について米国と交渉を進めることが話し合われ、近々EUから米国に特使が派遣されることになった。

ドイツ連邦議会は11月18日に特別会合を開き、盗聴疑惑に関する調査委員会を立ち上げる方針。社会民主党(SPD)のオッペルマン院内総務は、イラク戦争に反対を唱えたシュレーダー元首相(同)の携帯電話も盗聴されていた可能性があると指摘した。今回のスキャンダルを受け、左派党からは「我々は事実を明らかにしてくれたスノーデン氏に感謝しなければならない。彼のドイツへの亡命申請を認めるべきだ」との意見も出ている。

 

読解力、6人に1人が小学生レベル
OECDの成人学力調査で

経済協力開発機構(OECD)が実施した成人学力調査によると、ドイツ人の読解力はOECD平均以下で、6人に1人が小学生レベルの読解力しか有していないことが明らかになった。9日付のヴェルト紙が伝えた。

調査は、OECDが5年掛けて24カ国の16~65歳の16万6000人を対象に行ったもの。それによると、成人の読解力が最も高かった国は日本、フィンランド、オランダで、ドイツでは成人の6人に1人が簡単な単語を使った短い文章しか理解できない「小学生レベル」の読解力を示したという。また、最下位のイタリア、スペインでは、4人に1人以上の読解力が非常に低いとされた。

 

ディスカウントスーパーの商品価格が上昇
ビオ商品の増加などが原因

市場調査会社GfKの調べで、アルディやリドルなどのディスカウントスーパーの商品の平均価格が上がっていることが明らかになった。11月付のヴェルト紙が伝えた。

調査によると、今年8月に消費者がディスカウントスーパーでの買い物で出費した金額が、前年同期比4%上昇している一方、ディスカウントをうたっていない通常のスーパーでの出費額上昇率は1.6%だった。ディスカウントスーパー商品の値上がりの理由としては、自然農法によるビオ商品や有名ブランドメーカーの商品が増えたことなどが挙げられている。これらはディスカウントスーパーの商品の中でも、若干高めの価格設定になっている。

 

緑の党の新院内総務にゲーリンク=エッカート氏
連邦議会選の大敗受け、新体制始動

緑の党は8日、連邦議会選挙での敗北を受けて新たな連邦議会院内総務にカトリン・ゲーリング=エッカート氏を選出し、新体制を始動させた。ヴェルト紙が伝えた。

先の連邦議会選挙で、緑の党の得票率は8.4%(前回10.7%)と大きく後退。この結果の責任を取る形で、これまで院内総務を務めていたキューナスト氏とトリッティン氏が同職を退くことを表明していた。

新たな院内総務の選出に際し、ゲーリング=エッカート氏は今回の選挙でトリッティン氏に次ぐ筆頭候補の地位を占めていたことから、このことに対する同氏の責任を問う声も挙がっていたが、同党の連邦議会議員63人中41人がゲーリング=エッカート氏に投票。対立候補だったアンドレ氏を下して選出された。また、共同院内総務に環境交通問題担当のホフライトナー議員、ベック事務局長の後任にはハッセルマン議員が選出された。

ゲーリング=エッカート氏はキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との連立に懸念を示し、特にフリードリヒ内相(CSU)の難民問題に関する見解を批判している。

 

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