ジャパンダイジェスト

「天然ガス採掘法として経済効果大」
IG BCEとBDI、フレッキングの使用許可求める

鉱業、化学、エネルギー労働組合(IG BCE)とドイツ産業連盟(BDI)は4月25日、連名で、天然ガスの採掘法として注目されている水圧破砕法、フラッキング技術使用許可を求める書簡を政府に送った。ヴェルト紙が報じた。

フラッキングは頁岩(けつがん)の層まで深い穴を掘り、高い水圧で天然ガスおよび石油を採掘する方法。しかしこの技術による地下水の汚染が懸念されており、環境保護団体からは反対の声が上がっている。書簡はIG BCEのヴァジリアディス代表とBDIのグリロ議長の連名で書かれており、「フラッキング技術によって採掘できる天然ガスには1兆ユーロ相当の価値がある」と強調している。

 

都市連絡協議会が家賃対策を提唱
新規入居者に対する値上げに上限

ドイツ都市連絡協議会は4月23日、主要都市の家賃の高騰に歯止めを掛けるため、新たな入居者に対する家賃について、当該地域の通常の家賃から10%以上の値上げを行ってはならないとする案を提出した。

近年、国内主要都市および人口密集地域のミュンヘン、ライン=マイン地方、シュトゥットガルト、ケルン、デュッセルドルフ、ハンブルクなどで家賃の高騰による住居不足が指摘され、ドイツ借家人連盟などから家賃の値上げに対する規制要求が出されていた。家主はこれまで、新規間借り人との契約の際、意のままに家賃の値上げを行うことができていたが、今後はこれに規制が掛けられる見込み。

 

バイエルン・ミュンヘンの会長が脱税
保釈金500万ユーロで勾留を免れた事実も

サッカー・ブンデスリーガの名門チーム、バイエルン・ミュンヘンのウリ・ヘーネス会長が脱税を行っていたことを自ら告白し、さらに今年3月には脱税容疑で一時的に勾留されて500万ユーロの保釈金を支払っていたことが明らかになった。これを受け、政界にも波紋が広がっている。4月22日付のヴェルト紙などが伝えた。

ヘーネス会長はスイスに隠し口座を持ち、脱税をしていた事実を自ら認める発言を行い、「大きな間違いを犯した」として「事の解決を司法に委ねたい」と述べた。これに対し、ヘーネス会長と関わりの深かった政府与党関係者からは失望の声が続出。連邦政府のザイベルト広報官は「多くの人がウリ・ヘーネスに失望している。メルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)もその1人だ」とコメント。ヘッセン州のハーン法相(自由民主党=FDP)は、「長年ドイツのスポーツ界に大きく貢献した人物なだけに残念」としながらも、「スポーツのモラルをつかさどる立場にいる人物が脱税をするということは、傲慢のなせる業だ」と批判した。

一方、社会民主党(SPD)のシュタインマイヤー院内総務は、キリスト教社会同盟(CSU)とヘーネス氏の長年にわたる密接な関係性を指摘。「CSUへの寄付者リストの中にヘーネス氏の名前があるかどうか、確認する必要がある」と述べた。

さらにヘーネス会長が3月20日に一時的に勾留され、家宅捜索を受けていたこと、保釈金500万ユーロを支払って勾留継続を免れていた事実が発覚すると、野党内での同氏への批判がさらに過熱。SPDと緑の党は「社会的影響力のある立場の人間も、ほかの犯罪者と同様に厳しく訴追されるべき」と主張し、左派党もヘーネス氏に対する厳重処分を求めた。これに対し与党は、同件に対する野党のネガティブ・キャンペーンが行き過ぎであると批判した。

ヘーネス会長は現在61歳。サッカー選手としてブンデスリーガで活躍し、引退後、1979年にバイエルン・ミュンヘンのゼネラル・マネージャーに就任。その後、バイエルン・ミュンヘンの財政を大きく立て直し、2006年のサッカー・ワールドカップ(W杯)の会場にもなった専用スタジアム、アリアンツ・アレーナの建設にも貢献した。

 

冷たい累進課税効果で国庫に200億ユーロ
低所得者層に負担

「冷たい累進課税」と呼ばれる所得税増税効果により、2010~17年に、国庫に200億ユーロの税収が見込まれることが明らかになった。9日付のヴェルト紙が伝えた。

「冷たい累進課税」とは、被雇用者の所得増に合わせて所得税も上昇することで、結果的に手取り額が減少するというもの。ケルンのドイツ経済研究所(IW)が、新社会市場経済イニシアティブ(INSM)の委託で行った調査では、2010~17年の間に、増税による負担増を被る市民の割合は20%に上る見通し。また、年収3万~4万ユーロの低所得者層および中間所得者層の負担が特に増えると見られ、社会的不平等の見直し議論が起こっている。

 

NSU裁判でトルコ系メディアの傍聴席確保
憲法裁、開廷は5月に延期

10年以上に及ぶ連続殺人事件の実行犯とされる極右テロ組織、国家社会主義地下組織(NSU)のメンバー、ベアーテ・チェーペ被告の裁判をめぐり、トルコ系メディアが傍聴席を確保できないことに対して、トルコのSabah紙がドイツの連邦憲法裁判所に不服を申し立てていた件で、憲法裁は12日、訴えを部分的に認め、「事件の被害者に関わりのある国のメディアに適切な数の傍聴席を与えるべき」との判断を下した。これを受けて裁判は3週間延期され、5月6日に開廷されることになった。

NSUによる外国系市民連続殺人事件では、被害者10人のうち8人がトルコ系だったにもかかわらず、50ある報道陣席の中にトルコ系メディアのための傍聴席が1席も確保されていないとして、Sabah紙が訴えを起こしていた。 

NSU裁判の傍聴席問題をめぐっては、左派党、緑の党、社会民主党(SPD)のトルコ系議員らが中心となって、連邦議会内で55人の議員がアピールを採択。「メディアの関心に対応できる法廷環境を用意すべき」とのコメントを発表した。このアピールには、シュミット元保健相(SPD)も賛同。「人種差別による犯罪の裁判で、外国メディア、特にトルコ系メディアが締め出されているという印象を与えることは致命的だ」との見解を述べた。対応策としては、裁判の様子を配信し、映像を通して傍聴できる別室を用意することも提案されている。

一方で、ヘッセン州を中心に、全国の刑務所で服役する極右受刑者を支援するネットワークの存在が発覚。その目的は、極右犯罪を犯した受刑者に対し、収監中および出所後の財政支援を行うというもので、極右思想の教育や普及なども行なっており、2011年に発覚した同様の組織は連邦内務相から活動禁止命令を受けている。同組織には、1990年代にNSUのメンバーも関わっていたという。

また、チェーペ被告が収監後に新たな極右組織に加入していた可能性も浮上。ヘッセン州カッセルのネオナチ組織代表のベルント・Tが収監中のチェーペ被告に接触し、新たな極右組織「AD(アーリア人種保護連盟)」への参加を呼び掛けていたという。Tは極右組織「シュトルム18」の創設者で、ホームレス殺害の前科を持つ。

 

独政府、人身売買対策に遅れ
EU基準を遵守できず

連邦政府が、欧州連合(EU)の定める人身売買に対する具体策を順守できていないことが明らかになった。5日付のヴェルト紙が報じた。EU域内では年間10万人が強制的に連れ去られ、うち4人に3人は未成年者を含む女性で、売春を強要されているという。被害者が加害者からの報復を恐れるため、裁判に至るケースは少ないという。

これを受けてEUは、人身売買に関する具体的な対策を各政府に要求。加害者に対する厳罰を求めるなど被害者の保護を訴えているが、ロイトホイサー=シュナーレンベルガー法相(自由民主党=FDP)は、「必要なのは法改正ではなく、警察側の対応」との見解を示している。

 

ハノーファー検察がヴルフ前大統領を在宅起訴
罰金刑を受け入れず、法廷へ

ハノーファー検察は12日、汚職疑惑で昨年辞任したクリスティアン・ヴルフ前大統領を在宅起訴した。検察はヴルフ氏に対し、2万ユーロの罰金支払いと引き換えに不起訴とする条件を提示していたが、前大統領がこれを拒絶。無罪を主張し、法廷で闘う構えを見せた。

ヴルフ前大統領はニーダーザクセン州首相だった2008年9月に映画製作者のダヴィット・グレーネヴォルト氏から休暇旅行費用やホテル代などの利益供与を受け、その見返りとして映画の配給を支援するなど便宜を図ったとして、汚職行為を指摘されている。グレーネヴォルト氏も贈賄罪で起訴されている。ヴルフ氏は弁護士を通じて、検察側の訴えは事実無根であると主張、「大統領の威信にかけて戦う」との見解を述べた。

ヴルフ前大統領をめぐる一連の金銭スキャンダルは、2011年末に発覚。自宅購入の際に、知人から個人的な金銭借入を行っていた件に始まり、知人への利益・便宜供与問題などが指摘され、昨年2月に辞職に追い込まれた。今年3月には、長年の側近であった元広報官が起訴された。

 

NPDの違憲審査申請、政府は不参加
野党や州政府からは批判の声

連邦政府は3月20日、連邦参議院が決議していた極右政党ドイツ国家民主党(NPD)の違憲審査を連邦憲法裁判所に求める申請に参加しない方針を明らかにした。

州政府の代表からなる連邦参議院によるNPD禁止申請について、レスラー副首相(自由民主党=FDP)はこれを「尊重する」としながらも、「(極右のような)愚行は禁止するのではなく、政治的に対峙していかなければならない」と述べ、連邦政府としては禁止申請を行わない意向を明らかにした。これに対し、野党・社会民主党(SPD)からは批判が噴出。同党のオッパーマン幹事長は、「メルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)が本件に対する責任を州政府に負わせるというのは、耐えがたいこと」とコメント。ザクセン=アンハルト州のハーゼロフ首相(同)は「極右テロ組織NSUによる犯罪があった事実を踏まえ、これに対する明確な政治姿勢を示さなければならない」と述べ、NPD禁止申請の意義を強調した。

連邦政府の決定を受け、禁止申請の是非に対する論議が再燃。ノルトライン=ヴェストファーレン州CDUのラシェット代表は、「州政府はNPD禁止申請の実施について、もう一度熟考すべきである」として、「禁止を実現するためには、NPDが民主主義を根本から脅かす存在であるという証明が必要。それを踏まえて考えると、連邦憲法裁が違憲判断を下すかどうかは不確実」と発言。一方、ドイツ・ユダヤ人評議会は今回の連邦政府の決定に「失望している。間違った判断だ」との見解を発表した。

連邦参議院では昨年12月、連邦憲法裁に対するNPD禁止申請を決議している。しかし、10年前にも連邦政府、議会および州政府によるNPD禁止申請が行われたが、NPD上層部に捜査当局の情報提供者が多数いたことから、申請そのものが却下された経緯がある。

一方で、13年前に開始された極右組織からの脱退を促進するプログラム「エクジット」に関しては、今年の5月1日付で、連邦政府および欧州連合(EU)からの支援期限が終了する。これまで年間合計16万5000ユーロの助成金を得ていた同プログラムを存続させるかについて、政府は連邦労働省を交えて議論する予定。

 

ヴルフ前大統領、罰金支払えば不起訴に
公職時代の利益供与疑惑で

ハノーファー検察局は3月22日、汚職疑惑に問われているヴルフ前大統領に対し、2万ユーロの罰金の支払いと引き換えに起訴を行わないとする条件を発表した。

ヴルフ前大統領は、ニーダーザクセン州首相時代の金銭借入問題や、知人への利益・便宜供与問題などで昨年辞職に追い込まれた。検察は、ヴルフ氏が映像制作会社社長のグレーネヴォルト氏から休暇旅行の費用やホテル代などの利益供与を受け、その見返りとして便宜を図ったとして汚職を指摘している。検察側の提案を受け入れた場合、ヴルフ氏は「刑法上の責任を負う」という形になる。罰金か起訴かの選択期日は4月8日。

 

ゴアレーベンへの核廃棄物輸送中止へ
環境相とニーダ―ザクセン州が合意

使用済み核燃料の最終貯蔵施設問題をめぐって3月25日、アルトマイヤー連邦環境相(キリスト教民主同盟=CDU)とニーダ―ザクセン州政府が会合を持ち、最終処理場の場所が法的に確定するまでは同州ゴアレーベンへの核燃料廃棄物輸送を中断することで合意した。

会合では、環境活動家など24人の構成員による意見調査委員会の設立を確認。最終処理場探しに関する法整備のための意見の取りまとめを行う。ゴアレーベンについては、1977年に当時の州政府が核燃料廃棄物貯蔵施設建設を決定。その後、度重なる反対運動を経て連邦・州政府が新たな貯蔵施設候補地を探し始めることで合意していた。

 

FDPの連帯税廃止論をめぐり与党内で議論
財務相には廃止の意向なし

旧東独地域の経済復興支援の名目で導入されている連帯税に対し、9月の連邦議会選挙を前に論議が起こっている。3月25日付のヴェルト紙が伝えた。

論議の発端は、自由民主党(FDP)のブリューデルレ院内総務が「連帯税をできるだけ速やかに廃止すべき」と発言したこと。これに対し、旧東独のメクレンブルク=フォアポンメルン州、ザクセン州政府などから反対の声が挙がり、ザクセン=アンハルト州のハーゼロフ首相(キリスト教民主同盟=CDU)は、連帯税の意義を確認するために「インフラ開発支援金」などと改名することなどを提案した。

ショイブレ財務相(同)は、「旧東独の経済再建を目指す連帯協定は2019年まで有効。連帯税はこの連帯協定と結び付いて」として廃止案を一蹴。一方、FDPは連帯税の額を14年から段階的に減らし、2019年の期限をもって完全に廃止するとの案を提示している。

連帯税は1991年に導入され、当初は所得税の7.5%だったが、98年以降は一律5.5%が徴収されている。連帯税による連邦政府の年間税収は120億ユーロに上る。

 

シュトゥットガルト21の工費、65億ユーロに増大へ
ドイチェ・バーンの監査役会が工事続行を決定

シュトゥットガルト中央駅とその周辺一帯の大規模な都市改造計画「シュトゥットガルト21」の工事続行をドイチェ・バーンの監査役会が決定した。これにより、これまで45億ユーロと見積もられていた工事費用が20億ユーロ増の65億ユーロに増大することが明らかになった。6日付のヴェルト紙が伝えた。

シュトゥットガルト21に対しては、これまでも実施の是非をめぐって州民投票が行われるなど論議を呼んできたが、工期のさらなる延期が決まったことなどを受け、工事費用がさらに20億ユーロ増大することとなった。

工事続行を決定した監査役会側は「長期的に見て、工事を続行する方が中断するよりも経済的なメリットが大きい」と話しているが、緑の党が政権を担うバーデン=ヴュルテンベルク州およびシュトゥットガルト市は、追加工事費用の捻出を拒否。これに対してラムザウアー交通相(キリスト教社会同盟=CSU)は、「同州が工事費用を負担しないのであれば、鉄道料金の値上がりにつながる可能性もある。本来は同州が責任を負うべき」と警告している。

 

役員・幹部の報酬に制限を
スイスの国民投票を受け、ドイツ国内で議論

先頃、スイスで国民投票により、企業の役員・幹部の報酬への制限設置が決定したことを受け、ドイツ国内でも同様の論議が行われている。5日付のヴェルト紙が伝えた。

役員・幹部の報酬制限措置について与党・キリスト教社会同盟(CSU)と自由民主党(FDP)は賛成を表明し、CSUのハッセルフェルト議員は欧州、国内の政策課題に盛り込むことを提案。また、FDPのブリューデルレ院内総務は「連邦議会選挙の前に同件に関する布石を置くべき」と発言した。一方、キリスト教民主同盟(CDU)は、同問題は一国で決めるべきことではないとして慎重論を展開。協調が必要として、欧州委員会内での検討を提案している。

 

検察、ヴルフ前大統領の報道官を起訴
イベント・マネージャーに便宜供与

ハノーファー検察局は6日、クリスティアン・ヴルフ前大統領の報道官だったオラフ・グレーゼッカー氏を収賄容疑で起訴したことを発表した。ヴェルト紙が伝えた。

グレーゼッカー氏は、ヴルフ前大統領のニーダーザクセン州議員時代から長年にわたり、側近・報道官として活躍した。起訴状は、グレーゼッカー氏がニーダーザクセン州政府報道官だった2007~09年に、イベント・マネージャーのマンフレート・シュミット氏に対して不当な便宜供与を行ったとするもの。この見返りとしてグレーゼッカー氏は、19回にわたる飛行機代や休暇地での滞在費用など1万2000ユーロ相当の利益供与を受けたとされている。

 

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