ジャパンダイジェスト

フリードリヒ農相が辞任
SPD元議員の児童ポルノ・スキャンダル受け

児童ポルノのデータを購入していたゼバスティアン・エダティー連邦議会議員(社会民主党=SPD)が捜査対象になっているとの情報を、内相だった当時、SPD幹部にもらしていた事実が発覚したハンス・ペーター=フリードリヒ農相(キリスト教社会同盟=CSU)が14日、辞任を発表した。ヴェルト紙が伝えた。

エダティー議員は2005年10月~10年6月の間に、9回にわたってカナダのオンラインショップで合計31点の児童ポルノの映像と写真データを購入。これらすべてに9~14歳の裸の少年が写っており、同議員は連邦議会のサーバーを使用してデータを入手していたとみられている。

同件に関しては、カナダの警察当局から独連邦刑事局に通報があったが、昨年10月の時点で当時の連邦政府およびSPD上層部に情報が伝わっていたといい、検察は「言葉を失っている」とコメントした。

検察局は、今月6日にランメルト連邦議会議長(キリスト教民主同盟=CDU)宛てにエダティー議員の訴追手続き開始の告知を提出。その2日後の8日に同議員は、健康上の理由から数日前に連邦議会議員の職を退いたことを発表した。ハノーファー検察局はエダティー氏の自宅を家宅捜索した際、容疑を実証する証拠となるものを押収できなかったとしており、事前に同氏に情報が伝わり、証拠隠滅が行われた可能性があるとしている。

フリードリヒ農相は辞任会見で、「私は当時、SPDのガブリエル党首に情報を伝えたが、政治的にも法的にも正しい行動を取ったと確信している」として、「私はまた戻ってくるだろう」と述べた。これに対し、大連立政権内では、SPDのオッペルマン院内総務に対しても同件の責任を問う声が強まっているが、同氏は「当時私が伝え聞いた情報では、データの中身は法律に抵触するものではないとの理解だった」と釈明している。

フリードリヒ農相の辞任を受け、CSUのウール内政担当議員は、「内相はSPDのために責任を取って辞任した。検察の怠惰でエダティー氏が無罪になるようなことがあれば、これほどばかげたことはない」と発言。大連立政権内での不協和音が高まっている。

 

北から南への送電網設置プロジェクトに暗雲
バイエルン首相が計画の凍結を主張

バイエルン州のゼーホーファー首相(キリスト教社会同盟=CSU)が、北部と南部を結ぶ800キロメートルの送電線を敷設する送電網プロジェクトをいったん凍結すべきと主張し、物議を醸している。6日付のヴェルト紙が伝えた。

同プロジェクトは、原子力発電に代わる再生可能エネルギーとしてシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州で生産された風力発電エネルギーについて、ニーダーザクセン州、ノルトライン=ヴェストファーレン州、ヘッセン州を通ってバイエルン州まで送電線を敷設し、2022年から供給を開始するというもの。16年に着工予定で、建設費として数十億ユーロが見込まれている。しかし、これに対して市民から「景観を損なう」などとして根強い反対の声が上がり、このたびバイエルン州首相が計画凍結を訴えた。

バイエルン州では、3月に地方自治体選挙を控えており、ゼーホーファー氏の反対表明も、選挙戦を睨んで行われたものとみられている。これに対し、欧州委員会のエッティンガー・エネルギー担当委員は同州政府を批判。「送電線は早急に必要不可欠のもの」と強調している。

 

仕事を持つ親は不健康?
子どもの有無が運動や睡眠に影響

被雇用者健康保険DAKが13日発表した健康リポート2013によると、フルタイムで働く人のうち、子どもを持たない人の方が、子どものいる人よりも自身の健康に配慮していることが明らかになった。ヴェルト紙が伝えた。

リポートによると、十分に運動をしている女性の割合は、子どものいる人で17%だったのに対し、子どものいない人では30%。休息や睡眠をしっかり取っているのは、母親で48%、子どものいない女性では61%。健康な食事を心掛けている母親は50.8%、子どものいない女性では54.5%だった。さらに、アルコールやタバコの摂取量は、父親の方が子どものいない男性よりも多いことがわかった。

 

CDUのリンセン財務担当が辞任
90年代に用途不明の送金

キリスト教民主同盟(CDU)財務担当のヘルムート・リンセン氏が、1990年代にタックスヘブンのバハマ諸島に多額の金を送金していたことが発覚し、同氏は6日、現職を辞任した。ヴェルト紙が伝えた。

リンセン氏は1997年、ルクセンブルクの銀行口座を通じてバハマ諸島に40万ユーロを送金。2004年にこの口座を閉鎖した。同氏は問題の金について「亡くなった両親の遺産で、税理上何の問題もない」と説明していたが、今回の件はノルトライン=ヴェストファーレン州が購入した税金に関するCDのデータから発覚。社会民主党(SPD)、緑の党から事実説明要求が高まり、辞任を発表した。

 

1600万人分のユーザー情報が流出
犯罪ネットワーク上で発見

連邦情報技術保護局(BSI)が1月21日発表した報告書で、犯罪ネットワーク上で1600万件に上るネットユーザーの情報が盗み取られていることが明らかになった。

盗み取られているのは電子メールのアカウント情報のほか、フェイスブックなどのソーシャルネットワーク(SNS)や、オンラインショッピングでのアカウント情報。自身のユーザー情報が盗難被害に遭っているかどうかは、www.sicherheitstest.bsi.deに電子メールアドレスを入力して確認できる。BSIは、盗難被害が判明した場合、使用しているコンピューターやソフトウェアを点検し、すべてのパスワードを変更するよう呼び掛けている。

 

メーゼベルク宮殿で閣僚会議
エネルギー、年金問題などで合意

連邦政府の迎賓館であるブランデンブルク州のメーゼベルク宮殿で、1月22、23日の2日間にわたって閣僚会議が行われ、エネルギー政策や年金改革などについて話し合われた。ヴェルト紙が伝えた。

今回の会議で最重要議題となったのは、再生可能エネルギー法の改革。連邦政府は2050年までに電力の80%を再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げているが、電力料金の値上がりに直面し、ガブリエル経済相(社会民主党=SPD)は再生可能エネルギーの助成金の見直しを求めている。加えて、欧州委員会からもドイツの産業への助成措置を問題視する声が上がっている。

これに対し、バイエルン州、バーデン=ヴュルテンベルク州の両州は、エネルギー問題に関しては連邦と州による合意が形成されなければならないとして、双方のエネルギー問題担当大臣が集う会合を定期的に招集するべきであると主張。ガブリエル経済相もこれに同意した。

また、もう1つの主要議題として注目を集めたのが年金改革。年金保険料を45年納付していた場合に63歳から年金を受給でき、失業期間の5年間も納付期間に換算されるというものだが、1992年以前に出産した母親に対して育児休暇期間分の給付金を年金に上乗せする母親年金の導入と併せて、各方面から非難が集中。これに対し、同改革を主導するSPDは、高齢者に公正で豊かな晩年を送ってほしいとして、その意義を強調している。

その他、議題に上ったのが、今年各地で開催予定の地方自治体選挙について。今年は3月16日にバイエルン州で地方自治体選挙が予定されているが、自由有権者同盟およびドイツのための選択肢などの野党勢力の拡大がキリスト教社会同盟(CSU)の立場を脅かすことが懸念されている。

また、5月25日には欧州議会選挙が実施されるほか、ノルトライン=ヴェストファーレン州、バーデン=ヴュルテンベルク州など数州で地方自治体選挙が行われる。さらに8月31日にはザクセン州、9月14日にはブランデンブルク州とテューリンゲン州でも州選挙を控えているなど、選挙が目白押しとなっており、大連立政権への支持を測る指標になるとみられている。

 

政府、SPD主導の年金受給年齢引き下げ案を承認
経済界などから批判の声

連邦政府は1月30日、年金受給年齢の63歳への引き下げを盛り込んだ年金改革案を承認した。これに対し、経済界などから批判の声が上がっている。

ドイツの年金制度では、これまで65歳とされていた受給年齢を段階的に67歳に引き上げていくことになっていたが、社会民主党(SPD)および左派党がこれに反対していた。このたび、SPD主導で導入が決まった年金受給年齢の引き下げ案は、45年間年金保険料を納めていた場合に63歳から年金を受給できるというもので、納付期間が45年に満たなかった場合も65歳から受給が可能になる。

メルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)は同案について、「高齢者や病気の人など、社会的弱者に配慮したもの」と説明している。一方、ドイツ商工会議所のヴォルザイファー所長は、「高齢の熟練労働者の労働力が必要とされており、部分年金と組み合わせた柔軟な年金制度こそが求められる」と発言。また、シュレーダー元首相(SPD)は自著の中で「年金受給年齢63歳の導入は、根本的な問題解決にはならない」と批判している。

 

DBのチケット販売方法に問題?
連邦カルテル庁が調査へ

ドイチェ・バーン(DB)が、民営鉄道のチケット販売を不利にしているとの批判が持ち上がり、連邦カルテル庁が調査に乗り出した。1月31日付のヴェルト紙が伝えた。

現在、駅構内のDB窓口では民営鉄道のチケットは販売されておらず、民営鉄道会社が同窓口で販売する場合、DBに高額の手数料を支払う必要があり、チケット販売において不利な立場にあると指摘されている。民営鉄道会社ヴェオリアの担当者が「我々の事業規模は、駅に独自の窓口を設けるには小さ過ぎる」と主張する一方、DBは「ルフトハンザがライアンエアーやイージージェットの航空券を販売しないのと同じことだ」と反論している。

 

大連立、移民政策をめぐり議論
CSUの覚書に非難が集中

今年1月1日からルーマニアとブルガリアからの移民に対して労働市場が完全に開放されたことを受け、キリスト教社会同盟(CSU)が手厚い社会保障制度による生活保護の受給を目的にドイツへ来る「貧困移民」の急増に警鐘を鳴らし、物議を醸している。4日付のヴェルト紙が伝えた。

論議の火種となったのは、CSUが年明けに発表した「詐欺を働く者は飛ばされる」と題された覚書。その中でCSUは、新政権はEU市民の権利である域内移動の自由を濫用し、ドイツに来て職に就くことなく生活保護受給する、いわゆる「社会保障詐欺」を働いた移民に対して、再入国禁止などの罰則規定を設けるべきと主張している。また、ブローク欧州議会議員(キリスト教民主同盟=CDU)は「社会保障詐欺師」の再入国を防ぐため、ルーマニアとブルガリアからの入国者の指紋採取を提唱した。

これに対し、野党・自由民主党(FDP)のリントナー党首は「CSUは支持者に話のネタを提供したいか法的基盤を知らないかのどちらかだ。移民流入を警告するのではなく、受け入れ体制を整えることが必要」とコメント。CSUの母体であるカトリック教会の慈善福祉団体カリタスのネーアー代表も、「経済的に豊かでない南・東欧諸国の人々も、故郷以外の場所で自身と家族のために生きる手段を探している」とした上で、CSUの主張は大衆扇動的で移民に対する偏見を助長するものだと非難している。

内務省の統計によると、国内に616万人いる長期失業者向け生活保護手当ハルツ4の受給者のうち、ルーマニア人は1万8000人、ブルガリア人は2万人で、合わせても受給者全体のわずか0.6%。同手当や児童手当などの社会保障が彼らによって濫用されている事実は報告されておらず、ネーアー氏は「貧困国からの移民の大多数が就業していることを無視してはならない」と主張する。

一方で、移民が集中する地域の自治体の負担増が問題となっていることから、連邦・州による支援強化が不可欠との声も上がっており、CDU・CSUと社会民主党(SPD)は内務省と外務省、労働省の次官らから成る移民問題の作業部会設置を決定。想定される社会保障制度濫用への対策の必要性や内容について話し合うとしている。

 

法相、個人情報関連法案作成を見送り
与党内から批判の声

昨年末に発足した大連立政権で法相に就任した社会民主党(SPD)のマース氏が5日、個人情報の収集・保存について、関連法案の作成を当面見送る方針を明らかにした。

犯罪防止を目的とした個人の通信・通話記録の収集・保存に関しては、キリスト教民主・社会同盟(CDU)とSPDが連立交渉で合意し、大連立協定書にも盛り込まれた。しかし、マース法相は「同政策がEU市民の権利を侵害し得るか否かについて、欧州裁判所の最終的な判断が下るまで法案を作成しない」と主張。これに対し、CSUのウール内政担当やデメジエール内相(CDU)は、「大連立協定書で合意したことは順守すべき」と非難している。

 

EUの個人情報の収集・保存めぐり論議
プライバシー侵害の可能性

犯罪防止を目的とした個人の通信データの収集・保存をめぐり、欧州連合(EU)の方針が変更される可能性が浮上している。13日付のヴェルト紙が伝えた。

EUの規定では2006年以降、具体的な嫌疑がない場合でも電話会社の通信記録が2年間保存されることになっている。しかしこの規定について、欧州裁判所の鑑定人は通信記録の保存期間が長過ぎるなど、プライバシーの保護に関するEUの基本権に抵触する可能性を指摘している。

一方、ドイツの次期大連立政権は、データの保存期間を3カ月に縮小し、開示は重犯罪に関わる場合と裁判官の許可を得た場合に可能にすることを検討している。

 

国際学力到達度テストでドイツが上位にランクイン
優秀な生徒への支援不足を懸念する声も

経済開発協力機構(OECD)による国際学力到達度テスト(PISA)の最新結果が3日発表され、ドイツが上位グループにランクインした。ヴェルト紙が伝えた。

PISAは2000年以降、3年に1度実施されており、各加盟国の15歳の生徒の学力を数学、読み書き、自然科学の科目で比較している。2000年のテストで、ドイツが下位にランクインしたことが大きな社会問題となって以降、教育制度の見直しが叫ばれてきた。今回の調査結果では、数学が514点とOECD平均を20ポイントも上回り、読解力が508点(OECD平均496点)、自然科学が524点(同501点)と軒並み高得点を獲得した。

成績向上の理由として、社会的に学習環境に恵まれない子どもたちの能力向上が挙げられた一方、ドイツ教師会連盟のクラウス会長は、「学習能力の劣る生徒の支援に力が入れられている一方で、能力の高い子どもたちの力をもっと伸ばそうとする働き掛けが弱い」と指摘。「ギムナジウムだけでなく専門職分野においてもエリート育成制度が必要である」と述べている。

 

財政難を抱える都市が増加
都市と地方の経済格差が拡大

キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の3党が11月27日、大連立政権協定に合意し、第3次メルケル政権が発足する見通しとなった。ヴェルト紙が伝えた。

英コンサルティング大手EYが11日発表した調査で、ドイツでは好景気と税収増にもかかわらず、深刻な財政難に陥っている都市の数が2010~12年の間に14都市から21都市に増えたことが明らかになった。

調査対象となった国内72都市の負債総額は、2010年に448億ユーロだったが、12年には7%増の479億ユーロに。最多の負債を抱える都市はエッセンで、32億4000万ユーロ。一方、住民1人当たりの負債額が最も多いのはオーバーハウゼンとオッフェンバッハだった。全体として裕福な都市と財政難の都市の経済格差が広がっており、「貧富の二極化が生まれている」と指摘されている。

 

第3次メルケル政権が発足
SPD、大連立政権を承認

大連立政権への是非を問う社会民主党(SPD)の党員投票の結果が14日集計され、75%の賛成票を得てキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との大連立政権を承認した。これにより、9月の連邦議会選挙から3カ月を経て第3次メルケル政権が発足した。ヴェルト紙が伝えた。

新政権発足の決定を受けて、閣僚の顔ぶれが発表された。その中で、最も驚きを持って迎えられたのが、フォン・デア・ライエン氏(CDU)の国防相就任。同氏はこれまでにもメルケル政権で家庭相、労働相を歴任した人物で、今回ドイツ史上初の女性国防相誕生となる。これにより、これまで国防相を務めていたデメジエール氏(同)は内相に、そしてフリードリヒ内相(CSU)は農業相へとポスト替えが行われる。今年5月に発覚した無人偵察機の購入に関する問題などで批判の矢面に立たされていたデメジエール国防相が、今回の人事に対してどのような反応を示したかについてメルケル首相は、「各人が各任務に対し、情熱を持って取り組もうとしている」と回答した。

このほか、交通相にはCSUのドブリント幹事長が就任。CSUが推進する普通乗用車に対するアウトバーン通行税導入の行方が注目される。財相は大方の予想通り、ショイブレ氏(CDU)が続投。保健相にはCDUのグレーエ幹事長、首相府長官にはアルトマイヤー環境相(CDU)が就任する。

なお、連立パートナーのSPDからは、ガブリエル党首が経済相とエネルギー相を兼任する「スーパー大臣」のポストに、外相にはシュタインマイヤー氏が就任する。同氏がこのポストに就くのは2度目。社会相には、SPD幹事長のナーレス氏が、家庭相にはメクレンブルク=フォアポンメルン州の社会相、シュヴェーズィヒ氏が抜てきされた。

このたびの閣僚人事について野党・緑の党のホフライター院内総務は、ラムザウアー交通相の後任に同じCSUからドブリント氏が選ばれたことについて、「交通相の任務をポピュリスト的政治家に任せるべきではない」とコメント。また、ガブリエル氏が経済とエネルギー問題を同時に担当することに対して「非常に興味深い」と皮肉り、「大連立政権は刷新や将来性よりも大手電力会社の関心事を重んじている」との批判を展開している。

 

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