ジャパンダイジェスト

ギュンター・グラス氏の発言に非難集中
SPDシュタインブリュック氏同席の場でに

ノーベル文学賞作家のギュンター・グラス氏が6月26日、社会民主党(SPD)首相候補のシュタインブリュック氏同席の下で行った発言が波紋を呼んでいる。

この日、ベルリンSPD党本部のヴィリー・ブラント・ハウスに招かれたグラス氏はメルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)に対し、「彼女は適応力と日和見主義を旧東独で学んだ」などと発言。また、連邦軍について「傭兵」という言葉を用いた。CDUのグレーエ事務局長は「グラス氏の発言は政治的に逸脱している。シュタインブリュック氏は同氏と距離を置いた方が良い」と批判。自由民主党(FDP)からも、同発言に対して非難の声が挙がっている。

 

政府、洪水被害地域に80億ユーロを支援へ
エルベ川などで記録的な増水

5月から続いていた大雨が原因で、エルベ川やドナウ川などが増水し、ザクセン州やザクセン=アンハルト州、バイエルン州などが大規模な洪水被害に見舞われている。連邦政府はこの事態を受け、80億ユーロの支援金拠出を決定した。13日付のヴェルト紙などが報じた。

被害地域は南東部からシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州など北部まで、国内9州にまたがっており、農業における被害総額だけでも数億ユーロに上るとみられている。中でも被害が最も甚大とみられているのが、ザクセン=アンハルト州の州都マクデブルクで、同市ではエルベ川の水位が通常よりも5メートル近く高くなり、エルベ川とザーレ川が合流する地点のダムが決壊。2万3000人の住民に避難勧告が出された。

今回の事態を受け、メルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)とガウク大統領は相次いで被害地域を訪問。ザクセン=アンハルト州のハレ市とザクセン州のマイセン市を9日に訪れたガウク大統領は、救援活動を行っている市民ボランティアをねぎらい、被害地域への寄付と結束をドイツ全土に呼び掛けた。一方、12日にシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州のラウエンブルク市を訪れたメルケル首相は、「被害支援に上限を設けない」と明言。被害地域の州首相を集めて緊急会合を開き、連邦と州で支援基金を設けて80億ユーロの支援金を拠出することを約束した。これに伴う増税は行わないとしている。ショイブレ財務相(CDU)の広報官は、「重要なのは増税するか否かという問題ではなく、いかに迅速に十分な支援が行われるかである」とコメント。さらに、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州のアルビッヒ首相(社会民主党=SPD)は「緊急の支援を必要としている人たちがいる今、財源についての論議をしている場合ではない」と述べた。

今回の洪水被害は「世紀の大洪水」と呼ばれた2002年時のものよりも甚大とみられている。当時、連邦政府と州政府は災害基金を設立して70億ユーロを拠出、これに伴う増税が行われた。一方、ドイツ赤十字の関係者は、「当時は急速な勢いで寄付金が集まったが、今回はその流れが比較的緩やか」と述べている。

 

NPD禁止申請が再度延期へ
州内相会議で懐疑的意見

極右政党NPDの禁止申請が再度延期される見通しとなったと、10日付のヴェルト紙が報じた。州内相作業部会によると、9月の連邦議会選挙前の申請実現は困難という。

NPDの禁止申請をめぐっては、これまでも長年、論議されてきたが、申請に踏み切れない理由として、「法的に見て政治家が想定したよりも事態が複雑」であること、最高裁に相当する連邦憲法裁判所での禁止法認可が実現するかどうかが不確実であることなどが挙げられている。

5月末に行われた州内相会議では、NPD勢力が強く州議会に5議席を獲得しているメクレンブルク=フォアポンメルン州などから、禁止に対する懐疑的見解が出されていた。

 

子どもの抗精神病薬服用率が上昇
過去7年で41%増

公的健康保険のバーマーGEKが11日発表した医薬品リポートで、子どもと青少年の抗精神病薬服用率が2005~12年の7年間に41%増加したことが明らかになった。

同リポート作成に関わった専門家のグレスケ氏は、「抗精神病薬服用率の上昇が直接、子どもの精神疾患率上昇を示すものではない」としつつ、服用率の上昇については憂慮すべき事態と見ており、これらの薬に頭痛や不眠、肥満などの顕著な副作用が伴うことを指摘している。

子ども、および青少年に抗精神病薬が処方されているケースの48%が「多動性障害」で、30%が「社会性を持つことへの障害」となっている。

 

ドイツに1年以上滞在する移民は少数派
OECDの最新調査

経済協力開発機構(OECD)が13日発表した「国際移民事情」調査によると、近年ドイツに入国した移民が1年以上滞在するケースは少ないことが明らかになった。

同調査によると、2011年にドイツで暮らしていたギリシャ人のうち、1年以上滞在していたケースは2人に1人で、ポルトガル人の場合も似たような調査結果となっている。スペイン人の場合は、1年以上ドイツに留まるケースが3人に1人。イタリア人の40%が長期滞在に該当するという。

OECDの専門家であるトーマス・リービッヒ氏は、「ドイツはもっと移民受け入れのための努力をすべきである」と述べ、職業資格や高い学歴を持つ移民のため、ドイツの資格に準ずるものとしての資格認定と雇用創出をすべきであると指摘した。

ドイツの移民人口増加率は、OECD諸国の中でも群を抜いており、11年には30万人が外国から入国、前年の10年と比較して6万8000人増となっている。さらに、07~ 11年にかけてのギリシャからの移民は73%増、スペインからの移民は50%増となっている。

 

ジョブセンターで暴行事件相次ぐ
ライプツィヒで男が職員の頭部を殴打

5月21日、ライプツィヒのジョブセンターに34歳の男がハンマーを持って押し入り、52歳の女性職員の頭を殴打し、負傷させる事件が起こった。ヴェルト紙が伝えた。

ジョブセンターのライストナー広報官によると、この男は以前、同センターに対して脅迫的な発言を行ったため、立ち入り禁止となっていた。この日、男は警備の隙を縫って職員の女性に襲い掛かり、その場に居た別の利用者が止めに入って、警備員が来るまで男を取り押さえた。

1カ月半前には、ノルトライン=ヴェストファーレン州のノイスで、52歳の失業者の男に32歳の女性職員が刺殺されるという事件が起こっている。

 

22歳女性が精子提供者と対面
「実父を知る権利」を認められ

匿名の精子提供者の協力による人工授精で出生したザラ・P(22)さんが先頃、「実の父親」を突き止め、対面した。5月24日付のヴェルト紙が伝えた。

ザラさんの母親は1990年代前半にエッセンの生殖医療センターで治療を受け、匿名の精子提供者による精子でザラさんを妊娠、出産した。成人したザラさんはこの経緯に関し、ハム上級裁判所に「実の父親の名前を知る権利」を求めて訴えを起こし、今年2月にこれが認められた。

実の父親とされる人物は、ザラさんのテレビ出演を見て名乗り出て、DNA鑑定を経て親子と確認された。「父親」と対面したザラさんは、「とても幸せ」と話している。

 

無人偵察機プロジェクトがとん挫
国防相への批判高まる

欧州空域での飛行許可が下りずにとん挫した無人偵察機ユーロホークの開発プロジェクトをめぐり、デメジエール国防相(キリスト教民主同盟=CDU)への批判が集中している。5月22日付のヴェルト紙などが伝えた。

ユーロホークは、米国ノースロップ・グラマン社が開発した無人航空機グローバルホークの一機種で、コンピューターによる遠隔操作によって上空20キロの高さを40時間飛行することが可能。連邦国防省が同機の購入を計画していたが、欧州航空安全局から飛行許可が下りず、購入を断念することとなった。

これに対し、野党から批判が噴出。国防省がユーロホークの開発に推定6億8000万ユーロの税金を投じていたことを指摘し、飛行許可に関する問題は2011年末時点で明らかになっていたにもかかわらず、連邦政府が同件の公表を怠ったと非難した。また、ドイツ納税者連盟も「脱税が罪になるのと同様、税金の無駄遣いに対しても、これを罰する法整備が必要」と主張している。納税者連盟の「税金の無駄遣いリスト」によると、昨年の連邦政府による税金の無駄遣いは推定250億ユーロに上るという。

今回の事態を受け、与野党からは現在進行中の無人偵察機プロジェクトを一旦すべて中止すべきとの声が挙がっている。CDUのバルトレ財政問題担当は、ドイツが4億8300ユーロを出資して参加している北大西洋条約機構(NATO)の無人偵察機プロジェクトについて、「欧州空域での飛行許可を確認した上でプロジェクトへの参加続行を決定すべき」と言明。社会民主党(SPD)のバルテルス国防問題担当も、「不確実な状態で、NATOに数百万ユーロも支払い続けることはできない」とコメントした。これに対し、NATO側は「我々は開発中のシステムに飛行許可が下りることを確信している」としている。

このほか、連邦軍の武器購入に際して背任行為があったとしてコブレンツ検察局が同件の捜査を開始しており、国防省の情報公開の不透明さに批判が高まっている。批判の矢面に立たされているデメジエール国防相は、ベルリン戦略会議で講演した際、ユーロホーク問題について言及したが、自身の責任を認める発言は行わなかった。

 

実際の人口、公式の数値より少なかったことが判明
四半世紀ぶりに国勢調査実施

連邦統計局が5月31日に発表した国勢調査(2011年5月実施)で、実際の人口が公式記録などから推測されていた数字と比べて大幅に少なかったことが明らかになった。前回、国勢調査が行われたのは旧西独で1987年、旧東独では1981年で、今回の調査は四半世紀ぶり。

今回の調査結果によると、8170万人と推測されていた国内人口が、実際は8020万人であることが判明。推測されていたよりも人口が少なかった最も顕著な例はベルリン市で、347万人と見積もられていた人口が実際には329万人で、5.2%少なかった。さらにハンブルク市は178万人と見積もられていた人口が170万人で、その差は4.6%だった。また、国内全人口の7.7%に相当する620万人が外国籍を所有しており、外国人の人口比率が州別で最も高かったのはハンブルク市で12.4%、これにベルリン市(11.3%)、ヘッセン州(11,1%)が続く。一方、旧東独地域の外国人人口比率は平均1.5~1.8%だった。 

このほか、65歳以上の高齢者の人口比率が最も多いのはゲルリッツ市で26.98%だった。

 

93歳の元ナチス強制収容所看守を逮捕
アウシュヴィッツに勤務

シュトゥットガルト検察局は6日、ナチス強制収容所の元看守ハンス・リプシス(93)を逮捕したことを発表した。ヴェルト紙が伝えた。

リプシス容疑者は1941~45年にアウシュヴィッツ強制収容所に看守兼調理師として勤務し、この間、囚人の殺害に加担したとされる。今回の逮捕について同収容所記念館のキヴィンスキ館長は「人間性に対する罪に時効はない。強制収容所に関わったナチスに対しての裁判が2%しか実施されていない事実を踏まえても、今回の逮捕は意義のあること」と述べた。リプシス容疑者は現在、ルートヴィヒスブルク近郊の警察病院に収容されている。

 

ドイツへの移民数が急増
南欧の経済危機とEU東方拡大が要因

連邦統計局が7日発表したところによると、2012年にドイツへ入国した移民の数は108万1000人となり、過去17年来で最多を記録した。ヴェルト紙が伝えた。

移民増加の原因として、南欧諸国の経済危機と欧州連合(EU)の東方拡大が挙げられる。出身国別にみると、ポーランドからの移民が18万人、これに次いでルーマニアが11万6000人、ブルガリアが5万8000人。一方、スペインやギリシャなど、4人に1人が失業状態にある南欧諸国からの移民が前年比で40~45%急増した。

移民数が前年比13%増となった一方、ドイツ国外へ移住した人も前年比5%増加し、71万2000人となった。

 

多数のバイエルン州議員が職員手当てで近親者を雇用
法相は給与返還を要求

多数のバイエルン州議会議員が、近親者を事務所職員として雇い、国から支給される職員手当を支払っていたことが明らかになった。8日のヴェルト紙などが伝えた。

今回、2000~08年の間に79人のバイエル州議会議員が配偶者などの近親者を職員として雇用し、その多くがキリスト教社会同盟(CSU)と社会民主党(SPD)の議員であったことが発覚。現時点で17人の議員が近親者を雇用しており、そのほとんどが与党CSUの議員という。

同件を受けてロイトホイサー=シュナーレンベルガー法相(自由民主党= FDP)は、不当に受け取った給与の返還を要求。CSU閣僚の5人がこれに応じるとしている。

また、アウグスブルク検察はCSUの前院内総務ゲオルク・シュミット氏に対する捜査を開始した。シュミット氏は長年にわたって自分の妻を雇用し、国からの職員手当を月5500ユーロ支給。同氏の妻は自営業者として委託を受ける形を取っていたが、シュミット氏はこれを税理士の勧めに従ったものとしている。これに対し検察は、社会保障法に抵触する疑いがあるとしている。

 

極右テロ組織NSUの裁判が開廷
被告側の抗議で延期に

極右テロ組織「国家社会主義地下組織(NSU)」の裁判が6日、ミュンヘン上級地方裁判所で始まった。起訴されているのは、NSUのメンバー、ベアーテ・チェーペ被告とその協力者とされる4人で、2000~06年に掛けて起こった外国系市民連続殺害事件などの罪に問われている。

この裁判の開廷は当初、4月17日に予定されていたが、報道陣の傍聴席問題を受け、3週間延期された。傍聴席問題とは、殺害事件の被害者10人のうち8人がトルコ系であるにもかかわらず、トルコ系メディアに傍聴席が与えらなかったというもので、トルコ紙が連邦憲法裁判所に訴えを起こしていた。これに対し憲法裁は、「事件の被害者に関わりのある国のメディアに適切な数の傍聴席を与えるべき」との判決を下した。

裁判では開廷早々、チェーペ被告によって「裁判官が予断を抱いていることを理由に忌避する」という訴えが提出され、審議開始には至らなかった。被告側は、ゲッツル裁判長が被告側に対してのみ、入廷前に武器チェックを行わせたことを指摘。これを中立的でないとして訴え、審議は5月14日まで中断されたが、ミュンヘン上級裁地裁は、「根拠のない訴え」として却下した。

裁判当日は早朝から警察官500人が裁判所とその周辺に配備され、約100人の報道陣と傍聴希望者が裁判所前に詰め掛けた。ドイツ・トルコ人協会のケナン・コラート会長は裁判に先立ち、「我々は被告人に対して最も厳しい刑、終身刑を望む」とのコメント発表。さらに「NSUと公安当局および憲法擁護庁との癒着がすべて明るみに出ることを希望する」と述べた。ミュンヘン市内では、20のトルコ系団体の代表が集まって、裁判後に傍聴人からの説明会が行われ、同事件への市民の関心の高さをうかがわせた。

同事件は、被害者がトルコ系およびギリシャ系の小売店主だったことから「ドネルケバブ殺人」などと呼ばれ、警察当局が移民同士の内部抗争ではないかと推測して捜査に乗り出さなかったことから被害が拡大した背景がある。実行犯とみられるNSU メンバーの2人は事件発覚直前に自殺しており、同件に直接関わっているとされる人物の中では、チェーペ被告が唯一の生存者となる。

 

新党AfD、結党から7週間で党員1万人に
海賊党との連立の可能性も

反ユーロを掲げて結党された新党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、結党から7週間で党員数1万人に達し、勢力の増大が与党を脅かしている。

4月26日付のヴェルト紙によると、AfDの連邦議会選挙のためのスポンサーとして、大手食品メーカーおよびホテル・レストランチェーンの「メーヴェンピック」のオーナー、アウグスト・フォン・フィンク氏が関わる可能性があるという。同氏はこれまで、キリスト教社会同盟(CSU)の歴代党首、フランツ=ヨーゼフ・シュトラウス氏や、エドムント・シュトイバー氏を経済的に支援してきたとされており、このことが保守陣営に打撃を与えている。ショイブレ財務相(キリスト教民主同盟=CDU)は、「AfDの存在はCDU・CSUおよび自由民主党(FDP)の連立の大多数を脅かす可能性がある」と発言した。

さらに、AfDのルッケ党首が海賊党のシュレーマー党首に、「我々の目指すところは一致していると信じる」との旨を書いたメールを送っていたことが明らかになり、海賊党と連携する可能性も浮上している。

 

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