極右テロ組織NSUの裁判が開廷
被告側の抗議で延期に
極右テロ組織「国家社会主義地下組織(NSU)」の裁判が6日、ミュンヘン上級地方裁判所で始まった。起訴されているのは、NSUのメンバー、ベアーテ・チェーペ被告とその協力者とされる4人で、2000~06年に掛けて起こった外国系市民連続殺害事件などの罪に問われている。
この裁判の開廷は当初、4月17日に予定されていたが、報道陣の傍聴席問題を受け、3週間延期された。傍聴席問題とは、殺害事件の被害者10人のうち8人がトルコ系であるにもかかわらず、トルコ系メディアに傍聴席が与えらなかったというもので、トルコ紙が連邦憲法裁判所に訴えを起こしていた。これに対し憲法裁は、「事件の被害者に関わりのある国のメディアに適切な数の傍聴席を与えるべき」との判決を下した。
裁判では開廷早々、チェーペ被告によって「裁判官が予断を抱いていることを理由に忌避する」という訴えが提出され、審議開始には至らなかった。被告側は、ゲッツル裁判長が被告側に対してのみ、入廷前に武器チェックを行わせたことを指摘。これを中立的でないとして訴え、審議は5月14日まで中断されたが、ミュンヘン上級裁地裁は、「根拠のない訴え」として却下した。
裁判当日は早朝から警察官500人が裁判所とその周辺に配備され、約100人の報道陣と傍聴希望者が裁判所前に詰め掛けた。ドイツ・トルコ人協会のケナン・コラート会長は裁判に先立ち、「我々は被告人に対して最も厳しい刑、終身刑を望む」とのコメント発表。さらに「NSUと公安当局および憲法擁護庁との癒着がすべて明るみに出ることを希望する」と述べた。ミュンヘン市内では、20のトルコ系団体の代表が集まって、裁判後に傍聴人からの説明会が行われ、同事件への市民の関心の高さをうかがわせた。
同事件は、被害者がトルコ系およびギリシャ系の小売店主だったことから「ドネルケバブ殺人」などと呼ばれ、警察当局が移民同士の内部抗争ではないかと推測して捜査に乗り出さなかったことから被害が拡大した背景がある。実行犯とみられるNSU メンバーの2人は事件発覚直前に自殺しており、同件に直接関わっているとされる人物の中では、チェーペ被告が唯一の生存者となる。