現在、世界中で親しまれている囲碁は、もちろんドイツでも人気です。毎週のように各地でトーナメントが開催され、インターネット上ではリーグ戦(ブンデスリーガ)も行われています。今回、ドレスデンのヨハンシュタット地区で囲碁の活動をしている団体「Go碁Freund Johannstadt」で、参加者に囲碁の面白さを尋ねてきました。
このグループの活動がスタートしたのは、ちょうど難民問題が取り上げられ始めた頃。難民と地元市民たちとを地域でつなぐ企画の1つとして発足しました。会の発足に携わった岩井泰(やすし)さんによれば、最初は人が集まらず、一度は閉じてしまおうかと思ったそうです。しかし、ネットの情報等で興味を持った地域の住民たちがその後集まるようになり、活動は現在も続いています。週1回夕方2時間の囲碁打ちに、最近では6~7人が参加するようになりました。地域の集会所の一室で碁盤と碁石を広げると、参加者たちの対局が始まります。両者の合意で終局し勝敗が決まった後、対局を振り返る検討をします。静寂な対局と真剣な検討に、見ているこちらもつい熱くなり、一緒にのぞきこんでしまいました。
真剣なまなざしで対局する参加者たち。左手前が岩井さん
岩井さんの解説に、場の空気も和む
参加者が囲碁に興味を持ったきっかけは、さまざまです。友人や親戚を介して知る人もいれば、映画や漫画から興味を持つ人、活動をネット情報等で知り参加する人もいます。年齢や性別も異なる人々が、囲碁という1つの魅力に惹かれて集まるという面白さがあります。参加者たちに囲碁の魅力を聞いてみると、先の手を考えて戦略を練ることや相手の手を読みながら行う頭脳ゲームであることに、面白さを感じている人が多いようです。夕方の時間帯で仕事後に集中する大変さも感じながら、それでも定期的に打つことによって、それぞれ囲碁の面白さの深みにはまっていっているように思えました。
地域の集会所の一室にて
対局中の会話はないですが、盤を挟み向き合って互いに石を置いていくのは、コミュニケーションの1つのようです。各々に打ち方の特徴があり、性格も表れるのだとか。日独で対局経験のある岩井さんに日独の打ち方の特徴を聞いてみたところ、日本では布石を敷きながら慎重に進める人が多い一方で、ドイツでは序盤から勝負を仕掛けに打ち込んでいく人が多い傾向にあるようです。囲碁を別の言い方で「手談(しゅだん)」と呼ぶそうですが、言葉を交わさなくとも囲碁を一局打てば心が通じ合うという意味も持ち、まさに囲碁にはグローバルに広がっていくための魅力が秘められていると感じました。
www.facebook.com/gofreundjohannstadt
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。