将棋の遠い親戚で紀元前のインドに起源をもつと言われるチェスは世界150カ国以上で楽しまれ、ゲームであると同時に国際オリンピック委員会(IOC)に承認されているスポーツであり、科学あるいは芸術とも言われています。1927年以来、国際チェス連盟により2年に1度開催されるチェス・オリンピック(Schacholympiade)の第38回大会が、ドレスデンで11月12日~25日まで約2週間にわたって開催されました。チェスだけではなく、それに因んだ文化的な催しも充実し、ミュージカル「チェス」の上演、碁や将棋、マージャンなどアジアにおける盤上ゲームの用具を紹介する展覧会などが脇役として街を盛り上げていました。
対戦中のプレーヤーたち
参加チームは男性146チーム、女性111チームで、各チームは4人のプレーヤーで構成されています。ノルウェー出身の16歳の天才少年カールセン君や現在世界ランキング1位のトパロフ氏(ブルガリア)、高レベルの世界競技会の常連で長年トッププレーヤーとして活躍するコルチノイ氏(旧ソ連出身、現スイス)ほか、スタープレーヤーが多数参加し、彼らとその妙技を一目見ようとギャラリーも熱い視線を送りました。
会場には約550台のチェス盤が並べられ、そこに一堂が会して試合が行われます。一般の見学者は観覧席から見学し、出場者たちは自由に歩き回って他の試合を見ることができるので、有名プレーヤーの周囲には人だかりができます。徹夜明けのような目つきで集中し考え込むプレーヤーたち、見守る多くの人々。1000人以上の人々が集っているのに話し声ゼロという大ホールは息が詰まるものがありますが、熱戦を目の前にして興奮してしまいます。大ホールの外では、最強女性プレーヤーであるポルガー氏(ハンガリー)によるゲームの解説などイベントもありました。
開催4日目には地元の小学生たちによるチェス大会が同会場であり、各学校で勝ち抜いた子どもたちが大人顔負けの真剣さで臨みました。偶然にも我が家の下の階に住む男の子が出場するというので応援に出かけました。夫は4回、私は3回も試合見物に足を運び、地元市民として国際イベントをたっぷり味わうことができた静かな熱狂の2週間でした。
賑やかな子どもプレーヤーたち
結果はと言うと、旧ソ連、ロシアおよび旧ソ連諸国の連勝ぶりは他を圧倒しており、今大会の優勝チームは前回と同様アルメニアでした。次回2010年大会はロシアのハンティ・マンシースクで開催されます。
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/