ジャパンダイジェスト

Cyber-Tea

ドレスデンにお茶の間が出現! 毎年5~7月の3カ月にわたって建築関係のイベント「アーキテクチャーサマー・ドレスデン(architektursommer_dd)」が行われ、その期間中のメイン・イベント「建築の日(Tag der Architektur)」は、ドイツ全土で開催されます。今年は6月27、28日に開催され、建築の展覧会や建築事務所のオープンハウス、プレゼンテーションなど、一般市民向けに様々な催しが企画されました。

その中でも異彩を放っていたのが「Cyber-Tea」。ドレスデン在住の若き建築家、照内孝明さんが制作に携わったこの建築は、ドレスデン工科大学の建築学科前にお目見えしました。照内さんがこれを作ったきっかけは、ほかのイベントで使用したコンテナを違う形で再利用できないかと考えたこと。そして「日本の茶室のようなものを作ろう」と思いつき、それが「コンテナという小さな空間でのお茶の間」に発展しました。目指したのは、彼がデザイン・製作したちゃぶ台風「ちゃぶていぶる」を囲んで、ゆったりと時間を過ごせるような空間。業務用の大きなラップやIKEAの敷物など、材料はドイツで簡単に入手できるものを探し、オープン前日にドイツ人女子学生と2人で、1日掛かりで完成させたそうです。

中に入る時に靴を脱ぐのですが、靴が溢れた小さな玄関先では、四畳半の木造賃貸アパートにいるような気分になりました。私たちが遊びに行った時には一時的に雨が激しく降ったので、来場者たちが駆け込んで狭い空間は満員になり、その光景は学生の下宿部屋を彷彿とさせました。「ちゃぶていぶる」を囲んで緑茶をご馳走になると、まるで日本にいるかのように、お茶の間のくつろぎと居心地の良さを感じました。

サイバー空間に「ちゃぶていぶる」
サイバー空間に「ちゃぶていぶる」

そして来場者が折る折り紙が壁に飾られ、照内さんは、1つ1つ増えていく度に「和の空間が広がっていった気がした」と語っていました。個人が持っている空間に対する感覚はそれぞれの文化的背景に由来すると言われます。日常生活はドイツの住宅であっても、天井の低い、床座を基本とする空間に身を置くと体が自然と馴染んでいくことが、私にとっては面白い発見でした。

白と半透明のサイバーな非日常空間と、生活染みている家財の代表であるちゃぶ台のギャップに思わず笑ってしまったのですが、それらが不思議と融合しているのは携わった建築家たちの手腕によるものでしょう。「ちゃぶていぶる」に興味のある方や、購入をご希望の方は下記サイトをご覧ください。

http://chabudaidresden.web.fc2.com/

お茶をすすり、折り紙を折る。みんな幸せそう
お茶をすすり、折り紙を折る。みんな幸せそう

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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