ジャパンダイジェスト

恒例のエルベ川増水

「エルベ川の増水で、橋の上も両岸も人だかりがしている」という情報を友人から得て、早速行って来ました。この冬は各地で雪による交通網の混乱が相次ぎ、日本でもニュースになりましたが、1月に入って春の兆しかと錯覚するような気温となったため、雪が溶けてエルベ川が増水しました。雪解けによる春先の増水は例年のことですが、今回は見物人まで出るほど水位が上がりました。水位が6.27メートルに達した時点で環境局が警戒令を発しましたが、その時点ですでにニュースでは6.8メートルと言われていました。

いつもの散歩コースである日本宮殿の脇を通って川沿いの小道に近付くと、異様な光景が広がっていました。小道 と河川敷を隔てている石の手すりの向こう側には、普段なら緩やかな河川敷が広がり、ジョギングや散歩、サイク リングをする人々が行き交う遊歩道があるはず。しかし、これらすべてが冠水して川の水が手すりにまで迫り、それを隔てた川の水面と私の立っている地面が同じ高さというのは、恐ろしいものです。

日本宮殿前の小道
日本宮殿前の小道。手すりを越えて水が浸入している

川に面したホテルの前庭には、すでに防護壁が設置されていました。遊歩道よりも高い位置にある小道には、ところどころ低い箇所があるのですが、そこには水が浸入しており、いつもは遠くの水際に拝んでいる白鳥がすぐ目の前で泳いでいるではないですか! そのため迂回しなければならず、花壇や植木の間をサバイバルのように掻き分けて進みました。

アウグスト橋を支えるアーチの両側の下には遊歩道や車道があるのですが、そのカケラも見当たりません。アーチの上部をよく見ると、ある一線より上部分の石の色が変わっているのですが、これはツヴィンガー宮殿など多くの文化財に被害をもたらした2002年の大洪水時のものです。その線をたどると、建物が建ちならぶ地面よりも上であることが分かります。例えば3:4:5の三角形で考えると、水位が30cm上がると斜面の長さは50cm。しかし、河川敷はもっと緩やかな斜面なので、水位の上昇は数字上では大したことがなくても、川幅はかなり大きくなります。

浸水
浸水で小道が寸断されて入り江のようになり、
白鳥や鴨を間近で撮影する人もいました

意地なのでしょうか。観光名物のエルベ川の蒸気船は営業を続けています。当然のことながら船着場は水の下。しかし、小型ボートで乗客を船まで運んで通常運航しています。1カ月程前の河川敷は真っ白な雪に覆われ、クロスカントリーをする人々がいて、私も子どものソリを引っ張って散歩していたのが嘘のようです。大きな破壊力を秘めた川、今回の増水は、どこか慢心している人々への警鐘のように思えてなりません。


福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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