2002年、ドレスデン初のショッピングモール「アルトマルクト・ギャラリー」がオープンしました。このモールはポストプラッツ(Postplatz)という大きな広場に隣接し、その目と鼻の先には09年2月にオープンした、120店舗を抱えるショッピングモール「ツェントルム・ギャラリー」があります。この周辺は近年、工事が目立つ場所で、広場の停留所はじめ、東独時代の典型的な大型プラッテンバウ(プレハブ集合住宅)が次々に建て替えられてきました。大通りに面していた長く巨大なプラッテンバウも取り壊されることになり、そこにアルトマルクト・ギャラリーが拡張されて、今年3月31日にリニューアル・オープンしました。新たに96店舗が加わり、約200店舗がひしめき合うことになったのです。
最初の2日間は大々的にオープンを祝って夜10時まで開店、3日目の土曜日はなんと深夜0時までショッピングができました。新旧が交差するような出店も話題となった今回のリニューアル。その一例が、アルトマルクトに面したアーケードの店舗から引っ越してきた、1825年創業のお菓子専門店クロイツカム(Kreutzkamm)です。老舗であっても、新店舗ではモダンなデザインに大変身してしまうケースが多々ありますが、ここは創業当初の写真を半ば再現したような、優雅でクラシカルな内装の店舗となりました。
拡張部分のファサード。手前はポストプラッツ駅の屋根
その対極がアップル・ストア(AppleStore)です。ガラス張りに白い床、均等に配置された白いテーブルに白い商品が並ぶ店には多くの人が訪れ、活気に溢れていました。今回のオープンは、ドイツ国内ではミュンヘン、ハンブルク、フランクフルト、オーバーハウゼンに次ぐ5店目、旧東独地域では初となります。ドレスデンは東西統一後、東地域ではベルリンに次ぐ成長株ですが、人口はいまだに戦前の5分の1程度で、個人消費はいまひとつ振るいません。チェーン展開をしているイタリアやフランスの有名ブランドが進出しては撤退し、米大手ファッション・ブランドが出店を検討したものの、断念したこともありました。
イースターの卵の装飾が華やかさをプラス
近年の米系コーヒー、ファーストフード・チェーン店の進出や相次ぐ大型ショッピングモールの建設は、画一的な都市の風景を作り出してしまう危険性がありますが、住民としてはドレスデンの景気上昇気流を肌で感じられる指針のようなものでもあります。一方で、アウグスト強王の時代や戦前の繁栄にも思いを馳せられるような都市の発展を願わずにはいられません。
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/