ヨーロッパの悲願だった陶磁器をマイセンで実現させたザクセン王に敬意を払ってかどうかは分かりませんが、9月3、4日の両日、第16回ドレスデン陶工市(Dresdner Töpfermarkt)が、前回ご紹介した腰の剣をもぎとられたアウグスト強王の騎馬像(すでに修復済)を囲む広場で開催されました。今年の出展者数は69組を数え、私が初めて訪れた4年前と比べても、規模が大きくなっているように感じられました。
所狭しと並べられた陶器
ライブステージや屋台も出て、一大イベント並みの賑わいを見せるこの陶工市。地元ドレスデンとその周辺からはもちろん、ドイツ各地、さらにオーストリアやベルギーなど近隣諸国からの参加もあり、年々国際的な様相を帯びてきています。日常生活が描かれた昔の絵画を彷彿とさせる茶色や青の伝統的な食器や鍋、水差しが勢揃いする屋台があるかと思えば、いわゆる「作家もの」に分類できるような斬新でモダンなデザインの作品もありました。
陶器は窯に入れるという工程を経るため、出来上がりは必ず焼くことによる偶然性を伴います。その偶然性の追求やコントロールこそが陶芸の醍醐味であり、質感・形・色・柄・模様など、無限の可能性を求めた陶器が一同に集まるこの市は、見本市のように陶器の潮流をざっと見回せる機会なのかもしれません。
和の食器が並ぶ福岡めぐみさんのブース
ブースを1つ1つ見ていると、何とも言えない優しさと繊細さを持つお皿に遭遇しました。出展者は名古屋出身の陶芸家、福岡めぐみさん。有田とハレ市にて陶芸を学び、現在はベルリンで作家活動に専念しています。コンセプトを尋ねてみると、「ナチュラルなものがいいな・・・・・・」とのこと。日本人には馴染み深いお茶碗にも、彼女ならではの独特な表情が加味されています。色の異なる粘土を組み合わせて模様を作る装飾技法「練り込み」を用いた四角いお皿は、彼女の作品の中でも特に個性が出ていて、ドイツ人には寄木細工のようなものを思い起こさせるかもしれません。
私はここで、キッチンに置く作り置きのお茶用ポットを手に入れました。実は、陶工市での買い物は決してお安くありません。毎年1つずつ、お気に入りを見付けて買い足していくのが、陶工市を楽しむ秘訣です。
www.toepfermarkt-dresden.de
福岡めぐみさんのHP : www.megumi-fukuoka.com
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/