前回はリニューアルオープンした軍事史博物館をご紹介しましたが、今回も先頃修復工事が完了したばかりの「交通博物館(Verkehrsmuseum Dresden)」を取り上げます。この博物館は聖母教会がそびえるノイマルクト広場に面し、ザクセン王の居城であったレジデンツ城の一角に位置しています。それもそのはず、ここはかつて、厩(うまや)および馬車置き場として1591年に建てられた「ヨハンノイム(Johanneum)」と呼ばれる建物で、ドレスデンで展示に利用されている建物の中では最も古いものです。
世界には変わったテーマの博物館がたくさんありますが、交通および移動に焦点を絞ったこの博物館の展示もユニークです。陸海空(宇宙航空以外)のすべての移動と交通の技術の発達を、市内交通・鉄道・道路・船舶・航空の5つの部門別に展示しており、特にザクセン州と旧東独に力を入れています。最古の展示物はドレスデンの評議員が使用していたという1705年製の担ぎ椅子で、なるほどこれも移動手段の1つなのだ、と改めてテーマの面白さに気付かされました。
ノイマルクト広場に面する堂々とした外観の交通博物館
最初の展示は所狭しと置かれた車。その上に吊り下げられた年代物の飛行機が、空間に躍動感を与えています。クラシックカー好きにはたまらない車がずらりと並び、アイゼナハのヴァルトブルク城の写真の前に置かれたヴァルトブルクやトラバントなど、旧東独製の車も見逃せません。また、鉄道部門では実物大の機関車が展示され、緑と赤が印象的な1838年製のサクソニア(レプリカ)は鉄の塊に愛嬌をもたらしています。
市内交通部門の展示は主に路面電車で、すべてが古い映画の中のようにレトロなのに、今でもお馴染みの地名や路線名が表示されていて、地元住民にはとても身近に感じられます。車両の上部にある「走行中の乗降は危険」という注意書きは、当時の人々が飛び乗っていた様子を想起させてくれます。
来場者に子どもが多いこともこの博物館の特徴で、鉄道模型の操縦など、子ども向けの体験型展示が充実しています。全ドイツ自動車クラブ(ADAC)がスポンサーとなっている子ども用の道路と鉄道のコースでは、子どもたちが車や電車を運転できます。一方通行も、踏み切りも、信号もあり、指示や注意を促す係員が側にいるので、遊びながら交通ルールを学ぶことができます。年齢を問わず、乗り物好きにはお勧めの博物館です。
入り口のすぐ前の展示室の躍動感に引き込まれます
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
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