毎年恒例のドレスデン市祭(Dresdner Stadtfest)が3日間、エルベ川を挟んだ新旧市街で開催されました。ビール会社など地元企業がスポンサーとなり、官民問わず市内の活動を一斉に公開するという、ドレスデン市民によるドレスデンのためのお祭りです。ソーセージをほお張る人、ビールジョッキ片手に幸せそうな人、仮設の遊園地で遊ぶ子どもたち、ステージのバンド演奏に聴き入る観客。エルベ川沿いの屋外映画館、美術大学の卒業制作展、市庁舎の一般公開まであり、盛りだくさんでした。
催し物をいくつかご紹介しましょう。屋台慣れしている市民が物珍しさに詰めかけていたのは、チーズ市(Käsemarkt)です。山小屋風の屋台の前にずらりと並べられたチーズは自慢の品ばかりで、店員としばし会話を楽しむ光景が見られました。特に、軽自動車のタイヤくらいありそうなチーズの山積みは圧巻で、これが食べ物なのかと思わせます。エルベ川河川敷には警察車両、装甲車、救急車、消防車が集結。身近なのに日ごろは近くで見ることのない車両が開放され、市民とコンタクトをとる機会となっていました。子どもはもちろん大人も興味深げ…、だってこれは本物!
店先にずらりと並んだチーズ
警察の水上ボート試乗は大人気
バロックの古都ドレスデンといえばザクセン選帝侯アウグスト強王(1670~1733)の登場はお約束。この人なしにドレスデンの栄華はありえません。宮廷教会前には時代劇風の屋台が並び、舞台では白塗りメークで豪華な衣装に身を包んだ強王と愛人コーゼル伯爵夫人の恋物語が繰り広げられました。歴代君主が描かれた壁画「君主の行列」の実写版は歴史絵巻のハイライト。バロック様式は建築を超えて都市にまで広がりをみせましたが、バロック都市の祝祭性は今日でも機能しており、街をお祭の一大舞台へと仕立ててしまいます。
バロック寸劇はこの街によく似合う
夜遅くエルベ川で打ち上げられたフィナーレの花火はバロック祝祭都市の締めくくり。熱気に満ちた3日間最後の夜、しばし酔いしれたのでした。
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
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