ジャパンダイジェスト

ザクセン州のじゃがいも祭り

秋は収穫の季節。農作業の苦労が、たわわな実や穂の付いた作物となれば、自然とその豊穣に感謝してお祭りをしたくなるものです。ドレスデンのアルトマルクト広場では、秋祭り(Herbstmarkt)が9月11日から10月4日まで開催され、その一角の大きなテントでは、ザクセンのじゃがいも祭り(Sächsisches Kartoffelfest)が9月17~20日まで行われました。

「ドイツの食べ物」と聞いて思い浮かぶのは、ビールやソーセージ、じゃがいもが代表的だと思いますが、これが単なるイメージにとどまらないことは、住んでみるとよく分かります。寒冷地でも育つじゃがいもを、南米から欧州大陸に持ち帰ったコロンブスは偉大ですが、そこから品種を増やして、今やドイツ料理の顔にまで育て上げたドイツ人もすごいですね。

ライプツィヒに本部があるザクセン州じゃがいも連盟(Sächsischer Qualitätskartoffelverband e.V.)は、ドレスデンにも支部があり、今回はスーパーマーケットでもお馴染みの生産業者が出揃って、ザクセン州のじゃがいもや料理を、お祭りの中で紹介していました。「きちんと管理された農場で生産される良質なじゃがいもは、収穫されるとすぐに梱包されて各店舗に配送され、あなたの食卓へ……」、これが売り文句です。さらに、「ザクセン育ち」や「ザクセンを楽しもう」という文字が、会場全体に溢れていました。これには、「はるか遠い生産地から飛行機や長距離貨物列車で運ばれてくる食べ物は、ビオの食材とはいっても、不必要な負荷を地球にかけているのです」、という消費者へのメッセージが込められています。

さて、大テントにはいくつかのブースがありました。目を引いたのは、ずらりと並べられたザクセン州産の本物のじゃがいも。5種類の硬いじゃがいも(fest)に、9種類のおおむね硬いもの(vorweigend fest)、4種類の軟らかいもの(mehlig)など、合計24種類。日常の食卓ではお馴染みの食材ですが、形や色、食感の違いを意識している人は少ないのではないでしょうか。すべてのじゃがいもには、バレリーナやミランダ、プリンセスといった名前が付けられており、生産者たちのじゃがいもに対する愛情が伝わってくるようでした。

ずらりと並んだ24種類のじゃがいも
ずらりと並んだ24種類のじゃがいも

じゃがいも料理や加工品の販売のほか、じゃがいもケーキやじゃがいものお酒など、一風変わったブースもありました。お酒を飲んでみましたが、特に表示がなければ「じゃがいも」とは気づかない、透明でアルコール度の強い蒸留酒でした。一番人気は、厚さ5ミリで螺旋状にスライスし、油で揚げてスパイスをまぶした串刺しじゃがいも。ポテトチップスほどカリカリではなく、フライドポテトほど中身が詰まっているわけではないので、満腹にならないおつまみとして最適です。じゃがいもとの付き合いに、今後変化をもたらしそうなイベントでした。

イ個性豊かなじゃがいもたち
個性豊かなじゃがいもたち

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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