ジャパンダイジェスト

外観も内装も一味違う、ロシア正教会

ヨーロッパを旅行すると、教会を見学することも多いと思います。1907年にハンブルク見本市会場の近くに建てられた、北ドイツでは珍しい新ロマネスク様式の美しい教会があります。教会が裁判所と刑務所の間に位置しているので、神の恩寵(おんちょう)を求めて、恩寵教会(Gnadenkirche)という名がつけられたとのこと。教会建築は十字架の形を基礎にしていることが多く、一般的には縦長です。しかし、この教会は縦と横が同じ長さのギリシャ十字架を基礎にしているので、その点でもほかの教会と違う外観を持っています。

恩寵教会の外観恩寵教会の外観

もともとはプロテスタントの教会でしたが、見本市会場の拡大に伴い、地域住民も信者の数も減少して、教会を維持することが難しくなってきました。そこで、2004年にロシア正教会にこの教会を譲ることになり、現在に至っています。モスクワに基礎を置くロシア正教会は2001年にハンブルクで活動を始め、急成長していきました。

鮮やかなフレスコ画のイコノスタス鮮やかなフレスコ画のイコノスタス

プロテスタントもロシア正教もキリスト教ですが、ロシア正教会になるにあたって、教会内部を大幅に改装。まずベンチが取り去られ、祭壇の代わりにイコノスタスが作成されました。イコノスタスとは、ロシア正教会において祭司だけが入ることを許される、神聖な場所を隔てる一面の壁のこと。聖画が描かれ、金がふんだんに用いられて、大変豪華なものです。同教会では、入口の上にある大きな窓から光がたくさん入るので、金の装飾は適さないとの理由から、フレスコ画のイコノスタスとなっています。フレスコ画というと、とても古いものというイメージがありますが、鮮やかな色が褪せずに長続きする技法だそうで、現代でも用いられていることに驚きました。ほかの壁にもイコンと呼ばれる聖画が多数かけられていて、カトリックやプロテスタントの教会とは、やはり違った印象です。教会の後ろのほうに「聖なる水」というタンクがあり、冷水器のように蛇口から水が汲めるようになっていました。信者はきよめられることを願って聖水にあずかるのでしょう。

礼拝は、毎週土曜日と日曜日は朝10時から、また週の半ばの夕方にも行われています。パンフレットを見ると、会堂には椅子がないため、立って礼拝しているようです。コンサート会場としても使われているようですが、そのときには椅子を出すのかもしれません。毎日10~15時まで教会の扉は開いていて、自由に見学できるようになっています。ぜひ一度訪れてみてください。

井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
www.nd-jcf.de
www.facebook.com/ndjcf

 
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