ジャパンダイジェスト

温かな手を差し伸べるハンブルクの更生施設

「悪いと分かっているのにやめられない」……これが依存症の特徴です。程度の差こそあれ、全ての人はこの弱さを持っていることでしょう。多くの人の場合、何かに依存していたとしても、社会生活に支障を来すほどではありませんが、薬物やアルコールに依存するようになると、生活が破綻するだけでなく、生命の危険があります。誰しも依存症になりたくてお酒や薬物に手を出すことはないですが、気が付いた時には抜け出せなくなっているのが依存症の怖いところ。以前、街中でお金の無心をしてきた薬物依存の人が「施設に行っても無駄。どうせ変われるはずがない」と言っていました。確かに簡単ではないでしょう。でも、ハンブルクには、本気で依存症から抜け出したいと思う人を応援する施設があります。今回は、その紹介をしたいと思います。

居心地良く整えられた居間居心地良く整えられた居間

閑静な住宅街にあるハウス・デュナミスは、1984年から活動を続けているキリスト教系の依存症更生施設です。薬物やアルコールだけでなく、ギャンブル依存症の方も入所できます。この施設は、医師やカウンセラー、社会福祉事務所、さらに労働局や弁護士などの協力を得て、教会の献金によって運営されています。依存症を一人だけで克服するのは、なかなか難しいこと。そのため福祉士の方と共同生活をすることで、生活のリズムや人との接し方を学んでいきます。

共同生活ゆえの問題が起こることもありますが、そういう状況のなかでも依存対象に逃げず、自分たちで問題解決していこうというのが、同施設のコンセプト。セラピー・プログラムでは、依存症の起こるメカニズムや、基本的な社会生活、聖書を基盤とする倫理観について学びます。それに加えて、スポーツや遠足、グループ・カウンセリング、個人カウンセリングのほか、手に職をつけるための学びの場も提供されます。さらに労働局と連携し、退所した方が就職し、社会生活を営んでいけるように支援するプログラムも。

料理は当番制で、食事を共にします料理は当番制で、食事を共にします

同施設では、入所者はゲストと呼ばれています。「更生させるべき人」ではなく、「神に愛されている大切なゲスト」として迎え入れられるのです。彼らは尊厳をもって接してもらうことで、自分や周りに対する価値観を変えることができるそう。ある入所者の方は「以前はただ盗み、消費するだけだった私の手が、今や善いことを成すためにある。ハウス・デュナミスがハンブルクにあって良かった!」と語っていました。この施設の責任者のドロテーさんは、ゲストたちにとってお母さん的な存在ですが、ご高齢のため後継者を求めています。ふさわしい後継者が見つかり、善い働きが今後も続いていきますように。

井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
www.nd-jcf.de
www.facebook.com/ndjcf

 
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