近年ハンブルクには、若者や子どもたちのために、オペラを短縮してコミカルな演出で提供する、小規模のオペラ劇場が出てきています。オペラ初心者にとってこのような劇場はありがたく、オペラ普及のための素晴らしい試みだと思いますが、フルオーケストラ、フルコーラスの本格的なオペラを楽しみたいなら、やはりハンブルク州立オペラ座に出掛けることをお薦めします。
ハンブルク州立オペラ座は、私たち日本人が想像する「いかにもオペラ座!」というような外観ではなく、一面ガラス張りの近代的な建築物なので、「なんだかオペラの華やかな雰囲気が出ないわ」とおっしゃる方もいますが、1955年完成の近代建築だからこそ音響が良く、客席も見やすいように工夫して造られています。実は昔ながらの馬蹄型の劇場では、2列目以降は舞台が見難いのです。また、音は上に登って行くので、屋根がある状態の2列目以降の座席は音響の点でも劣ってしまいます。馬蹄形の劇場には素晴らしく華やかな装飾が施されていて、社交場としては申し分ないのですが、純粋に芸術としてオペラを鑑賞するには物足りなさを覚える席が結構あるのです。ハンブルクのオペラ座が現在の形になったのは1955年ですが、オペラ座自体の誕生は1678年にさかのぼります。現在のオペラ座は3代目、それ以前の建物は第2次世界大戦の爆撃で破壊されてしまいましたが、ギリシア様式の外観をした馬蹄型の劇場で、とても美しかったそうです。
オペラ座内の客席の様子
オペラと聞くと、とても高尚な芸術というイメージがあるかもしれませんが、実は内容のほとんどは恋愛もの。家を取るか、恋を取るかの板挟みや三角関係など、現代のテレビドラマとあまり変わらない内容です。17~19世紀、オペラはまだ映画やテレビがなかった時代の娯楽だったのです。そう思うと一気に親しみがわきませんか? とは言っても、言葉は外国語ですし、内容がわからないとやはり楽しみは半減してしまいます。予習してから観賞したいという方は、日本人会に歌劇の解説書がありますので、利用してみてはいかがでしょうか。
オペラのチケットは席によってずいぶん値段の差がありますが、安くても十分楽しめる席があります。私のお薦めは、1番もしくは2番のボックス席(Loge1)の1列目、舞台寄りの席です。舞台の横が切れる部分がありますが、舞台に近いというのがこの席の長所です。舞台の全体像を見たいなら、3階か4階の桟敷席(Balkon)が良いでしょう。
またいつか、お薦めの作品など紹介したいと思います。では、皆さんもちょっとおしゃれをして、楽しい夜を!
ハンブルク州立オペラ座の外観
©Kurt-Michael Westermann
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?