Sバーンと地下鉄が通るユングフェアンシュティーク(Jungfernstieg)駅は地下にあるため、地上とをつなぐたくさんの出入り口があります。その中の一つ、市庁舎広場、あるいは日本領事館の前の出入り口から地下へ降りて行くと、ホームに到着する前に、「ラートハウスパサージェ(Rathauspassage)」という、店舗が並ぶ一区画があります。
駅前にさまざまなショップが出店するのはよくあることですが、ここは一味違っています。1998年、ハンブルク社会福祉事業機構と近隣の3つのキリスト教会が協力して新たな団体を立ち上げ、当時大きな社会問題であった失業者の再就職支援に乗り出し、質の良い仕事場を提供するために、町の中心で事業を展開することになったのです。ラートハウスパサージェの掲げるモットーは4つ。「フェア」「社会性」「持続性」「地域性」。このモットーは、扱っている製品にも、勤務体制やサービスにも生かされているとのことです。
フェアトレードショップ
まず、「フェアトレードショップ」では、コーヒーやワイン、香辛料など、生産者から搾取せず、適正な価格で取り引きされた食料品が販売されているほか、地域の人々の手作り工芸品や、セカンドハンドの衣料も取り扱っています。「よく手入れされた衣服やアクセサリーの寄付を歓迎する」、とのことなので、ご自宅の洋服ダンスを整理する際に、利用してみてはいかがでしょうか? また、短くなった使用済みキャンドルも引き取ってくださるとのこと。集めたろうを溶かして、新たなキャンドル製品に仕上げるそうです。
アンティークの本屋に併設されたカフェ・レストラン
もう一つのお店は、アンティークの本屋さん。特に、装丁の美しい全集物などが並んでいます。福祉とキリスト教会が母体となっていますから、その分野の本も多いようです。そして、その本屋のスペースの中に、カフェレストランが併設されているのです。お昼のメニューは、地域で生産された野菜を用いた日替わりのキッシュとスープ、午後は手作りのケーキが提供されます。宣伝文句に「Klein und fein(小さくて繊細)」とあるので、量は少なめですが、その分お値段もお昼のメニューが2.20~3.95ユーロと、とってもリーズナブル。軽く食事をしたい方にはお勧めです。
本屋の隣りには、50名収容のスペースがあり、毎週金曜の13時~は短い礼拝が行われています。このスペースは、1時間35ユーロ(半日、1日で割引有り)で借りることもできるそうです。
すべてのお店の営業時間は、月曜~土曜の10:00~19:00。町の中心地にある、駅中のお店としては、オープン時間が短く感じられますが、これも「フェアに取り引きして、搾取しない」というモットーの一環であり、それは結局、人を大事にすることにつながっているのだと思いました。
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?