ブラウンシュバイクの美術協会で、「StrangeItineraries.」(奇妙な旅程)という展示が10月14日(金)~11月13日(日)まで開催されていました。僕も出品者の一人として参加していたので、その様子についてレポートしたいと思います。
この展示は、ブラウンシュバイク芸術大学のマスター生16名によるグループ展です。マスター生とは、芸術大学でディプロマを取得した後、1年間の大学院課程を修了した学生を指します。僕はドイツに来てから、まずは移民向けドイツ語コースを終えた後、しばらくフリーランスの映像作家として活動していました。
そんななか、ドイツ語を磨きながら専門分野の知識を深める必要性を感じ、大学で自由芸術を専攻することに。初めはほかの学生の作品への理解が及ばず戸惑う日々でした。その後、学生が制作するものを継続的に観察していくと、その実験的な試みに面白さを見出すようになり、さらに尊敬できる教授と出会い、自分なりの芸術の楽しみ方が見つけられました。
僕が通ったコースでは、「制作」と「討議」が重要視されていました。学生は師事する教授のもとで、Plenum(プレーヌム)に参加します。Plenumでは、自らの制作物について発表したり、クラスメイトの作品を見たりして、討議を重ねます。複数の学生の発表がある場合、討議に半日を費やすこともありました。
クラスメイトには議論が得意な人も多く、単なる感想にとどまらないコメント、他者の意見への補足、辛しんらつ辣な批判の加え方など、勉強になりました。それに対して、僕は自分自身の意見がうまく表現できず、議論を追いかけるだけで精いっぱい。しかしながら、自分の作った作品に対するクラスメイトや教授からのフィードバックには、気づかされることも多くあります。作品を構想する自分の頭の中に、他者の視点を取り入れる練習となる、非常に有意義な時間でした。
さて、この「奇妙な旅程」展で、僕は路上で生きる人間を描く映像作品を発表しました。7年前に出会ったロベルトと僕の家族の交流が主題になっています。季節を重ねるごとに追加撮影・編集を加え、現時点で50分となったこの映像には、大学での議論を通じて得た気づきが反映され、まさに僕の「奇妙な旅程」を示すものとなりました。
展示作品の中で僕が感銘を受けたのは、Jette Heldさんの「Wenn Das Wasser Schreiben Könnte」(もし水が描くことができるなら)という写真です。これは月明かりのもとで、水に映る光の波紋を露光紙に写し取ったもの。Jetteさんよりも大きな写真が、ハルツの山の上で静かに水面を照らす月の光が柔らかく捉えられていました。Lydia Hoskeさんのビデオについても触れたいのですが、それはまたの機会に。これからアーティストとして活動していく可能性を秘めた、仲間たちの今後の歩みが楽しみです。
Jette Heldさん 「Wenn Das Wasser Schreiben Könnte」
Lydia Hoskeさん 「What it meant to be」
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
takashikunimoto.net