グラッシィ工芸美術館で、2018年の11月末から4カ月かけて展覧会「TOGETHER!」が行われています。日本各地でも増えてきた「シェアハウス」のように、複数の人たちが集まって住むスタイルが世界中のあちこちで見受けられるようになりました。背景には、主に大都市圏で不動産価値の高騰が起き、これまでの住宅建築ではさまざまな層の人たちの暮らし方に対応できなくなっているという現実があります。今回の展示はスイスの家具会社ヴィトラのデザインミュージアムが主催し、ライプツィヒは巡回展となります。欧州、日本、アメリカの例がいくつも紹介され、加えてライプツィヒの事例も10組紹介されています。展示場面も四つの構成に分けられ、説明も独英の2カ国語で表記されていて、とても充実しています。
ハウスプロジェクトの歴史を綴ったパネル展示
最初の導入では、1980年代と90年代の空き家の不法占拠(スクウォティング)の歴史をパネルとビデオで紹介しています。集まって暮らす形というよりは、ヒッピーたちの政治的なステートメントが大きな動機となった時代でした。当時の様子について、関わった人たちのコメントもビデオで見ることができます。次の部屋には、巨大な模型で21の例が展示されています。ベルリン、チューリヒ、ロサンゼルス、ウィーンに加えて東京からも3組ありました。同じ寸法で細部までつくり込まれた建築模型は圧巻で、国の違いを超えた一つの都市のように見えます。三つ目の部屋は、集まって暮らすという架空の住宅建築を、来場者が実際に体験できるように原寸で表現。年代も家族構成も異なる人たちが一緒に住むことが想定され、各個室と共同のキッチンやリビングが家具や小物で具体的に展示されているのです。
そこにはウィーン、バルセロナ、チューリヒ、ベルリンのハウスプロジェクトのビデオも設置されています。それぞれ規模も人数も工期も異なり、予算をどうやりくりしたか、年代も家族構成も異なる住人同士で案をまとめる話し合いにどう折り合いをつけたかなど、非常に具体的に生々しくドキュメンテーションしていました。印象に残ったのは、ウィーンで29組の家族が集まって旧工場を建て直した例。彼らは共同の屋内プールを経済的にやりくりしながら実現させ、夏の暑い日は住民たちが集まる場になっています。1人の女の子は、集まって暮らす小さい頃の思い出がこのプールにあるとインタビューに答えていました。また、住人の子どもたちが週に一度集まってオーケストラの練習をしている(そういう場所がある)のも良いなと思いました。何人もの人が「孤独がない」「いつも誰かがいる」とコメントしていました。
巨大な模型展示
架空の住宅建築を原寸で表現した展示
「TOGETHER!」展は3月17日まで。展示のツアーやディスカッションイベントなども充実しています。私も2月28日に「日本のシェアハウス」に関するプログラムのモデレーションとして参加します。
グラッシィ工芸美術館: www.grassimuseum.de
福岡県出身。日独家族2児の母。「働く環境」を良くする設計を専門とする建築家。2011年より空き家再生社会文化拠点ライプツィヒ「日本の家」共同代表。15年より元消防署を活用した複合施設Ostwache共同代表。
www.djh-leipzig.de