ジャパンダイジェスト

小学校入学式と「甘い」お祝い

ドイツの小学校の6週間の夏休みが終わり、わが家にも学校生活という日常が戻ってきました。夏休み明けから新学期が始まるということで、幼稚園から小学校に上がる子どもたちにとってはまさに新生活の幕開け。8月半ばの金曜には幼稚園でお別れ会が開かれ、翌日の土曜には小学校で入学式がありました。そのときに子どもたちがうれしそうに抱えているのが、「Zuckertüte(直訳すると砂糖の袋)」と呼ばれる円錐形の包み。大きなものから小ぶりのものまで、サイズも模様もさまざまです。中身はお菓子だけでなく、学校生活に必要なノートや鉛筆、体操着や靴下など、入れるものもバラエティに富んでいます。むしろお菓子だけを入れていくと重くなりすぎて子どもが持てなくなるので、服や帽子などボリュームがあるものも上手に入れている人が多いです。この時期になると、文房具店やデパートで入学用品とともに売り出されているので、目にされた方も多いはず。今回はその歴史について調べてみました。

1930年代のZuckertüteを抱える子ども1930年代のZuckertüteを抱える子ども

ドイツでZuckertüteが始まったのは、200年以上も昔、1810年にさかのぼります。ザクセン州とテューリンゲン州で、小学校の入学式でお祝いに甘いものをあげたことが始まりだそうです。この慣習に関する記録が最初に残っているのは、イェーナ(1817年)、ドレスデン(1820年)、ライプツィヒ(1836年)。1853年には絵本にも取り上げられるようになりました。このころはZuckertüteのなる木が教師の家にあって、「この実が十分な大きさに育ったら小学校に行くんだよ」と子どもたちに伝えていたそうです。微笑ましいですね。娘の通っていた幼稚園では、庭の木に最初は本当に小さな包みをぶら下げてしばらく置いておき、お別れの日には大きな包みと取り替えて、いよいよ時が来たことを子どもたちに知らせていました。

わが家の娘の入学式 (2017)わが家の娘の入学式 (2017)

その後1950年頃には、Zuckertüteがドイツ全国に広まったよう。入学式の前日に親が学校に届け、当日に担任の先生から1人ずつ名前を呼ばれて渡されます。各クラスの集合写真には、誇らしげにZuckertüteを抱えた子どもたちが並び、思い出とともに記念に残るのです。入学式が終わった後には、ほとんどの家族が祖父母や親戚、友人たちを招いてお祝いを続けます。

余談ですが、きょうだいのいる家庭では、入学式を迎えた子だけがお祝いをもらうと下の子が悲しい思いをしてしまうからと、彼らにも小ぶりなZuckertüteを用意することが多いです。そういうドイツ人のさりげない気配りはいいなと感じます。

ミンクス 典子
福岡県出身。日独家族2児の母。「働く環境」を良くする設計を専門とする建築家。2011年に空き家再生社会文化拠点ライプツィヒ「日本の家」立ち上げ、18年まで共同代表。15年より元消防署を活用した複合施設 Ostwache共同代表。
www.djh-leipzig.de
 
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