PILOTENKUECHEは、もともと有刺鉄線工場だった空き家を利用して造られた、アーティスト・イン・レジデンス。アトリエ兼展示会場として、世界中からアーティストやキュレーターを募集し、ライプツィヒでの滞在制作や作品発表を支援しています。
煉瓦むき出しの建物が、空間をより面白くしていると感じました
このプログラムが開始されたのは2007年。コロナ禍の現在でも3カ月ごとに年4回、世界中からアーティストが制作活動のためにやって来ます。過去には日本人の参加者もいました。また地元からの参加枠もあり、ライプツィヒ居住者もここで作品を制作したり発表したりすることができるのです。これまでの参加者は、アクティビズムから建築までと幅広く、デザイン、メディアアート、ドローイング、映画、インスタレーション、文学、絵画、パフォーマンス、写真、版画、彫刻など、さまざまな分野のアート作品を発表しています。
ライプツィヒは、ライプツィヒ視覚芸術大学(HGB)をはじめ、ギャラリーやコレクター、スタジオなどが集まる複合施設「シュピネライ」を擁していることでも知られています。またライプツィヒの東側には、新進アーティストたちが数多く移り住み、アンダーグラウンド・アートシーンを形成していきました。そのような背景のあるこの街で、PILOTENKUECHEは、ライプツィヒのアートシーンを成長させ、世界的に認知させることを目指して活動しています。
オープニングには、たくさんのゲストが訪れます
ライプツィヒへ来たばかりのレジデンス参加アーティストたちをこの街に巻き込んでいくために、PILOTENKUECHEでは、彼らに地元のアートシーンやライプツィヒのコミュニティーを積極的に紹介しています。アーティストたちが地元の人々と関わるための方法として、コンサートやフリーマーケット、展示のオープニングパーティー、食事会などを一緒に訪れることも。PILOTENKUECHEのスタッフであるメシェレさんは、私が活動している「日本の家」にもアーティストたちを連れてきて、一緒に料理をしたりイベントを行ったりしました。地元のコミュニティーと関わる機会が多く、街へと溶け込みやすいのはライプツィヒならではだと思います。
広い会場では空間が区切られており、暗闇の作品も楽しめます
また、3カ月間の滞在後にライプツィヒに留まることを決意した参加者も多いそう。プログラムに新しく参加したアーティストが、以前参加していた人たちとライプツィヒで出会い、そこでも新たなつながりやプロジェクトが生まれています。
作品の展示は元小学校や工場などの空き家を利用して行われており、改修されていない会場自体にも面白さがあります。今後もレジデンスプログラムや展示が予定されているそうなので、街を散策しがてらアートに触れてみてはいかがでしょうか。
PILOTENKUECHE: www.pilotenkueche.net
岡山県出身。コミュニティースペースやまちづくりに興味を持ち、NPOで活動しながら診療放射線技師として8年間病院勤務。ひょんなご縁で2018年に渡独し、ライプツィヒにある「日本の家」で活動を開始。2020年から日本食を中心としたコレクティブとして活動中。