今回は、ドイツのフードバンク「Tafel」 についてご紹介します。フードバンクとは、包装の破損や在庫が多すぎるなどの理由で流通できなくなった食品を企業から寄附を受けて、生活困窮者などに配給する活動および団体のこと。ドイツ全土には950以上のフードバンクがあり、160万人以上に食料を届けています。それによって毎年約26万5000トンの食料が廃棄を免れているそう。
コロナのため、室内ではなくカウンター越しの受け渡し
対象となるのは生活保護受給者、年金受給者などの低所得者です。Tafelを利用するためには、さまざまな割引が受けられるライプツィヒパス(低所得者が申請可)と住民登録証明書を持参して事務所で登録し、Tafel Passを受け取ります。Tafel Passには名前、住所のほか、単身か家族連れか、受取り曜日などの情報が記入されています。週に1回指定された曜日にこのTafel Passを持参し、3ユーロ支払うと1週間分の食材がもらえるという仕組みです。
袋いっぱいに詰められたフルーツ、野菜、パンなど
今回友人に付き添ってTafel Leipzig e.V.に行ってきました。事務所の前には移民の若者や子ども連れ、おじいさんなどが10人ほど並んでいました。3ユーロを支払いTafel Passを渡すと、受け取り日のスタンプが押されます。受け取る食品はヴィーガン、ベジタリアン、その他から選べます。「ベジタリアン」と伝えて持ってきた大きなバックを四つ渡すと、野菜、果物、パン、乳製品などが入れられて返却されました。1人では持ち運べないほどの大量の食材です。また、事務所前には持ち帰り自由なチューリップやバラなどの切り花や鉢植えも置いてありました。スタッフは相手に合わせてスペイン語、アラビア語、中国語、少しの日本語など、多言語で明るくコミュニケーションを図っていたのが印象的でした。
Tafelに連れて行ってくれた友人のバレンティーナはチリ出身の移民で、Tafel歴は1年ほど。Tafelでは何がもらえるか分からないので、家に帰って袋を開けて中身を確認するのがとても面白く、スーパーではパスタや米を買うだけで生活できるため、節約できて良いといいます。Tafelでもらった完熟フルーツでフルーツジュースを作ったり、普段スーパーでは目に留まらない自分の知らない野菜や食品を知ったりすることを楽しんでいるそうです。また、クリスマス後には売れ残った大量のクリスマス仕様のお菓子が配られ、少し遅れたシーズンを楽しむことができるとか。「捨てられるはずだった食品が捨てられずに、第二の可能性を与えられるのは良いことだと思うし、自分がそのサイクルに関わることは喜ばしい」と彼女は話してくれました。
チョコレートをたくさんもらって喜ぶバレンティーナ
コロナ禍での生活に不安を抱えている人が増えたというニュースもありますが、このTafelで多くの人の生活が助けられ、食品ロスが減るといいなと思います。
Tafel Leipzig e.V.: https://tafel-leipzig.de
岡山県出身。コミュニティースペースやまちづくりに興味を持ち、NPOで活動しながら診療放射線技師として8年間病院勤務。ひょんなご縁で2018年に渡独し、ライプツィヒにある「日本の家」で活動を開始。2020年から日本食を中心としたコレクティブとして活動中。