ドイツ全国で高齢化が進む中、ライプツィヒ市も例外ではありません。人口約50万人における市の65歳以上の高齢者の割合は、2000年の25.7%から2013年は32.3%まで増加しています(市の統計資料より)。ドイツ人の平均寿命は男性77歳、女性82歳と言われていますが(2010年統計資料より)、それでは、退職後の高齢者はどのように日々を過ごしているのでしょうか?
シルバー・サロン「インゲとワルター」
市内には、社会福祉局が運営するシルバー・サロンが全部で10カ所あります。東地区の「インゲとワルター (Inge & Walter)」は2013年に設立され、2017年まで運営が予定されています。それ以後は、5年間のモニター結果により継続されるかどうかが決まります。ここでは高齢者(55歳以上)を対象に、縫製や絵画、料理、音楽など、様々なプログラムを日々行っています。スタッフは社会福祉士のズザンナとアニャの2人。朗らかで親切な彼女たちとおしゃべりをするためにやって来る高齢者も少なくありません。配偶者に先立たれたり、独立した子どもたちが遠方にいるために、1人で暮らすお年寄りも多くいます。ここでは、文化的なプログラムを提供しているだけでなく、年金などの経済的な問題に対するアドバイスや、バリアフリー住宅を探す手伝いもしています。料金は、基本的にすべて無料です。
インターネットや市の季刊誌、新聞などでイベント情報を常に配信していますが、自宅にこもりがちな高齢者に、このような場があることを知ってもらうことが重要だと、アニャは言います。さらに、身動きができ、自分の足でシルバー・サロンまで出向くことが可能な高齢者は良いのですが、歩くことが不自由で、ほとんど寝たきり状態になっている高齢者をどのようにケアしていくかが目下の課題だそうです。市内のいくつかのシルバー・サロンでは、ほかの団体と協力することでボランティアによる訪問ケアを可能にしているところもあるそうですが、東地区は立ち上げからまだ時間がそれほど経っていないため、次のステップとして取り組んでいくことになるそうです。さらに、東地区は市内で最も移民が多く住む地域で、最近はロシアからの移民のために、ボランティアによるドイツ語教室が行われています。日曜の午後には、カフェとケーキが楽しめる喫茶室も始めました。
社会福祉士のアニャ
すべての高齢者に経済的な余裕があるわけではありません。お金を必要とせずとも日常的に集うことができるシルバー・サロンのような場所は、孤立しがちな高齢者にとって、大切な社会との繋がりになっています。
Inge & Walter
www.muehlstrasse.de/seniorenbuero_ost.html
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de