ドイツ国内で20店舗目となるアイルランドのファストファッション・ブランド 「PRIMARK( プライマーク)」 が、ライプ ツィヒにもオープンしました。4月8日のオープン当日には、午前11時の開店前から150mの列ができ、開店と同時に約300名の来場者がなだれ込みました。さて、T シャツ1枚2.50ユーロやジーンズ1本7ユーロなど、激安の衣類を販売するプライマークですが、彼らの安価への姿勢は経営面でも徹底しています。オープニング以外には広報を一切せず、店内にはスタッフ要員を最低限しか配置しないことでコストを極限まで切り詰めています。
そのオープンに抗議するように、新築ビルで新しくオープンしたプライマークの目の前の広場では、環境保護団体グリーンピースがライプツィヒ大学の学生たちと協同して「古着の交換マーケット」を行いました。プライマークのオープニングのポスターに手書きした情報をフェイスブックで広報したところ、瞬く間に広がって、当日は100人を超える人たちが集まりました。それぞれが古着を持ち寄っては、ほかの人が持ってきた服と交換していきました。古着をアップサイクル(リサイクル「再利用」ではなく価値をアップさせる)するワークショップも開かれるなど、ファッション業界の使い捨て消費サイクルに抗議するアクションとなりました。
フェイスブックで瞬く間に広がったプロテスト運動の告知
さらに当日は、アクティビスト2人がプライマークの火災報知器を稼動させて、一時は来場者とスタッフ合わせて約100名全員が建物から避難する騒ぎも起きましたが、多くのメディアがプライマークのオープニングよりもプロテスト運動を大きく報道しました。ここにも市民の関心がどちらに向いているかがよく表れています。
持ち寄った古着をお互いに交換している参加者たち
プライマークをはじめとするZaraやH&Mなど、安い価格で頻繁に消費させる「ファストファッション」は、インドやパキスタンなどの生産国において低賃金で過酷な労働を強要し、環境破壊をも進めているといわれています。今回のプロテスト運動に参加したのはほとんどが若い女子学生です。むしろプライマークでショッピングしそうな彼女たちが、広場でお互いの古着を交換して着回している風景にはすがすがしい思いがしました。単にモードに流されて消費するのではなく、それぞれが主張を持ちアクションを起こすところにドイツ人の強さと明るい未来があるような気がしました。
www.leipzig.greenpeace.de/event/ kleidertausch-statt-fast-fashion-kauf
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de