社会的文化活動を行う「登記社団ヘルデン・ヴィダー・ヴィレン( Helden wider Willen e.V.)」が運営 しているのがハイブリット・アート・ラボ、通称HAL。HALは、ライプツィヒ市内で最も移民や失業者が多く治安が悪いとされている東部アイゼンバーン通りの脇にあり、ドイツ連邦共和国都市発展政策のパイロット・プロジェクトとして、シェアハウスやシェアオフィス、芸術家のアトリエとしてはもちろん、地域に開いた社会文化活動の新しい拠点になっています。代表者のアリアーネ・ジェドリチュカさんは、HALを以下のように表現します。「HALをどのように使うかを考えることは、社会や地域が抱える問題の解決策を共に考えることになります」。
HALで使用している2棟の建物は、長期間空き家だったものをリノベーションし、2014年から文化コミュニティーの活動拠点として再生したもの。現在では約30人が入居しています。2015年4月からは「Honorary Kitchen」と呼ばれる参加型食イベントが毎週行われ、参加者が食べ物や飲み物を持ち寄り、共に食事をしながら地域のためのアイデアを話し合ったり情報交換をする機会となっています。さらに今年から「Honorary Hotel」という、職と住そして学びを結び付けたゲストハウスもスタートしています。
手作りの中庭にはいつも人が集まる
2棟のうちの1棟は運営団体が所有し、隣の1棟は集合住宅会社LWB(Leipziger Wohnungs- und Baugesellschaft mbH)から借りていますが、ここも数年以内に買い取る計画です。建物の上階を貸し出し、その家賃収入を運営資金にしながら、地上階を使って近隣住民と一緒に活動に取り組んでいます。
HALのメンバーは以前、ライプツィヒ西部で活動していましたが、都市開発を理由に不動産会社から住んでいた場所を追い出されました。さらに、活動拠点にしていた建物の賃貸契約も延長を断わられてしまいました。そこで新たな場所を探していたところ、縁があって東部にこの2棟の空き家を見つけたのです。これらの経験から、リスクを負ってでも自らの場所を所有することがどれだけ重要かを痛感したといいます。せっかく活動を軌道に乗せても、不動産会社など建物所有者の都合で追い出されてしまってはモチベーションを維持することはできません。
これまで放置されて荒れていた歩道に植樹し、地域に開いたイベントを定期的に開催している
同じ市内とはいえ、これまで慣れ親しんできた地域とは異なる場所での再出発を余儀なくされ、銀行から借金をして改修工事もほとんど自分たちの手で行いながら、少しずつ場所を作り上げてきました。そんな苦労をものともせず、3人の子供を育てながらいつも明るい笑顔で次の活動のアイデアをうれしそうに話すアリアーネの存在は、すでに地域になくてはならないものになっています。
www.facebook.com/HALeipzigドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de