ドイツのハチミツ消費量は、日本を大きく上回っています。日本では主にお菓子などの原材料として使われることが多いですが、ドイツではハチミツそのものを食べることが好まれるからのようです。ある統計によると、1人当たり年間1.1Kgを消費しているとのこと。ドイツ国内で養蜂を始めるのは比較的ハードルが低く、自然の多い郊外では趣味や副業としてミツバチの巣箱を庭や農場の一角に設置して自家製ハチミツを楽しむこともできます。これらの背景が後押ししているのか、ドイツでのハチミツ生産量はここ数年増え続けていますが、それでも全体の消費量の20%に留まっています。たしかに、店頭では国外から輸入されたバラエティーに富んだハチミツを見ることができますね。一般的にもミツバチに優しくするのはトレンドのようで、ホームセンターなどでは「ミツバチが好きな花」と銘打った種が売られていたりします。
ミツバチに優しい花は、見た目にも美しい
蜜を集めるミツバチ。そこに、人間の思惑は関係ありません
そんな、ドイツ人が好むミツバチをシンボルに、今年の1月末から2月中旬にかけて、「Rettet die Bienen(ミツバチを救え)」をスローガンとした環境保護の動きがバイエルン州でありました。Volksbegehren(国民発案)であるこのアクションは、多様な生態系を保つことを目的として州の法律改定を求めることがテーマです。なので、ミツバチの保護だけが目的ではありません。昆虫を含む動植物の多くの種が、一般には知られないうちに失われていきつつある現状を変えるためのものです。具体的にはビオトープの設置義務や、特定の農業的活動をする期間をより厳密に法律化することを求める動きなども含まれているよう。
エコロジー民主党(ÖDP)が始めたこのアクション、結果は大成功。バイエルン州で国民発案を成立させるために必要な有権者10%の署名を大きく上回る18%の署名を得ました。ミュンヘン市では週末には行列ができるほどで、27%にも上る署名を集めたそう。都市住民の関心の高さが伺えますね。この結果を受けて、近く、州民投票を経て法改正が行われる予定でした。
もちろん自然環境が人間以外にとっても過ごしやすいように保たれることは重要なことですが、実現するためには農業活動の制約や経済的な負担がかかってきます。そことのバランスをどうするか、そして多くの人に受け入れられやすい方法はどのようなものなのか? 環境保護のための急進的な意見に偏らないように行政側が農業従事者を含む広い分野から意見を収集。その結果、原案を少し変更し、関係者に行政からサポートを提供する形で、州民投票を行わずに法改正を行う見通しです。
そもそも人間が一番環境に優しくないような気もしますが、とはいえ、私たちも自然の一部です。人間にとっての利益だけを優先せずにほかの種とどう共存共栄するのか、エゴを抑えてエコになれるのか、今後の展開も見ていきたいと思います。
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。