ジャパンダイジェスト

ミッテンヴァルトで寒中ハイキング

昨年末から今年1月にかけて、バイエルンでは例年より冬の透明な青空が眩しく広がる日が多くありました。フェーン現象が起きることも何度かあり、アルプス寄りの標高が高い土地でも比較的暖かい日が続くことも。そんな空を見ていると屋内にいるのがもったいないので、お天気に恵まれたある日、寒中ハイキングに出かけることにしました。

目的地はオーストリア国境に近いミッテンヴァルト(Mittenwald)です。ミュンヘン中央駅からオーストリアの街インスブルック行きの電車に乗り、約2時間。天気は良くても冬の1日は短いので、早めの電車で出発しました。車窓からは、20世紀初頭の画家グループ「青騎士」派の活動拠点として知られるムルナウや、ドイツ最高峰ツークシュピッツェを擁するガーミッシュ・パーテンキルヒェンの景色を楽しめます。

可愛らしい駅舎が迎えてくれる、ミッテンヴァルト可愛らしい駅舎が迎えてくれる、ミッテンヴァルト

そうしている間に、ミッテンヴァルトに到着。駅舎の薄いリラ色の壁が美しく、背後にそびえる山が印象的です。トレッキングの拠点としてふさわしい風格を併せ持っています。ツーリストインフォメーションで街の地図やハイキングルート情報をもらって、いざ出発。カラフルな壁画のホテルやカフェ、お土産屋さんなどが並ぶ、こじんまりとした街を抜けていきます。ここは17世紀後半から続くヴァイオリン工房の街としても知られ、その博物館などもあります。夏季や週末には多くの人で賑わうのでしょうが、この日は冬の平日。散策する人も少なく、静かな空気が漂っていました。

せせらぎに咲く花のような霜が美しいせせらぎに咲く花のような霜が美しい

目的地は、街の西にあるラウター湖(Laut er see)です。その先に雪がなければ、さらにフェルヘン湖(Ferchensee)まで。ラウター湖までは舗装されたルートもありますが、渓流沿いに歩くことのできるラインバッハ・タール(Lainbachtal)を行くことにしました。幸い足元は乾いていたので、渓流のせせらぎを聞きながら順調に歩を進めます。ラウター湖を過ぎると道にはうっすらと雪が積もっていましたが、そのまま次の湖を目指すことに。山陰に伸びる道は日が差さないため気温は低く、パウダースノーと氷の白い世界に包まれています。

約1時間歩いて、フェルヘン湖に到着しました。湖は氷結し、山々から湧いて湖に流れ込む小川の周囲には、霜に包まれた植物。ほかのハイカーが通ることもなく、車の音も聞こえないため、湖は全くの静寂の底に沈んでいます。美しいけどちょっと寂しい気持ちになってきたので、湖畔のレストランが営業しているのを見てホッとしてしまいました。

完璧な静寂に包まれる、冬の湖完璧な静寂に包まれる、冬の湖

ここからさらに、エルマウ(El mau)という16世紀に起源を持つお城のあるエリアへも向かえるのですが、帰りの時間を考えるとちょっと厳しそう。夏なら湖の後ろにそびえる山を目指すルートも良さそうだな、と思いながら、ミッテンヴァルトの街へと引き返していきました。

Yoshie Utsumi
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。

 
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