第1アドヴェントを翌週に控えた11月20日、ミュンヘン中心部レーエル地区でイザール川のほとりに立つルーカス教会(St. Lukas Kirche)の、オルガンコンサートへ行ってきました。クリスチャンではない私でもなんとなくキリスト教の教会が身近に感じられるこの季節、荘厳なパイプオルガンの音色に触れたくなったからです。
ルーカス教会はミュンヘンで3番目に建設された、エバンゲリッシュ(ドイツ語でプロテスタントの意)教会です。19世紀末に建設された当時の状態を保つ外観は、重厚で堂々としています。
この教会のパイプオルガンは、1932年に設置されました。30年代のシュタインマイヤー式として最大規模で、戦火を逃れてオリジナルの状態を保っていることから、歴史的な価値を高く評価されています。予算に合わせ音色のバリエーションを制限する必要があり、多くの議論を経て当時「ベーシック」とされた構造を採用。建設当時はロマン派的な音色が求められたそうですが、1967年にはその時代の風潮であったバロック的な音色が出るオルガンへと改修されたそうです。現在では特定の時代の音色を色濃く残すことはなくなりましたが、オルガン史に残る楽器であることに変わりはありません。過去にもノーベル平和賞を受賞した神学者アルベルト・シュヴァイツァーら有名な奏者が演奏のために訪れ、「オルガンのメッカ」と呼ばれたそうです。
祭壇に向かう演奏台は、どことなく宇宙的
パイプオルガンは、用途や場所に合わせて設置されるため、世界に同じものは二つと存在しない、ユニークな楽器です。この日のコンサートでは、ここのパイプオルガンの特徴を最も良く引き出せるよう、17、18世紀のバロック音楽から、20世紀半ばの楽曲まで、幅広い時代から選曲されていました。プログラムにはバッハはもちろん、モーツアルトやロッシーニなどの有名な曲をアレンジしたものもありましたが、特に印象深かったのは一般にはあまり知られてはいないけれどオルガン曲では有名な作曲家による、オルガンの建設と同時代の作品たちでした。また曲調は、深まる秋を感じさせる短調から、その間に射す晴れ間を感じさせる明るい色調へ移行していくメロディーを組み合わせた作品が多く、今の季節にぴったり。演奏家による曲目解説で、プログラム構成や作曲家について知ることができたのも、コンサートをさらに楽しいものにしていました。夕闇を迎えて暗くなった教会内でオルガンの余韻が天に登っていく様子に耳を澄ましていると、あっという間に時が過ぎていきました。
オルガンは教会の側面、大窓の下にある
2017年は、ルターが「95か条の論題」をヴィッテンベルクの聖堂の扉に提示することで宗教改革の幕を開けてから500年の節目の年です。教会、特にルター派関係の話題が多くなりそうですね。
St. Lukas Kirche: www.sanktlukas.de
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。