太陽をいっぱい浴びた夏が終わり、長い冬が始まる前のこの季節、9月末から10月にかけて各地の「収穫祭(Erntedankfest)」や「秋のマーケット(Herbstmarkt)」を目にすることが多くなります。日本でも「勤労感謝の日」は秋の豊穣を祝うことを起源としていますし、「天高く馬肥ゆる秋」「食欲の秋」と、特別に食べ物が美味しいシーズンとされているのと同様、ドイツの秋も食を楽しむ季節のよう。EUおよび世界各地からの食材がスーパーで安定供給され、日本と比べると天候不順の影響や旬の味覚を感じにくいドイツですが、この時期には、現代人も太陽と土の恵みにちょっと敏感になるようです。とはいえ、日本と同様にドイツでも第一次産業従事者は減っていて、食材が手軽に入手できることと合間って「収穫」の尊さを直接感じる人達は減少傾向。この機会に自分達の恵まれた環境と、その恩恵に浴すことができない人達のことを考えてみるのも意味のあることかもしれません。
今年は夫の親戚からのお誘いがあり、あるエバンゲリッシュ(プロテスタント)教会の収穫祭ミサに初めて行ってみました。宗派や、教会個々でミサのスタイルは異なると思いますが、この教会では祭壇に近隣や自家の農園で収穫された野菜や果物、花が美しく飾られ、ステンドグラス越しに射す陽の光に明るく輝いていました。通常のミサに参加する人は年々減少傾向ということですが、この日は満員。子供達のコーラスも披露され、満ち足りてゆったりした雰囲気でした。
秋の味覚を楽しむマーケット
カトリック教会が多いバイエルン州では、10月の第3日曜日はKirchweih(キルヒヴァイ:教会開基祭)のお祝いで、ガチョウやカモ、ブタ肉のロースト、そして甘い揚げパンを食べるのが伝統です。Kirchweih とは元々は村の教会個々のお祭りで、日付はそれぞれ独自だったそうですが、近隣でお祝いする村があるとそこに引っ越して何日も祝日を繰り返す村民に業を煮やした領主達が、1866年に特定の日に限定したという愉快なエピソードがあります。
この時期にはまた、町おこしも兼ねてか各地でさまざまな秋マーケットが行われます。近隣の小さな町マルクトシュバーベン(Markt Schwaben)では、 regional Qualität(ローカル品質)とbiologische Garantie(ビオ保証)を組み合わせた造語「regiologisch」をテーマにしたマーケットを開催。グローバル化した流通に対しての、ドイツ流地産地消がトレンドのようですね。ちなみに「Markt〜」を冠する町名は、中世期のMarktrecht(マルクト法)で、特定の場所で定期的に市場を開くことを認められた自治体だけが名乗ることを許されたものということです。
かぼちゃのモチーフはドイツでも人気
日本の秋の味覚である新鮮な秋刀魚や栗、各種キノコ、新米などが懐かしくなってしまうことも多々ありますが、せっかくの機会、ドイツならではの味も積極的に堪能したいと思います。
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。