子どものころ、私はあまり本を好んで読まなかったのですが、20歳を過ぎて社会人になったころから読書が大好きになりました。会社帰りにまだ図書館が開いていれば寄って、予約していた本をピックアップしたり、未知な分野の本を手に取ってみたり、何となく椅子に座って絵本をぱらぱらとめくってみたり……と、いつの間にか私にとって、図書館は癒しの場所になっていました。
われらが誇るシュトゥットガルト市立図書館
日本からドイツに引っ越すことが決まって一番困ったのは、そんな大好きな日本の図書館をドイツに持っていけないことでした。もちろん日本から本を取り寄せたり、電子書籍を楽しんだりすることはできます。でも、もしかするとすてきな本に出会えるかもしれないというドキドキ感や、気負わずに大量の本を手に取れたりと、そんな図書館の醍醐味を日常からなくしてしまうことはとても悲しいものでした。しかし! ここシュトゥットガルトにも、すてきな図書館がたくさんあります。
日本語の絵本も数十冊置かれていました!
シュトゥットガルト中央駅近くに位置するマイランダープラッツにある市立図書館は、2011年10月に開館し、今年で10周年を迎えました。建築家のウン・ヤング・イーが設計を手がけたキューブ型の建物の中に入ると、中が吹き抜けになっていて、開放感のある真白で洗練されたデザインに心が動かされます。10周年を祝う祭典は、コロナ禍の影響で10周年目の最終月である来年9月に行われる見込みです。市立図書館はマイランダープラッツにある図書館をはじめ、シュトゥットガルト内の各主要地区に18カ所の図書館があり、さらに移動図書館が市を回っています。ほかにも、公共の場所に本棚が設置されていて、自由に本を借りられる街角図書館なるものがあります。
樹木をくり抜いて作られたツリー図書館
私の住んでいる街ファイヒンゲンでは、ツリー図書館なるものが数年前に4カ所で設置されました。ツリー図書館とは、高さ約3メートルの切り株を数カ所くり抜いて本棚にしたもので、悪天候から書物を保護するために、個々のコンパートメントには厚めのビニール扉が取り付けられています。公園などの公共の場所に設置されたこのツリー図書館は、24時間いつでも利用でき、近くに設置されたベンチに座って読書を楽しんでも良し、持ち帰って家でゆっくり読むのも良し。なお借りた本は、ほかの場所に設置されたツリー図書館に返却してもOKです。本棚は市によって管理されていて、状態の良い読み終えた本を寄付することもできます。ほかの図書館とは違い会費などもかからないので、お財布にも優しく、また返却期限もありません。
ツリー図書館のコンセプトは、「気負わずに読書を楽もう」という、まさに私が図書館に求めるもの。読書好きもそうでない人もわくわくするような、ツリー図書館が街にあふれていくとうれしいなと思います。これからも、多くの良書との出会いがありますように。
大阪生まれ、東京育ち。在シュトゥットガルト14年。Merz Akademie大学視覚コミュニケーション科卒。語学力を武器に、日本企業のリロケーションをサポートしながら、メディアデザイナーとしても幅広く活躍している。趣味はギターと読書。