ドイツ暮らし13年目にして、このたび息子の誕生日会で「ケーゲルン」に初挑戦しました。ケーゲルンはドイツを中心に欧州で親しまれているスポーツで、ボウリングの元祖といわれています。スポーツ名の由来はドイツ語で円すいを意味する「ケーゲル」。歴史は古く、すでにローマ時代からその原形が存在したのだとか。ボウリングの発祥は米国で、三角形に並んだ10本ピンを狙うのに対し、ケーゲルンはひし形に並んだ9本ピンを狙って球を転がします。
ボウリング場とは違う雰囲気のケーゲルバーンはこんな様子
ボウリング場は大きな街にしかないのに、ケーゲルバーンは私の住む小さな村に、なんと2カ所もあります。私たちが今回訪れたのは、地元料理のレストランの地下にある知る人ぞ知るケーゲルバーン。私は毎日のようにこの建物の近くを通っていたのですが、これまでその存在を全く知りませんでした。皆さんのお住まいの地域にも、実はこっそりと存在するのかもしれません。
案内板には26種類ものルールが載っていました
木造でレトロな雰囲気のケーゲルン室には、プレイヤー席が壁で仕切られた二つのレーンがありました。それぞれ、隣のゲームを見ることができます。私たちが訪れた時間帯には、隣のレーンに常連と思われる団体がいて、派手にピンを倒す音やシュヴァーベン語の話し声が響いていました。壁に貼られたポスターには、26種類もの遊び方が書かれていてびっくり。初心者の私たちは倒したピンの数だけポイントを加算するシンプルなルールを選びました。
さて、記念すべき第一投目。足元に張られたロープをくぐらせて球を転がします。スピードはあまり出ないものの、そのまま転がっていき、ピンが1本倒れました。続く2投目は、真っすぐ転がしたつもりが、溝へ……。ボウリングでいうところの「ガター」、ケーゲルンでは「プンペ」です。レーンの幅が狭いので、少しでも狙いが外れると溝に落ちてしまいます。この点はかなり難しいです。私の試投は終了し、いよいよ中学生6人の男の子たちがゲームを開始しました。ほどんどの子が初挑戦でしたが、それぞれ工夫して高得点を狙って奮闘。約1時間半のプレイの後は、上のレストランで巨大バーガーを頬張るにぎやかな男子会となりました。
この日の最高得点者!
話は変わりますが、モーツァルトの「ケーゲルシュタット・トリオ」という作品をご存知でしょうか。1780年代にウィーンで彼がケーゲルンをしているときに、その曲を作曲したという逸話があります。真偽のほどはともかく、このことからも分かるように、ケーゲルンは昔からポピュラーなスポーツだったようです。
おんせん県出身。ドイツ人の夫と、二人の子どもと日独いいとこどりの暮らし。趣味は、糀 を醸して発酵調味料を手作りすること。世界各地に住む日本人の醸し人仲間たちと共に、糀の可能性を研究する「伝統食クリエイター」としても活動。台所はいつも実験室のようになっている。