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めったに水の出ない噴水

噴水の水抜き作業が行われ、蓋で覆われると、いよいよ冬がやって来ることを実感し、噴水が再び動き出すと春の訪れを感じます。ドイツにおいて、噴水は季節の大きな区切りを示すものと言えるでしょう。

また、広場や街角の噴水は風景に躍動感を与えてくれます。噴水の建設が流行したバロック時代(16世紀後半~19世紀後半)、ドレスデンでもその例に漏れず、多くの噴水が建設されました。ツヴィンガー宮殿内だけでも20の噴水があり、古い噴水から比較的新しいものまでを含めると、その数は大小合わせて300にも上ります。市内で最も古い噴水は、ツヴィンガー宮殿の近くにある、15世紀半ばに建てられた「カモジグサ噴水(Queckbrunnen)」。高さ3.6メートルの噴水は塔のような形をしており、屋根の上に添えられたコウノトリの像が目印です。

カモジグサ噴水
ひっそりと佇む「カモジグサ噴水」

さて、冬以外の季節には、噴水から水が出ているのが当然と思われるかもしれませんが、水が出ていると市民から驚かれるという、半ば不名誉な噴水が市内中心部のポストプラッツにあります。東西ドイツ統一後、トラムの停留所を中心に大々的に再開発されたポストプラッツ。そのシンボルとして完成したこの噴水には、大きな期待が寄せられていたはずですが、新聞で「常に故障している」という見出しが躍り、市民とっては歓びよりも怒りや落胆の方が大きかったようです。

この噴水のコンペで優勝したのはベルリン在住のアーティスト、ライナー・シュプリット(1963年生まれ)。真っ赤な四角い枠型の噴水「水のスクリーン(Waterscreen)」は、噴水というよりはむしろアート作品のような扱いです。

水のスクリーン(Waterscreen)
ポストプラッツにある「水のスクリーン」。残念ながらこの日も水は出ておらず……

水が出ると、この枠の上の一辺から水が落ち、まるで水のカーテンのようになるという仕組みですが、水が出るノズルにほこりが詰まって噴水が機能しなくなるという事態が発生。さらに、強風時に水を止める制御装置の風速メーターを、景観を重視して噴水ではなく数メートル離れた場所に設置したため、噴水周りとは異なる風速を観測してしまって適切な制御ができず、月々400㎥の水が制御装置の外にまき散らされてしまいました。

頑丈なノズルに取り換える作業が行われましたが、建設に27万ユーロ、その後の修理に3万ユーロが費やされ、このコストも市民の怒りを買っています。すったもんだの噴水ですが、時を越えて街の風景の一部として定着してもらいたいものです。

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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