ドレスデンから車でバウツェン方面へ1時間ほど走ると、クラインヴェルカ(Kleinwelka)という小さな村に出ます。のどかな田園風景の中をひたすら走っていると、突如、農道にティラノサウルスの姿が! そう、ここは恐竜パーク(Saurierpark)の入り口です。
恐竜ガーデン・グルースに再現されたマンモスの狩猟風景
今でこそ、広大な敷地に73体もの恐竜の模型が展示され、多くの家族連れが訪れていますが、その発端はフランツ・グルース氏(Franz Gruß、 1931~2006年)が自宅の庭に置いた1体の恐竜模型でした。庭の飾りとしては不自然で、近隣の住民が唖然としたことは想像に難くありません。グルース氏は、単なるコンクリート製のレプリカを超えた彫刻作品として恐竜模型の制作に取り組み、一瞬の動きを捉えたような精巧な出来栄えで、恐竜たちに可能な限りの躍動感を与えました。彼の作品は瞬く間に評判となり、訪問者の増加に伴って展示場所を拡大。1981年の古代トカゲの制作以降、新たな恐竜を次々に手掛けました。彼は1991年まで制作を続け、彫刻家トーマス・シュテルン氏(Thomas Stern)がその後を引き継ぎました。
本物の恐竜の骨が展示品ではないこのパークの最大の見どころは、実物大の恐竜が広い森の中に展示されていること。実際の恐竜の色は想像上のものでしかなく、植物も当時のものとはかなり異なりますが、森の中に入ると恐竜たちの生きていた時代にタイムスリップした気分になります。恐竜の巨大さは化石からも明らかですが、サイくらいの大きさだと思っていたトリケラトプスの桁違いの大きさに驚き、高さ16mのブラキオサウルスは、ただ見上げるばかり。古代ワニのデイノスクスの姿形は現代のワニとほぼ一緒なのですが、大きさは全長12mで現代の最大級のワニの2倍。現代の巨大ワニでさえ、その獰猛さは圧倒的なので、史上最大級の古代ワニの破壊力は想像を絶します。現代の地球上の動物は、恐竜が生きた時代と比べてかなり小さくなっているのだと興味深く感じました。
後方の小屋と比べると、圧倒的な大きさを誇るブラキオサウルスとディプロドクス
その他、幼児用の遊具と付き添いの大人のためのベンチが随所に配置され、掘ると化石が出てくる、発掘現場を再現した砂場など、楽しみながら学べる設備も完備されていて、幅広い年代の人々が一緒に楽しめるよう工夫されていました。
パークの一番奥には、グルース邸の庭であった「恐竜ガーデン・グルース」があります。ダイナミックな動作を取る恐竜が所狭しと置かれ、図鑑でよく見るような、再現された古代人のマンモス狩猟現場まであり、彼の情熱を最も感じられる場所です。来年の開園期間は、4月1日~11月2日の予定です。
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
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