昼の暑さも和らぐドイツの夏の夜、エルベ川のそばで過ごすひと時は、多くのドレスデン市民にとって最高の憩いです。
特に新市街側の川縁から眺める旧市街側ブリュールのテラスの景色は、「エルベのフィレンツェ」とうたわれたドレスデンの姿を体現しています。ライトアップされたその姿は、まるで巨大スクリーンに映し出された映画のワンシーンのような美しさ。
夏の夕べ、エルベ川沿いで憩いのひと時を
では、もしも錯覚ではなく本当にエルベ川沿いに巨大スクリーンが登場したら……。ドレスデンでは実際に毎夏、「エルベ河岸で映画の夜(Filmnächte am El buf er)」が開催されます。このイベントは、6月末から8月末までのおよそ2カ月間にわたり、毎晩のように映画やコンサートを上映・上演するものです。前年話題になった映画から傑作の名作、ミュージシャンからコメディアンまで、プログラムに載る多彩な作品リストを眺めているだけで、毎晩でも足を運びたくなるほど。
過去の映画祭の様子。スクリーンの後ろには旧市街
エルベ川にかかるカローラ橋とアウグスト橋の間に巨大スクリーンが設置され、その大きさは縦14m× 横32mという世界最大のもの。観客席は約3500席、コンサートの際には1万2000人が立見できます。何名かでゆったりと座れるラウンジ席や飲み物、つまみを売るスタンドもあります。エルベ川からの爽やかな風を受け、涼みながら映画を鑑賞することがメインコンセプトになっており、屋根は付いていませんので、突然の雨天にも対応できるよう、雨具を用意していくことをおすすめします。
1991年に始まったこの映画祭は、2004年より現在のスタイルである可動式巨大スクリーンが取り入れられ、入場者数も毎年増加の一途をたどっています。昨年2016年の総入場者数は22万人を超えました。市と開催者との間で交わされていた当初の契約は2015年まででしたが、更に2025年まで契約が更新されており、催しの成功がよく分かります。
今年の注目は、アカデミー賞で数々の賞を受賞した作品「La La Land(2016年)」、ドレスデン映画祭(毎年4月開催)の短編映画集「Die Kurzfilmnacht (2017年)」。コンサートではスティ ングやペット・ショップ・ボーイズが登場。そして日本の話題作「シン・ゴジラ(2016年)」と元祖「ゴジラ(1954年)」も上映されます。この2作品、ドレスデンでも注目度が高いのか、グッズ商品にゴジラのイラスト取り上げられて販売されています。
川辺の解放的なシーンでビールやワインを片手に映画やライブを楽しむ夏のひと時。ぜひ、お出かけください。
Filmnächte am Elbufer:http://dresden.filmnaechte.de/
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。