ウクライナで戦争が始まり、ドイツ国内でも各地で反戦のデモや集会が開かれています。私の住むシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州のヴェ-デル市でも3月2日、SNSでの呼びかけや口コミで平和のための集会が行われました。
集会が行われたのは、教会暦でいうとちょうど「灰の水曜日」(Aschermittwoch)。復活祭の46日前に当たるこの日に、カトリック教会やルーテル教会などのプロテスタントの教会は、特別な祭事や式典を行います。いわゆるキリスト受難週の初日でもあります。
子どもから大人まで多くの人が港に集まりました
ドイツでは、2月はカーニバルの季節。「バラの月曜日」(Ros enmont ag)といわれる月曜日にそのピークを迎え、仮装行列などのパーティーが催されます。そして、カーニバルで散々羽目を外してどんちゃん騒ぎをした人々が、この「灰の水曜日」に悔い改めて神に立ち返り、断食をして受難の時を過ごすのです。
ヴェ-デル市近郊にある小さな村モールレーゲの教会では、毎年「灰の水曜日」の夜に礼拝があり、皆カーニバルの仮装をして来るそう。「祭りは終わった。さあ、これからは禁欲生活だ」という世俗的な曲と共に仮装した人々が入場し、そして厳かに悔い改めの祈りをささげ、牧師のお説教を聞くのが恒例です。
メッセ-ジに聞き入る人々
この礼拝に仮装した人々が集まるというのを聞いて、面白そうだと思い、出席するつもりでいました。しかし今年は急きょ、ウクライナのために祈りをささげる礼拝に変更。ほかの多くの教会でも、この日は平和を祈る礼拝が行われたようです。
そして夕方6時ごろからは、小さなろうそくや灯りを手にした人々が次々とヴェ-デル市の港Schulauerhafenに集まってきました。市や教会等の代表者がウクライナ戦争反対のメッセ-ジを語り、日が沈む頃には、港は人と小さな灯りで溢れんばかりの状態に。そして代表者の呼びかけにより、人々は携えた光を空に向かって掲げて黙祷をささげます。ちょうど通りかかった貨物船も汽笛を鳴らし、光の祈りに応えてくれました。
祈りよ、届け!
そして、どこからともなくギタ-の音が聞えてきました。ウクライナのコサック民謡の歌詞から生まれたといわれる有名な反戦歌 「Where have all theflowers gone?」(花はどこへ行った?)です。音楽に合わせて、静かな合唱の輪が広がっていきました。
人間の罪の象徴ともいえる戦争。悔い改めの「灰の水曜日」に行われた平和の祈りが、どうかウクライナに届きますように。
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。